部活・スポーツ

・「タッチ」(1)~(17)(途中まで) あだち充(1981~85、小学館)

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双子の兄弟、上杉達也と上杉和也、そしてその幼なじみの浅倉南。三人は幼い頃から仲良く育ってきたが、思春期にさしかかりお互いを異性として意識し始める。
何をやってもまじめな優等生の和也は野球でピッチャーとして頭角を現し、母校の野球部を甲子園へ連れて行けるのは彼しかいないと言われていた。
一方、兄の達也の方は、何一つまじめにやらずフラフラしていて周囲をあきれさせる。彼もピッチャーとしての潜在能力を持っているというのに……。
甲子園が目前となったとき、あることが起こって達也は野球で南を甲子園に連れて行く、と決心する。人と争うことが嫌いな達也は、南のために初めて本気で他人と勝負する。

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・「あくたれ球団」 北沢しげる(1977、立風書房)

私の知るかぎり、ホラーものも手がける作者の野球マンガ。絵柄から「片岡かつよし」だと思ったら違ってたが、まあ小さな問題です。

暴れものすぎて小学校の野球部に入れてもらえない少年・チョロ松が、はみだし者ばかりを集めて「アウトサイダーズ」を結成。
ひとクセあるメンバーだが、そこそこの大人の草野球チームにも負けないほどの実力を持つ。
彼らはいろんなチームと試合をして勝ち続け、ついに小学校公式チームと試合をすることになった。

「アウトサイダーズ」のメンバーには車椅子の少女・ユキがおり(応援や子守を担当)、彼女は足の手術をするかどうか悩んでいた。「勝ってユキを元気づけよう!」と士気が高まるメンバーだったが、奮闘虚しく敗れてしまう。
しかしユキは笑顔で、「みんないっしょうけんめいやったじゃない」、「きょうのあなたたちを見ていたら 勇気がモリモリとわいてきたわ」と手術を決意するという、本当に、本当にありきたりな展開なのだが、ユキが、

「もし……それでもなおらなかったとしても わたしはぜったい負けないって心にきめたの みんなのようにあかるくたくましく生きるわ」

ここまで描かれて、私は泣いてしまった。だって、「もしなおらなかったとしてもぜったい負けない」って、このテのパターンで普通、言いますか!? たいてい「簡単な手術なのに本人がおびえてるだけ」みたいなご都合主義な設定を入れてあるはずでしょ!?

勝とうが負けようが関係ない。なおってもなおらなくても関係ない。ぜったい負けない。

……正直、今読む必要のある作品ではない。消えていっても仕方のない作品である。だが感動した。マンガにはこういうことがある。

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・「球速0.25秒!」原作:杉四郎、眉月はるな(1971、ひばり書房)

古書価格で1万円以上はするレアもの動物パニックマンガ「侵略ガニ」の眉月はるなが作画を担当した、野球マンガ。
甲子園でビーンボールを投げ、相手の打者の片目を失明させてしまった少年がグレてしまい、しかし転校した先の高校でも野球を始め、片目になった少年と再び甲子園で対決する、というマンガなのだが、とにかく湿っぽい。

……というか、子供の頃立ち読みしてあまりにウェットなので書棚に戻した本、三十年くらい経ってから買っちゃったよ!!

「ウェットでなかなか話が終わらない、だけど面白い」作風としては70年代当時、梶原一騎、花登筺、梅本さちお、牛次郎などがいたが、彼らはあくまでも一流作家だったから面白いのであって、「ウェットだったから面白い」わけでは当然、ない。
そういうことが本作のような埋もれていった作品を読むと、明らかになる。現在でも、「売れセン」を狙って面白くない作品があるから、要するにそういうことなのだが。

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【映画】・「あしたのジョー」

公式ページ
監督:曽利文彦、脚本:篠崎絵里子

ドヤ街にやってきた野良犬のような少年、矢吹ジョー(山下智久)は、チンピラとのケンカでボクシングの才能の片鱗を見せる。
彼にボクサーの原石として惚れこんだ飲んだくれの中年・丹下段平(香川照之)は、彼のコーチを買って出るが、ジョーは度重なる悪事のため少年院に入れられてしまう。
そこでも暴れまわるジョーだったが、プロボクサーの力石徹(伊勢谷友介)と出会い、彼との少年院内におけるボクシングの試合でボクシングそのものへの愛着と、力石という男に対する「友情のようなもの」を感じ取る。

本来、キャリアも実力も段違いであるはずの力石もジョーとの対戦にこだわりを見せ、世界チャンピオンも狙える位置にある力石にとっては価値のない(ただし彼にとっては重要な)矢吹ジョーとの試合が実現することになる……。

いやすごくがんばってると思う。この映画。
昭和40年代の風俗考証がどの程度正確か、ボクシングの描写のリアリティがどのレベルのものかなどは自分にはわからないんだが、「そうだよ、あしたのジョーってこういうところが面白いんだよなあ」ということを再認識させてくれる映画である。

観た人はみんな言うだろうが、香川照之の丹下段平再現度がハンパない。声まで似てるんだもの。
この映画を「あしたのジョー」たらしめている大きな要素が、丹下段平であることは間違いない。

主演二人も、「マンガのキャラを演じました」というレベルにとどまっておらず、きちんと実写のキャラとして立っている。

同じ監督の「ICHI」ではマイナス要因にしかならなかった「スローモーションの戦闘シーン」や「戦いが細かいカットの切りかえによってごまかしているようにしか見えない」といった要素は、原作がマンガであるからか「ボクシング」という格闘技が題材としてよかったのか、なかなか迫力あるシーンに仕上がっている(「クロスカウンターのやり合い」というシンプルな展開が、いい方にはたらいているということも言える)。
もちろん、山下・伊勢谷両者の肉体もボクシングシーンの迫力に説得力を与えている。

物語はジョーと力石の、戦うことでしか語り合えない不器用な友情に主にスポットが当てられている。白木葉子(香里奈)の、「どうしてもジョーと力石の間に入り込めないもどかしさ」がよく描かれていた。
そこに、原作にはない、白木葉子自身の人間的成長をからめる(恋愛要素は極力排除する)という脚本も、非常にうまいと感じた。

ラストも重すぎず軽すぎず、ちょうどいい感じだったと思う。
この映画、決してあなどるべきではない。

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・「ラッキーストライク!」(1) みそおでん(2011、芳文社)

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元ソフトボール部のヒロインが、なんとなくボウリング部に入部する萌え4コママンガ。

ボウリングというとストリート系な匂いがする作品が多いが、本作はカッチリ体育会系。
最初は「非力でもテクニックがあれば、ソフトボール経験者にも勝てる」というふうにそれなりの意味あいがあったものの、ヒロイン入部後は「なぜボウリングでなければならないのか」の理由があまりない。

「ボウリングは遊びではない、スポーツである」という作者の主張はわかるのだが、では「なぜボウリングなのか」の理由がなければ、他のメジャースポーツではなく、ヒロインがあえてボウリングをやる理由が希薄になってしまうと思うのだ(仲のいい友達と一緒にいたいとか、そういうことがあるにしてもね)。

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