エッセイ

【雑記】・「おもちゃにはいい思い出がない」

私はサンタを信じていた世代ではない。
これは微妙だが大切なことだ。いったい、現在何歳くらいから、親が「サンタの存在」を信じさせてくれるような世代になったのだろうか。

実際、「エスパー魔美」のクリスマスのエピソードでも、魔美と高畠くんが、親が忙しくてクリスマスに一人ぼっちの子どもの家に行くが、その家の子はサンタの実在を信じていなかった。
24日も、25日も、近所のおもちゃ屋は親子連れで大混雑だった(1970年代)。要するに、「親がそれとなくおもちゃを買って、枕元かなんかに置いておいてやる」ということをやらないにも関わらず、プレゼントをもらっている子どもたちが大勢いたということだ。
(それで急に思い出したが、伊集院光はある時期までサンタを信じていたらしい。私と同世代。)

で、いきなり話は飛ぶが、私はおもちゃにまったくいい思い出がない。
父親はかなり何でも買ってくれる人だったのだが、欲しいものを注文して取り寄せる、という概念のまったくない人で、おもちゃ屋に売ってなければそれでオシマイ。違うものでの代替をせまられた。

欲しいおもちゃを買ってもらうために親に頭を下げたり、交渉したりするのがとにかくイヤだった。
父親は癇癪持ちで、いざ手に入れたおもちゃを私が気に入らないと、「せっかく買ってやったのに」と怒った。
友人同士でも、いいものを買ってもらった場合、うらやましがられるのがすごくイヤだった(今でもイヤだ)。
子どもは陰険なもので、まるで欲しいものを買ってもらっている自分が、軟弱であるかのような非難をされた。

また、友人同士ではおもちゃを壊した壊さないというのがトラブルのもとだったし、何より私自身が不器用で、ずいぶん買ってもらったおもちゃを自分の手で壊してしまった。
最近のおもちゃは、とにかく「子どもが間違って壊さないように」という配慮がなされていて感動する。
ガンプラの、なくしたパーツを売ってくれるというシステムもすばらしいと思う。

今ではだれにもはばかられることなく、おもちゃでも何でも買えるのでザマーミロと思う。
そう考えると、買ったものよりも「だれにもはばかられることなく」の方が、自分にとって比重が大きいことに気づく。

余計なことを言うヤツは大嫌いだ。

メリークリスマス!

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・「KOUSHOKUダンディ」(1) 柳沢きみお(2012、集英社)

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officeYOU連載。
エッセイスト・創石夏雄(56歳)が、日々自炊をしたり人生について考えたりする1話完結の作品。彼が語ることは、そのまま作者が考えていることでもあるのだろう。

正直、同系統の「大市民」が、「コマを割って吹き出しに思ったことを書いているだけ」みたいな作品になってしまい、「夜に蠢く」は、ストーリーは面白かったが絵がサインペンで描いたみたいに荒れてきて、「もうこの作者のマンガはレベルが落ちていく一方なのか……」と思っていた。
しかし、本作では初期の「筆が荒れず、面白い頃の大市民」のテイストが復活している!!!!!
昔の「大市民」が好きだった人にはオススメです。

エロネタがぜんぜんないな、と思ったら女性誌連載だというのにも驚いた……。でもまあ、柳沢きみお先生本人は説教めいたことを言っても女性にウケそうだし、不思議はないか。

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・「ツレがうつになりまして。」 細川貂々(2009、幻冬舎文庫)

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最初は2006年に刊行。
うつ病になってしまった夫と、彼をサポートする妻の日常を描いたエッセイマンガ。
……なんて説明書かなくても、ベストセラーだからいいだろう。

正直、私はこのテの絵柄(マンガではなくイラストレーションの勉強をしてきた人が、わざとヘタに描いたような感じ)が苦手で敬遠していたのだが、いざ読むとなかなか面白かった。
闘病記をユーモアをまじえて描く、という方法は前からあったんだろうけど、やっぱり「うつ」をテーマにしたのが注目が集まった理由かなあ……。
そして百万回言われてると思うけど、妻のがんばりと肩の力の抜き方、そしてときにはうつの夫に当たってしまったり……といったことが正直に淡々とつづられているところに、静かに感動してしまうよね。

で、私が個人的に思ったことは三点ある。

まずは、現在の景気の悪さである。
ツレ(作中でも「ツレさん」という名前)がうつ病を発症した直接の原因は、リストラによって社員が減らされたことからくる激務。しかも、その会社は彼が退職した後、なくなってしまったという。
最近、就職活動情報から遠ざかっていたのでこれには衝撃を受けた。15年前にはまずあり得ない自体ではないか?
「15年前」と中途半端な過去のことを考えたのは、おそらくツレ氏はその頃にもすでに社会人だったはずで、その当時は「社員を減らされて急に激務に」なんて、考えられなかったと思うのだ。それが精神のバランスを崩すほどの激務に追い込んでしまったのではないかということ。

そして、もう一点はツレ氏に対する、私の世代的な共感である。
「四十歳になって理想の自分になっていない」ことに対してすごくショックを受ける、というくだりがあるのだが、これにも共感できる。
たぶん彼は私より二、三歳年上だと思うが、この世代は若い頃にいわゆる「ニューファミリー」を理想とした世代であり、なおかつ現在の三十代、二十代よりもずっと「マトモな大人像」がはっきりしている世代である。
(話は飛ぶが、この「ニューファミリー」と「マトモな大人像」の間で揺れ動く男女を描いたのが、ドラマ「金妻」だ。)

世代の問題かどうかはわからないが、1969年生まれだという妻がそういう理想をまったく抱いていないのは、ものすごい救いだなと、私は思ってしまうのであった。

第三に「過去の自分とくらべる」という章への共感。
ツレ氏が、過去の自分のいちばんいい時期と自分を比べておちこんでしまうというのだ。これは私もあるある!!
彼の妻はそんなことを考えたこともないらしく、「へええ~っ」と思った。
男女の差かどうかわからんけど、男は過去をひきずると思う。少なくとも、私はひきずる。

読後の感想は、そんなところです。

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【エッセイ】・「柳沢きみおの『なんだかなァ人生』」

「週刊新潮」に連載している、柳沢きみおの文章によるエッセイ(「文章による」とわざわざ書いたのは、「エッセイマンガ」ではないということ)。

ネットを検索するとオタク批判やAKB批判についてさまざまな人から論評が加えられたりしていて、まだまだ活字メディア……しかも昔ながらの週刊誌の影響力について思いをはせたりするがそれはまた別の話。

この「なんだかなァ人生」は、タイトルどおりとりとめもなく作者が最近の流行や想い出話などを書きつづったものだが、柳沢きみおのマンガ観やいつ、どんなんときにどんな気分で作品を書いていたのかなどが作者本人の手でつづられるため、過去の彼のマンガの作品読解にも大変役に立つ。

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