青春

・「私立極道高校 復活版」(上)(下) 宮下あきら(2012、集英社) 

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もうすぐ最終回を迎える「こち亀」が週刊少年ジャンプでスタートしたのが1976年。
本作はその3年後の1979年にスタート、翌年の11号で「アシスタントが無断で実在の高校の校章を書いた」という件で連載打ち切り、単行本も絶版回収となった。

この単行本は、最近出た「復刻版」で打ち切り直前まで掲載されているが、作者あとがきで「極道高校の人気で観たこともない大金を手に入れ、酒と女におぼれた」とある。新人が、単行本も1巻しか出ていない状態で、いくら右肩あがりとしてもそれだけの大金を入手できるか疑問だが、作者のリップサービスかもしれない。

さて、この「みんなが読んだつもりであまり読んだことのない」本作のあらすじは簡単に言えばこうだ。

極道社会の伝統を守るため、全国各地の極道の親分が力を合わせ創設した国内唯一の極道(要するにヤクザ)養成機関「私立極道(きわめみち)高校」。
そこに所属する生徒たちは、「ヤクザを育成する」というムチャクチャな学校内プログラムや、全国から集まってくる猛者とのケンカに明け暮れる。
その中には、一匹狼のスタンスを崩さない男・学帽政(がくぼうまさ)の姿があった。


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【雑記】・「クラシックゴーストライター事件」あるいは世の中そんなに単純じゃない

事件そのものについては、各自調べてほしいが、今回の事件に対する人々の反応について考える。

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【小説】・「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」 村上春樹(2013、文藝春秋)

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多崎つくるには、高校から大学1年くらいにかけて、男二人(アカ、アオ)、女二人(シロ、クロ)の4人の親友がいた。
つくるを含めたこの五人グループには、完璧な調和があったかに見えた。
だが、ある日突然、つくるはグループからの追放を、他の4人全員から言い渡される。理由はわからない。
以来、つくるは友人らしい友人、恋人らしい恋人をつくれず三十六歳になっていた。
この頃、彼は沙羅という三十八歳の女性とつきあい始める。沙羅は、つくるとの雑談の中から、彼が学生時代に親友グループから追放され、しかもその謎を現在まで解明していないことを知る。
沙羅は、つくるの対人的な距離の取り方に問題を感じ、「かつての親友グループをたずねて回り、真相を理解するべきではないのか」と強く提案する。
こうして、多崎つくるは過去の親友たち一人ひとりに会って行く、という「巡礼」をすることになる。

一読、なんだつまんねえな、と思っていたのだが、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。(感想・考察・謎解き)(ネタバレあり)を読んだら、なるほどそうかもしれない、と思うようになった。

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・「さわやか万太郎」全10巻 本宮ひろ志(1979~1981、集英社)

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週刊少年ジャンプ連載。100年、男の子が生まれなかったという女系の一族・花見家に生まれた男、万太郎。彼は弱きをたすけ強きをくじく、スポーツ万能のスーパーマン。
さらに、逆に男系家族の松平家の美少女、五月との結婚を命ぜられるという、なんともうらやましい境遇なのであった。

さて、感想。

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・「原宿天鵞絨館」 柳沢きみお(1986、講談社)

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短編集。前半が少年マンガ、後半が青年マンガという面白い構成になっている。
なんでも、柳沢きみおが青年マンガに活動の場を移すきっかけとなった作品群ということで、「柳沢きみお」の青年マンガの基本的なフォーマットは初期から確立されていたことがわかる。

逆に言えば1984年掲載の、二本の「少年マンガ」は、ちょっとこの調子では80年代を乗りきれないだろうなあ……という雰囲気が出てしまっている。

一方、最初に描いた青年マンガだという「HEAD LIGHT」は、きみお青年マンガの本質があると言いきってもいい佳品である。
27歳で将来を決めかねている青年と、それまでの仕事を捨てて好きに生きようと決心する五十代のおっさんとの宅配便会社での交流を通して、男の人生の節目に去来する虚しさ、寂しさをエンターテインメントとして描いている。

私の記憶では、それまで「普通の大人の男の寂しさ」を、エンターテインメントとして表現できる作家は少なかったのだ。
この段階で作者は鉱脈を掘り当てたと言える。

(収録作品)
・原宿天鵞絨(びろうど)館
・MILK
・BMW R27
・HEAD LIGHT
・大人熱 その1 カゴの鳥
・大人熱 その2 マネーガール

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・「藤子不二雄物語 ハムサラダくん 完全版」(上)(下) 吉田忠(2007、マガジン・ファイブ)

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おっ、その後また復刊されたのか

77~80年くらいまで、コロコロコミック連載。
ハムや肉が大好きな藤本(ハム)と野菜大好き我孫子(サラダ)が、二人でコンビを組んでマンガ家を目指す、児童誌版「まんが道」とでも言うべき作品。

77年当時、ほとんど藤子不二雄の個人雑誌といってもいい「コロコロコミック」に、藤子不二雄の評伝的作品が載っていてもなんらおかしくはない。
藤子不二雄自身の「まんが道」とは別に、本作は「コロコロの藤子不二雄マンガ」として始まった。

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【映画】・「私の優しくない先輩」

公式ページ

監督:山本寛
脚本:大野敏哉

女子高生の西表耶麻子(川島海荷)は、心臓が弱いためにとある島に引っ越してきた。
島の人々との一歩引いた距離感に嬉しさを覚える耶麻子は、先輩の南愛治が大好き。そして、同じく先輩の不破風和(はんにゃ・金田)が大嫌いだった。不破は、暑苦しくて汗臭くて、耶麻子の考える距離感を平然と越えてくる熱血野郎だからだ。

ある日、出すつもりもなく書いてしまった愛治へのラブレターを不破に見られてしまった耶麻子は、不破の計画した「愛治とつきあうようになれる作戦」に乗っかることになるのだが……。

私にとって、本作は大変面白かった。

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【映画】・「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」

公式ページ

監督:トッド・フィリップス
脚本:ジョン・ルーカス、スコット・ムーア

結婚式を2日後に控えたダグは、悪友たちおよびイカれた変態男である新婦の弟とともにラスベガスへ独身最後の旅行へ。
だが屋上で乾杯してから全員の記憶がふっとぶほどの二日酔いに。翌朝、友人たちが目を覚ますと、以下のようなとんでもないことが起こっていた!

・ダグは消えていた
・歯医者である一人は歯が欠けていた
・ホテルのトイレに虎がいた
・そしてクローゼットには赤ん坊?

なんで? どうして? ダグ以外の三人はダグを探しまわる……。

とっても面白かったが、本作について自分が感想を書くためには少々遠回りな説明が必要だろう。
以下に書くことは映画本編とはまったく関係がないので、読まないでいいです(「読まないでいいです」っつって書くんだよな、私も)。

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・「いちご100%」(9)~(10) 河下水希(2004、集英社)

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週刊少年ジャンプ連載。
3巻あたりまでを絶賛していた私だったが、このあたりでそろそろ魔法がとけ始めている感も……。
お話としては「女の子との精神的距離が縮まりそうで縮まらない」、「初体験できそうなところで邪魔が入る」の繰り返し。
細かいところでは、文化祭の出し物での部費争奪戦に勝っても負けても、それが物語に何も反映されないことにガッカリしてしまったし、新キャラはますます出ても出なくてもいいやつらばかりになっている。

私はやはり、この作者の作風はハーレムものには向かないと思う。真中と東城の不器用な関係に、神秘的美少女の西野が奇跡的にからんでくる、その関係性がやはりいちばん面白かった。キャラクターを1からつくりあげてそれらをからませるというスリルがあったのだが……。

8巻の感想

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・「いちご100%」(8) 河下水希(2003、集英社)

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週刊少年ジャンプ連載。
誕生日プレゼント、合宿で迷って小さな小屋で二人きりになって裸で暖めあう、肝試し、と「その手のマンガ」のエピソードを順調にこなしているという感じ。
ここまで読んできて、「河下水希にハーレムものは向かないんじゃないか?」と思い始めてる。

7巻の感想

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