少女・レディース

・「海月姫」(1)~(8) 東村アキコ(2008~2011、講談社)

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「kiss」連載。
女性のオタクばかりが住むアパート「天水館」。このメンバーは全員「尼~ず」を自称し、異性やオシャレな人々とは付き合わないことをモットーとし、ニートなオタクライフを楽しんでいた。
ヒロイン・月海(つきみ)もそのメンバーであり、いちばん後輩らしい。彼女はクラゲオタクであり、少々対人恐怖、男性恐怖症のケもあるようである。

月海はある日、蔵之介という女装男子と出会う。彼は政治家の次男であり、妙に天水館を気に入って、男性嫌いのメンバーには「自分は女性である」と偽り頻繁に出入りするようになる。
その後、天水館が再開発によって取り壊されることが決定。月海たちは驚きとまどうが、それを推進しているのは蔵之介の父親であった。
蔵之介は、月海に「クラゲのように美しいドレス」をつくることができる才能があることを知り、それを売りだすことによって天水館存続のための資金を稼ごうとするのだが……。

思いきり紹介のタイミングを逃している気がするが、それがおれ流。
とりあえず、「オタクマンガとして」という切り口から感想を書いてみたい。

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・「ムー大陸の7人」 井出ちかえ(1974、朝日ソノラマ)

世界各国から選ばれた七人の子供たちによる「国際子供キャンプ」のメンバーに選ばれた少女・優は、船が嵐に巻き込まれ、ムー大陸の住人の末裔の住む場所に流される。
そこで優の恋と冒険が始まる。

当時の「失われた大陸」ブームの中で描かれた異郷ロマン。恋ありアクションあり、謎ありで男の子でもじゅうぶんに楽しめる。やや懐古的・保守的言動を許してもらえるなら、この頃の少女マンガは「少女が少女であること」は描いても、「少女がオンナであること(男性とは違う考え方をしていること)」を強調することはなかった。
だからこそ、この時代の少女マンガには、男性もいつでも入って行くことができる。

もちろん、「女が男とは違う思考をしている」と主張されることは、歴史の必然であった。ただし、そういうところから失われるものもある、ということだ。

さて、80年代に、「聖闘士聖矢」や「ぼくの地球を守って」からイメージされたと思われる「生まれ変わりを探すブーム」があった。本作はそれよりはるか前に、「転生による永遠の愛」を描いている。

あるいはまた、作者がイメージした「異郷冒険ロマン」を、80年代に「今すぐぼくらの目の前に」再現しようとしてくれたのがスピルバーグの「インディ・ジョーンズ」だったのだとも言える。

【関連】
気になったので補足

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・「放課後保健室」全10巻 水城せとな(2005~2008、秋田書店)

Houkago
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月刊プリンセス連載。
ある日、高校生の一条真白は自分が上半身が男、下半身が女であるという現実を突きつけられる。真白は、あるはずのない地下の保健室にいざなわれ、そこで授業を受けるようにと言われる。

その授業とは、眠りに落ち、夢の世界の中で他の生徒たちと戦うこと。
夢の世界では生徒たちは「それそれが心で思っている姿」に変身している。その中には化け物じみた姿かたちの者もいる。
勝ち続けると「卒業」することができ、いったん卒業するとその人物は学園から忘れ去られる。しかし、卒業できなければ永遠に他の生徒たちとの戦いを続けなければならない。

男性として女性の藤島紅葉を愛すること、一方で女性として男性の水橋蒼を愛すること、両方に気持ちが引き裂かれる真白は、本当に「卒業」できるのだろうか。
いやこの保健室で行われる「卒業」って、何なのだろうか?

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