UFO

【特撮】・宇宙人好きから観た「ミラーマン 第2話「侵略者(インベーダー)は隣りにいる」

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1971~72年に放送された特撮ヒーロードラマの第二話。
爆弾テロ事件を起こし、マンションに住む女性を襲う、侵略者(インベーダー)にミラーマンが立ち向かう。

【特撮】・宇宙人好きから観た「ウルトラマンタロウ 第36話「ひきょうもの! 花嫁は泣いた」に続いて、「超常現象のハイストレンジネス事例を感じる特撮ドラマ」を書き留めておこうという私の無駄な努力。

「ミラーマン」が、当初は「盗まれた街」などを下敷きにした「しのびよる侵略者と戦うドラマ」であったのはなんとなく覚えている。
この回でも、「マンションの住人がいつの間にかインベーダーに入れ替わっている」という恐怖をじわじわと描いている。
そして、こういっちゃなんだがなんだか変な筋立てなのである。

まず「マンションの住人が入れ替わる」エピソードと「インベーダーが爆弾テロを起こす」エピソードにつながりが希薄だ。
次に、狙われるマンション住人の女性を、なぜ殺してしまわないのかがわからない。冒頭、別の女性はあっさり殺されているからだ。
むしろ、電気を止めたり、水道を出なくしたりとやることが地味である。

しかし、狙ってはいないと思うのだが「爆弾テロ」と「マンションの住人をおびやかす」こととの結びつきづらさが、「インベーダー」の不可解さを効果的に表現していると思う。

マンション上空を飛ぶ空飛ぶ円盤も実にいい。

タロウ36話「ひきょうもの! 花嫁は泣いた」も舞台はマンションだった。70年代のマンションは、まだまだ一般人にはなじみが薄かった。いわば「隣人がどんな人物かわからない」という「都会的感覚」を象徴した建物であったと言える。
これまた狙ったわけではないだろうが、「ミラーマン」が異次元人であるという設定もハイストレンジネス感を出している。
70年当時、「異次元人」に今よりもリアリティがあってこその設定だったろうが、今再見すると、クライマックスにやや唐突に始まる、マンションを突き破って巨大化するミラーマンと怪獣キティファイヤーとの戦いは、なんとなく「夢の光景」のような印象を与える。


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【自作解説】・「小説 不可思議ハンター・奇門狂介 あっ、口裂け女だ!! の巻」

小説 不可思議ハンター・奇門狂介 あっ、口裂け女だ!! の巻
小学六年生の青葉武雄は、ある晩、塾帰りに「口裂け女」に遭遇する。学校では口裂け女の話題で持ちきり。だがクラスは「実在派」と「否定派」にまっぷたつに割れる。もちろん「実在派」の武雄は、同級生の織田ココノたちとともに、口裂け女に対抗する方法を考えるが……。
口裂け女と少年少女の戦いを描く、ジュブナイル。

イヤでしょうがないが、自作解説をするシリーズ。だが今回は、投げやりではなく行きたい。
もともとこの「不可思議ハンター 奇門狂介」シリーズは、2010年に刊行された超常現象同人誌「SpF8」に掲載させてもらった短編「奇妙ハンター鬼談錠介 歩く大仏の巻」が元になっている。

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【特撮】・宇宙人好きから観た「ウルトラマンタロウ 第36話「ひきょうもの! 花嫁は泣いた」

「ウルトラマンタロウ」第36話 「ひきょうもの!花嫁は泣いた」 は、検索すると「ひどい出来」、「まあまあ」くらいの評価しかないらしいエピソードだ。
だが、ある種の「宇宙人好き」にはなかなか好もしいエピソードではないだろうか。

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【創作】・「ピクシブに乗せていた短編小説を、こちらにも載せました」

ピクシブには小説を載せるシステムもあって、そっちに何編か書いて載せていたのですが、意外と「ピクシブ入ってない」という人が多いので、こちらにも載せることにしました。

けっこう前に書いた、UFOにまつわる短編
「政次郎とトシユキとEM」

あと、2007年にこのブログで書いた小説(?)も、サルベージして再掲しておきます。
【感動自作小説】・「栗太郎とひょっとこ姫」

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【創作小説】・「政次郎とトシユキとEM」その1 政次郎(全4回)

その1 政次郎

「もうなくなっちまったのか」
 戸澤政次郎は焼酎の瓶を逆さに振って、そこから流れ出てくるわずかな液体をいじきたなくなめ取った。
 手の甲で、口をぬぐう。空になった瓶は、自分が座っている破れたソファーの向こう側に、無造作にブン投げた。ドスッ、という音がして酒瓶が絨毯の上に落ち、転がった。
「……畜生」
 何が畜生なのかわからないが、とにかくそうつぶやいた。
 政次郎は当年とって六十八歳。頭は当の昔に禿げあがっていたが、顔の下半分は白髪まじりの濃いひげが覆っていた。服装にはいっさい気を配った様子はない。もう何日も洗濯していないシャツに、油で汚れた作業ズボンを履いている。
 彼は、町はずれのちょっと坂をのぼったところに、ボロボロの一軒家をかまえていた。平屋だったが、一人で暮らすには充分だった。
 彼はその広い庭を利用して、ジャンク屋をやっている。
 彼の家の庭には、壊れた自転車や自動車の部品が大量に置かれていた。また、とうてい売り物にはならないであろうガラクタも、ところ狭しと散乱している。
 実はジャンク屋をやっていた、というのは文字どおり「やっていた」のであって、過去の話である。
 ある時期から政次郎は、次第にアルコール中毒の度合いを強めていた。直接の原因は、数年前妻子に逃げられてしまったことだ。
 政次郎は酔いで濁った眼で、酒の残っている瓶を探した。探しながら、妻子が出て行った理由を考える。理由はいくらでもあり、数えきれないくらいだった。
 政次郎のいる部屋は六畳で、庭と同じくガラクタが散乱している。破れてスプリングの飛び出したソファーが彼の定位置だ。そこに一日中座り、古雑誌を読んでいる。
 本当はソファーの正面には古いテレビが置いてあるのだが、いつの間にか映らなくなってしまっている。
「いいさ、どうせガラクタだ」
 周囲を眺め、酒がないとわかると政次郎はよっこらしょと腰をあげた。すでに身体のあちこちにガタが来てはいるが、長年、力仕事で食べてきたせいか身体はいまだに頑健である。
「……もう昼か」
 政次郎はドアを開けて外に出る。日は高くのぼっており、昼頃だということはわかる。
 ふと庭に目をやると、小さな人影が二つ、三つ、ガラクタとガラクタの間をちょこまかと走り抜けていった。
「こら! また近所のガキか! ウチの敷地に入っちゃいかんと言っただろ!!」
 政次郎が怒鳴った頃には、すでに小さな影はどこかに消えていた。
「……まったく、ウチを遊び場にするのはやめてもらいたいもんだ」
 政次郎はブツブツ言いながら、タバコをくわえライターで火を付ける。
 タバコをふかしながら、庭のガラクタをゆっくりと観て回った。
 最近では、政次郎の敷地をゴミ捨て場だと勘違いして不法投棄していく輩も珍しくないのだ。
 しかし、もはやそういうことに文句を言う気力は、政次郎に残っていなかった。
 彼はゆっくりとジャンクを観て回る。そうしながら何を考えているかというと、去って行った女房子供のことや自分の人生について、などではない。妻子について考えるのは日課のようなところがあるが、すでに人生を投げてしまった感のある彼に、深く考察しなければならないことなど、何ひとつない。
 庭をひと回りすると、車庫がある。これもボロボロで今にも崩れ落ちそうだ。
 が、政次郎が車庫の戸をゆっくりと開けると、中にはトヨタ・2000GTという名車が入っている。
 六十七年から七十年に製造されたスポーツカーであり、土地を除いては政次郎の唯一の財産だ。
 どこでどうやって手に入ったかすでに忘れてしまっていたが、確かバブル崩壊時に、さまざまな経路を経て政次郎の手に渡ったはずだ。その頃の政次郎はまだマジメに商売をやっており、ごくたまにそういう奇ッ怪な取引が成立した時代でもあったのだ。
 しかし政次郎は、車にはほとんど興味はない。半年ほど前までは「いざというとき、売却するために」と大切にし、メンテもマメに行っていたのだが。
「……なんで動かないんだろうな畜生め」
 彼は2000GTをそっと撫でてみた。そう、半年ほど前から、この車はまったく動かなくなってしまったのだ。売れば2000万円はする代物である。専門家を呼んでみてもらったこともあったが、原因はわからないとのことだった。
 政次郎はまた、酔いで澱んだ頭で何かを考えようとしたが、すぐにやめて皮肉な笑みを浮かべた。
「……フン、まあいいさ」
 政次郎は車庫から出て、酒代をどう工面するかについて考えることにした。

「その2」へ続く

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【創作小説】・「政次郎とトシユキとEM」その2 トシユキ

その2 トシユキ

 御堂トシユキは、町はずれの戸澤政次郎の家に向かっていた。
 ゆるやかな坂を登って行く。
 トシユキは手足がひょろ長く、なんとなくホストくずれのような軽薄な風体をしていた。実際、ホストをしていたこともあるが、数カ月でやめてしまった。
 彼の顔には、複雑な表情がへばりついている。
 トシユキの仕事は、借金の回収だ。しかも、完全に合法とは言い難いたぐいの借金、いわゆる闇金である。
 彼は、まだこの業界に入って数カ月しか経っていない。もともとは彼自身がその会社に多額の借金をしていたり、複雑な事情があるのだがそれはこの話には関係がない。
 「戸澤政次郎の件は面倒だ」という話は、前々から聞いていた。
「どう面倒なんですか?」
 トシユキは上司にあたる人物に聞いてみた。
 その人物は、何とも複雑な顔をしていた。
「ま、その、何だ、出るんだよ」
「出るって? 幽霊がですか?」
 トシユキは無邪気にたずねたが、聞かれた方はますます複雑な顔をして、
「それが、幽霊じゃねぇんだよ。どうにも説明のしようがねぇんだ」
 そういうと、急に名案を思いついたようにパッと表情が明るくなり、
「トシユキ、おまえが戸澤の件、やってこい」
 そう突然言い出した。
「おれがですか?」
「おまえがだよ」
 さも当然というふうに言われた。
「でも……出るんですよね?」
「幽霊は出ねぇよ」
 仕事を言い渡した方は、急に肩の荷がおりたとあってニヤニヤし始めた。
 トシユキにはイヤな予感がした。彼の勘は、当たるのだ。これまでも、「勘」で命拾いしたことが何度もある。
 何とか言い逃れしようとしてみたが、馬鹿野郎やれったらやれよと怒鳴られて一蹴されてしまった。
「あのじじいは高価なクラシックカーを持っている。売れば2000万にはなる。それをおさえれば、何の問題もないはずだ」
 そう言われた。もともと、あのクルマを借金のカタにするということでまとまった話のはずだった。
 だが、「実は動かない」ということがひょんなことから発覚し、話がややこしくなってきた、ということもトシユキは知っていた。
 それに加えて、何かが「出る」という。社員の間では、「政次郎の家は『出る』」という噂がまことしやかに広まっていたことは、後から知った。実際いまだに借金の回収はできていない。
 そんなことを考えているうちに、そろそろ政次郎の家のはずだった。坂を登ってから、巨大な廃工場の角を曲がるとやつの家だ。
 廃工場が見えてくると、クソッ、面倒くさいな……と思えてきた。トシユキの悪い癖だ。ちょっと複雑な案件があると、何もかも億劫になって投げ出してしまいたくなるのだ。
 自然と足取りも重くなる。「このまま帰ってどこかに逃げてしまおうか」……非現実的で投げやりな感覚が、トシユキを襲った。
 そのとき遠目に、小学生くらいの子供たちが二、三人、走り抜けて角を曲がって行くのが見えた。
「なんだ、ガキの遊び場になっていやがんのか」
 トシユキは目を凝らした。そしてその途端、心臓のあたりが急激にモヤモヤしてくるのを自覚した。もう一度、走り抜けていった子供たちが角を曲がって戻って来たのだが、それは子供ではなかった。
 いや身長は明らかに1メートル数十センチの子供だったが、今まで見たこともない、潜水服のようなものを着た奇怪な者たちだったのだ。
 全身の色は濃く暗い橙色で、背中に酸素ボンベのようなものを背負っている。背中のボンベから前方のヘルメットにパイプが回っていて、それが口に当たる部分に取り付けられている。目の部分はゴーグルがはまっていたが、サングラスのようになっていて内部は見ることができなかった。
 二、三人ではなく「三人」と、はっきり視認できた。それぞれまったく同じ服装をしていたが、それぞれが違った計測器のようなものを持っていた。走り回っているのは遊んでいるわけではなく、何かの調査をしているらしかった。
 トシユキは立ちすくみ、気ぜわしなく何らかの「調査」を行っている三人のヒューマノイドを見つめ続けた。
 トシユキは二十代前半で、彼が物心ついた頃にはUFOブームはすでに終わっていたから、「宇宙人」の存在を信じたことは一度もなかった。また、「宇宙人」と言えば、「未知との遭遇」に出てくるようないわゆるグレイタイプ以外は知らなかった。
 一方で、Jホラーに普通に親しむ世代でもあった。要するに、グレイと幽霊を「認識」することはできても、それ以外の怪異を脳内で解釈することができないのだ。
 つまり「身長1メートルくらいの、暗い橙色の潜水服を着たものたち三人」が、いったい何なのかが、彼には認識することができない。
 その場で起こっていることを、ただ黙って見つめているだけだった。
 そして三人のヒューマノイドは、トシユキが立っている場所の手前の角を曲がって行ってしまった。

「その3」へ続く

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【創作小説】・「政次郎とトシユキとEM」その3 政次郎とトシユキ

その3 政次郎とトシユキ

 当面の酒代をどうするかしばらく考えて、いい案も浮かばないので政次郎はまた自宅に戻り、自分の定位置であるスプリングの飛び出たソファーに座って古雑誌を読み始めた。
 数分すると、物音がした。かなり大きな音で、何かの部品が倒れたようだった。
「……またガキどもか、それとも借金取りか」
 政次郎はよっこらしょと声を出して立ち上がり、再び外に出た。
 家の前には、御堂トシユキが立っていた。
 だが、家のすぐ前ではない。十メートルほど手前に立っている。
 いまどきのチンピラ風の男。いや政次郎からすれば、まだガキだった。借金取りは過去に何人か追い返したが、その中でも弱そうな男だと思った。
「借金取りか? 帰れ!」
 政次郎はトシユキを怒鳴りつけた。酒がまだ残っていて、少々気が大きくもなっていた。
 怒鳴られたトシユキは、両足がガクガクと震え、口をパクパクさせていた。なんだこいつは? 借金取りじゃないのか? 政次郎が疑問に思うほど、彼は驚きうろたえていた。
「戸澤さん!」
 トシユキが、十メートル前方から政次郎に叫んでくる。
「うるせえ! 借金取りなら帰れ! クルマが欲しけりゃ、持って行け。動かねえがいくらかにはなるだろう! おい、そこのガキ! ウロチョロするなと言ってあるだろ!」
 途中からはトシユキにではなく、その背後にいるだれかに向かって叫んだ。トシユキは政次郎の「ウロチョロするな!」の声ではじかれたように後ろを振り返り、ヒッ、というみっともない声を出した。
「戸澤さん、あ、あいつらは何だ!?」
「知らねえよ。近所のガキだろう」
 政次郎は無造作に言う。
「ガキじゃねぇよ!! 潜水服着たガキがどこにいる!? あ、あれはもしかして……い、いやおれが言いたいのはそこじゃなくて……」
「とにかくうるせえ。おれと話がしたけりゃ、酒持ってこい」
「だから! おれが言いたいのは借金の話じゃねえんだよ!」
 政次郎は、短く沈黙した。
「……じゃ何の用だ」
 トシユキの視線は、政次郎の後ろにあった。彼は右手を高く上げ、政次郎の背後にあるものを指さした。
「その、あんたの家の後ろにある、でっかい円盤は何だって言ってんだよォ―ッ!!」
「ああン?」
 政次郎が状況を理解できず聞き返したその瞬間に、背後からウィーンという、モーターがものすごい速さで回転する音が聞こえてきた。
 その音は急速にかん高くなってゆき、酒で半分眠ったような政次郎の頭でも事態の異常さを理解できた。だから振り返った。
 そして政次郎は、自分の住む平屋の一軒家の背後に、その数倍はあると思われる大きさの銀色の円盤が、日中の光に照らされて存在しているのを観た。
 円盤は今にも浮上するところだった。高速で回転しているらしく、強風が砂利を巻き上げていた。
「戸澤さん! 何だよあれは!!」
 トシユキは叫んだ。
「知らねェよーッ!!」
 強風の中、政次郎は言い返した。
 やがて円盤は急浮上を開始し、そのまま轟音をあげて、真昼間の空の彼方に垂直に飛んでいき、雲の彼方に消えた。

「その4」(完結)に続く

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【創作小説】・「政次郎とトシユキとEM」その4(完結)

その4 完結編

「本当に見えてなかったのか?」
 トシユキは政次郎のゴミの散乱する部屋に入っていた。ガタガタの椅子に座っている。
「知らねぇ。よく覚えてない」
 政次郎は手酌でウイスキーをコップに注ぎ、飲んだ。どうしても酒を飲ませろと騒いだのだ。おごってやる筋合いではなかったが、トシユキも飲まずにはいられなくなり、コンビニでウイスキーを買って真昼間から二人で飲んでいる。
「あのさぁ。もうおれが廃工場を曲がって、あんたの家の敷地の全容を見たときには、あのでっかい円盤が、あんたの家の後ろにそびえてたんだよ。明らかにおかしいだろ。ここに住んでて、あれが見えてないなんて」
 トシユキは問い詰めた。
「だからよく見てないものは見てない、っつってんだよ。ウチの裏は空き地になってんだよ。だれかが何か建てたのかもしれねぇだろう」
「建てた!? 何を!?」
「だから……タンクか何かだよ。化学薬品の入ったタンクでもどこかの会社がつくったのかな、と思ってたんだよ」
「タンクぅ?」
 トシユキはあきれ果てた。おそらく、政次郎は毎日飲んだくれていて周囲のことがよく理解できていないのだろう。
「あれがタンクだと思っていたとして、いつ頃からあるんだ、あれは」
「さあなあ……半年くらい前からじゃないか?」
 政次郎はウイスキーの方に意識が言っていて、思い出すのも面倒という様子だった。
「あんなものを? 半年も放置? じゃあの……宇宙人は?」
「宇宙人って何だよ」
「あの潜水服を着た小人だよ! あんたも観たんだろ? しかも何度も!」
 政次郎は何食わぬ顔で言う。
「あれァ近所のガキだ。ガキがウチの敷地を遊び場に使っていやがったんだよ」
「ふざけるのもいいかげんにしろ!」
 思わずトシユキは怒鳴ってしまった。
「潜水服を着た小学生が三人も、昼間っからウロチョロしてるわけねえだろがっ! ……ありゃーおれが観たところ、宇宙人だ。UFOがあったんだから間違いねェ」
 会社の先輩たちも、UFOはともかく潜水服の小人は何度か見ているに違いない。だから「出る」と言っていたのだ。
「……もういいだろ。いなくなっちまったんだから。飛んでっちまったんだから」
 政次郎はまたウイスキーをぐびりと飲んだ。
 トシユキは自分の知識と経験を総動員して考えた。政次郎はまったくあてにならないから、一人で考えた。
 政次郎の家の背後に、半年前からUFOが止まっていた。町はずれなので、あまり気づかれなかった。ここで、理由はわからないが小人型宇宙人が調査を行っていた。調査が終わったので、飛び立っていった……。
 そうとしか考えられなかった。
 しかし、そう解釈したとしても、どうなるものでもないことも確かだった。
 家の裏に回って見ると、空き地には巨大なものが止まっていた形跡はなかった。宇宙人目撃の証拠があるわけでもない。第一、トシユキの仕事は借金の回収であり、円盤について考えることではない。
「……持って行けよ」
 政次郎が言った。
「……何だと?」
「クルマ、持って行けよ」
 再び、政次郎が言った。
「動かなくても、多少は価値があるんだろ?」
「言われなくてもわかってるよ」
 トシユキと政次郎は家を出て車庫に向かった。
 車庫を開ける。トヨタ・2000GTが、そこにはおさまっていた。
「でも動かないんだよな。いつ頃からだ?」
「……半年前くらいからかねえ……」
 政次郎は他人事のように言う。
 トシユキはまず手始めに、と、クルマに乗りこんでエンジンをかけた。
 一瞬にして、エンジンがかかった。
「お、動くじゃねえか」
「動くか!」
 政次郎がちょっと嬉しそうな顔をした。手にはウイスキーの小瓶を持ったままだ。
「動くなら何の問題もねぇや。これであんたの借金はチャラだ」
 トシユキはホッとして言った。先輩が小人宇宙人にビビっていた件を自分が解決したとなれば、まあポイントを稼いだことにはなるだろう。
 政次郎とトシユキはまた家に戻った。
「おっ、テレビもつくな!」
 政次郎がそう言った。クルマが動いたならテレビも映るような気がしてスイッチを入れたら、映ったのだ。
「時計も動いてるぞ」
 政次郎は、半年前から止まったままだった壁掛け時計を見上げた。
「じゃあ、クルマの件はいいな?」
 トシユキは念を押した。
「よくわかんねぇが、それでうるさいあんたらが来なくなればホッとするよ」
 政次郎は、自分の定位置であるソファーに座ってテレビを見始めた。もうトシユキには目もくれない。
「なあ」
 トシユキは最後にもう一度、政次郎にたずねた。
「あの潜水服たち、また来ると思うか?」
 政次郎は振り返りもせずに、言った。
「さあね。ウチの敷地に入ったら追い出してやるだけだ」
「そうか」
 トシユキは政次郎の家を出た。
 数分が経ち、政次郎は、もうUFOを観たことなどすっかり忘れていた。逃げた妻子のことも、明日の今ごろまでは思い出さないだろう。それまでの人生も、トヨタ・2000GTをどうやって入手したのかも、なぜ借金したのかも。
 考えているのは、今飲んでいるウイスキーがなくなったら、酒代をどう工面するかだけだった。
 そしてその考えも、酔いで頭が混濁するにしたがって、消えた。


EM効果 (Electro Mgnetic effects)
電磁効果。UFOが接近したり通過したりした時などに、人間や動物、機械などが影響を受けること。
Skeptic's Wiki
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=UFO%A4%C8%B1%A7%C3%E8%BF%CD%A1%A7%CD%D1%B8%EC

(完)

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・「少年の町ZF」(1) ラボック光編 小池一夫、平野仁(2011、小池書院)

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1976年から、ビッグコミックオリジナル連載。

ある夜、とつぜん「ラボック光」と呼ばれるUFOの編隊が空に現れた。その光は高陣山あたりで消えた。
それを目撃した11人の少年たちは、翌日光の正体を突き止めるため高陣山に向かう。そこでは次々と怪奇な事件が起こり、すっかりおびえきった少年たちは翌朝、下山する。

すると街は驚くべき変化をとげてしまっていた……。

話には聞いていたが初めて読む。面白いが何しろ序盤なので、感想の書きようがない。導入部に、当時のUFOに関する知識が散りばめられているところに時代を感じさせる。

コンビニコミックだが、巻末に次回発売日が記されていたり「全5巻です」と最初から書かれているのは良い。
第1巻を買った時点で、何冊買わされるのかわかっていた方が、買う方もその気になるというものだ。

ただし、あいかわらず小池書院の単行本は初出をまったく載せない。勝手な想像だが、小池先生が「この作品はいつの時代にも通用する!」という自負があるから載せないのではないかと思っているのだが、やはりこういうことは大事なので載せてほしい。

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・「アガルタ」 石森章太郎(1976、朝日ソノラマ)

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東北から石森プロにやってきたマンガ家志望の黒木シュンは、石森プロにちょくちょく遊びに来るUFOマニアの美少女・橘レミと親しくなる。
しかしシュンには秘密があった。人類の存亡にも関係している秘密が……。なお、彼が石森プロのアシスタントになるために持ち込んできたマンガのタイトルは、「アガルタ」であった。

1974年、少女コミック連載らしい。ヒロインがお蝶夫人みたいなオシャレな髪型をしているのはそのせいか。
絵柄は石森が劇画タッチに変えてから、変に絵が荒れる前のいちばんいい頃である。

本書に出てくるのはオカルトアイテムの数々だ。日本のピラミッド・クロマンタ、竹内文書、アトランティス伝説、そして爬虫類型宇宙人、さらには人類文明に宇宙人が関与していた説、そして「アガルタ」。

はっきり言おう。本作のプロットに、現在読むにあたって新味はまったくない。
当時こそ、石森一流の多読・乱読がオカルトブームとあいまって読者には刺激になっていただろうが、ネット時代の現在、何がどう影響し合っているかがわかってしまえば、プロットの構成やオチは簡単に割れてしまう(私は前から、70年代の石森は大陸書房系のオカルト本を好んで読んでいたと推測している)。

しかし、石森ファンとして観るべき点がないではない。
繰り返し書いていることだが、乱読の中で石森は「ユダヤ陰謀論」なども当然知っていたはずである。だが、私が彼の作品を読むかぎり、安易な陰謀論を描くことはほとんどなかった(もちろん、荒唐無稽な陰謀論は描いた。「ショッカー」とかね)。
時代アクション劇画「九頭竜」でも、日本は背後で敵対する組織が奪い合っていることになっているが、その正体は明らかにはならない。本作「アガルタ」でも、人類の運命を握っているのは二派に分かれた宇宙人だが、そのどちらが悪いというふうには書いていない。

いわば「石森的陰謀論」は、ギリギリまで「ユダヤ」に接近しつつ、おそらく意識的にそこをスルリとすり抜ける。
そして、さらなる荒唐無稽な(たとえば宇宙人などの)対立構造にバトンタッチされていく。
80年代、「幻魔大戦」復活プロジェクトみたいなことが行われていたとき、平井和正の意気込みに比べてどうも石森のトーンが低かった印象があるが、彼の念頭にあるのは究極的には「大連盟」と「幻魔」といった抽象化された組織の戦いだったのかもしれない。

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