ファンタジー

・「本秀康の描く4ページ」 本秀康(2004、太田出版)

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タイトルどおりの短編集。
カワイイ絵柄に、とっぴょうしもないオチ(ブラック成分多め)。
どれも短いだけに、「オシャレさ」がきわだっているかも。

それこそヴィレバンで平積みになっていたとしてもおかしくはなく、実際、平積みになっていただろう。
それにしても、ネットで「ヴィレバン女(なぜか女子)」が批判されているのがいまだに意味がわからん。

マンガの良さは、アーティスティックな作品だろうが、oh!透明人間だろうが同列に語れるところにある。
というより、「アートVSエンターテインメント」という対立構造がいつ頃できたかを調べるべきであって、陣営に分かれてヤイヤイやるのはバカげているよね。
と、本作と関係ない話で埋めてしまってすみません。

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・「本秀康名作劇場」 本秀康(2003、小学館)

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短編集。中野の人気ラーメン屋(2016年の今でも大人気)「若葉」で観た光景を描いた「若葉の頃」、自分の母親そっくりのロボットをつくった天才少年の話「あふれる愛」などは、名作ではないでしょうか。
社長に牛丼弁当を買いに行かされる女性秘書の話(本当にそういう話です)「愛する社長」も、哀しいながらナンセンスで面白い。

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・「君の友だち」 本秀康(1999、青林工藝舎)

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40ページくらいのマンガ「アーノルド」収録。
主に90年代後半の「ガロ」に収録された作品群。
本秀康の作品、カワイイ絵柄で「えーっ、そうなっちゃうの!?」っていうブラックなオチがつくことが多いんだけど、私はそれで「どんよりした気持ち」になったりはしない。
それは「わざと人をイヤな気分にさせてやろう」という感じがないからだと思う。
そこにあるのは、「ブラック」というよりは、「ペーソス」だと思うんですよね。
人間そのものの哀愁というか。

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・「アリオン」全5巻 安彦良和(1980~1984、徳間書店)

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「リュウ」連載。
少年アリオンは、母デメテルと平和に暮らしていたが、ある日訪ねてきた男・ハデスにさらわれ、王であるゼウス暗殺の刺客として育てられる。
だがその暗殺に失敗し、いろいろあって父・ポセイドンの軍に加わる。
そこでもとりかえしのつかないことをしてしまい、自身の「呪われた血」に絶望しかけたとき、謎の男・黒の獅子王が現れる。

もう30年以上前の作品だと考えるとしみじみするが、半可通ながら解説してみよう。

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・「第三世界の長井」(1)~(2) ながいけん(2013、小学館)

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ゲッサン連載。
あらすじ、作品の雰囲気については、過去参照。

ながいけん閣下『第三世界の長井』に絶句(エキサイトレビュー)

ここがわからないよ。『第三世界の長井』10の謎を考える(たまごまごごはん)

「あの」神聖モテモテ王国の作者の最新作とあって、期待する人々も多いようだ。

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・「PUNK]全4巻 長尾謙一郎(2010~2012、白泉社)

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ヤングアニマル連載。
妻子がいる、平凡な生活を送っていたと思われるマンガ家・長尾の自宅に、ある日ファンを自称する巨大な黒人女が訪れる。
それが、長尾の運命を大きく変えるきっかけとなった。彼は世界を裏であやつる「バビロン」の関係者を抹殺せよと、指令を下されるのだ。

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・「ボアザン」 高遠るい(2011、講談社)

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外見は幼女である「魔女」のからかいに翻弄される、歴史上の「ひどいことをしたのに『天罰』も受けずに生き伸びた人物」にスポットをあてる試み。

着想は面白いし、「外部の人間が現代の価値観から、人々を倫理的に裁こうとする」旧来の作品へのアンチテーゼ、ということも頭では理解できる。
それすなわち、ぶっちゃければ「業の肯定」ということにもなろう。

しかし、「業」を描くにしては洗練されすぎている、とも感じてしまうのだ。

ギャグマンガ「モスマン」も同時収録。

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・「どろろんえん魔くん 完全愛蔵版」 永井豪(2011、角川書店)

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1973~1974年、少年サンデー連載。

閻魔大王の甥っ子・えん魔くんが、人間界にやってきて雪女族の幼なじみ・雪子姫、河童の妖怪・カパエルとともに妖怪退治をする。

アニメ版の方は、70年代独特のドロドロ感があるが、マンガ版の本作は基本、ギャグノリ。しかし意外とと言っては失礼だが、今回再読しても面白かった。超多忙の中で、手クセ感は少なくギャグは生き生きとしている。一部では有名な妖怪怒黒のエピソードも、単なるスカシ以上の楽しさがある。
「ドロロンえん魔くん メ~ラめら」は、このマンガ版のノリをもとにつくられたのだろう。

今回、「完全愛蔵版」と銘打ち顔などを多少描き直している。逆に、過去の単行本には収録されていた大人になったえん魔くんの読み切りはカットされてしまっている。残念だ。

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・「Zマジンガー」全5巻 永井豪(1999~2000、講談社)

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人間のために戦ってきた機械神・Z神(ゼウス)は死んだが、兜甲児が乗りこむことによって「Zマジンガー」として復活、ギリシャの神々の名を持った機械の神たちと戦うことになる。

うーん、「キューティーハニー 天女伝説」(感想)を読んでも思ったことなんだが、近年の永井豪は旧作をリメイクする場合でも、明確に違う設定やプロットが頭にあって、そっちを描きたくて仕方なく旧作を描いている気がする。

「キューティーハニー 天女伝説」は実質的には早見青子という女探偵をハニーがサポートする物語だったし、本作は「ギリシャ神話の名を持った、神の域に達したロボットたちの人間(?)模様」を描きたいというのが先に立ち過ぎてしまっている。

根本的な問題として、表情豊かな神々に対してマジンガーは無表情なので、なんだか印象が薄くなってしまう。
もう少し神と人間の対立構造をつくって、「人間でもここまで対抗できるんだ!!」っていうのがないと、人間が添え物になってしまうんだよね。

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【小説】・「アムネジア」 稲生平太郎(2006、角川書店)

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編集プロダクションに勤める青年・島津伶は、戸籍上、数十年前に死亡した(ことになっている)男・徳部の死の謎に興味をひかれる。
小さな新聞社の記者・澤本と知り合った島津は、それが出所のあやしげな超巨額の融資ばなしに関係があると聞かされる。一方、徳部は「いかにも永久機関的なもの」の開発にも携わっていた経緯があった。

島津は、日常にぱっくり口を開けている「異世界」の奇妙な出来事に、やがて取りこまれていく……。

「すべての伏線めいたものをチグハグに配置し、その不協和音こそを全面に出していく」という手法は面白いことは面白いが……。前半が整然とし過ぎているために、謎が解かれないという意味でのだまされ感覚は否めない、かなあ。謎解き小説ではないと承知してても。

私が本書を読んで連想したのは、根本敬が「人生解毒波止場」などで主張している「因果」という概念だ。というか、私は本作の著者と根本敬氏の主張は、元となる教養の質はまったく異なるが、本質的には非常に近しいと思う。
現在、「稲生平太郎 根本敬」で検索してもこの二人を比較した論考は観られない。
二人のファンが、その背景となる教養の違いを大きな理由に、完全に別個のクラスタに分かれてしまっている、そのことこそが実は問題だと、私は思っている。

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