【特撮】・「やまちゃんビオランテ問題」
ネットでは多少沈静化したかと思うが、あいかわらず「シン・ゴジラ」に関する考察や論争がすさまじい。
しかもみんな目が本気だ。何か殺気立っている。前にも書いたとおり「うるさいファン」というのはスター・ウォーズなりスター・トレックなり、あるいは宝塚もそうなのかな? とにかくいろいろいるとは思うが、「シン・ゴジラ」に関しては何かこう「ふざけるスキがない」ほどの、論者の殺気を感じるのだ。
そんな中、「少し頭を冷やそうよ」的な意見が出てくるのは当然だが、たとえば「『シン・ゴジラ』は一番作っちゃいけない作品だったのでは」の連ツイなどは、「政権批判の意図があるのだろうけど」という一文からもう読む気がなくなる。某評論家がこの人の連ツイをほめていたけど、正気ですか!?
政権批判の意図は、たぶんないだろう。
いちおう「20年前、エヴァをつくったときと庵野監督に劇的な考えの変化がなければ」というふうに断り書きをつけておくけどね。
20年は、人の考えが変わるのにじゅうぶんな時間だから。
しかし、庵野監督と樋口監督のコンビが、若い頃からの「オタク第一世代」のタマシイで「シン・ゴジラ」を描いているなら、政権批判の意味なんか、あるはずがない。
それよりも、頭を冷やすなら、私が気になっている「やまちゃんビオランテ問題」について考えた方がいいだろう。
・その1
数年前、何かのラジオ番組で、ゴジラが話題になっていたんだからギャレス・エドワーズ監督のゴジラについて、町山智浩がアメリカから電話で語っているときのはずだ。
「ゴジラがハリウッドで映画化される」と興奮気味に語る町山氏に対し、スタジオにいた南キャンのやまちゃんが、「ゴジラって、あの『ゴジラVSビオランテ』のゴジラですか?」と不審げに言ったのだ。
そして、さらに不可解だ、とでもいうように南キャンやまちゃんは続けた。
「子供の頃、福引で『ゴジラVSビオランテ』のチケットが二枚当たったんで、兄貴と二人で見に行ったんですよ。そしたら終わった後に『こんなもの見せやがってこの野郎!!』と殴られた」
というような話をした。
山ちゃん(山里)のオタク感度の悪さには、ちょっと気になるところがある。グッズ付きの「進撃の巨人」の単行本を間違えて買ってしまい、そのとまどいをそのままツイッターに書いてしまったり(いやそれ「グッズはいらない」って言っているようなもので、芸能人としてまずいんじゃないの?)、「マッドマックス 怒りのデスロード」のフェミニズム的な要素も、いっさい理解していなかった。
「あれだけ鋭いお笑い感度を持っている人がなぜ!?」と理解に苦しむのだが、彼は大学時代はイケイケの遊び人大学生であり、「寮で毎週、持ち回りで合コンの話を持ってくる決まりになっていた」という環境にいた人物である。
まあ要するに「チャラいコミュニティ」では、「普通の人」だったのかもしれない。
・その2
何が言いたいかというと、当時中学生だったやまちゃん本人も、「ゴジラVSビオランテ」の良さを理解していなかったということだろう。「兄貴に殴られた」というエピソードのニュアンスの中には、「いい映画、面白い映画だったのに理不尽に殴られた」という要素はない。
、「ゴジラVSビオランテ」は、昭和、平成通してのゴジラシリーズの中でも、まあよくできた方の映画だろう。
だが、興味のない人にとっては、「ひどい映画」なのだ。
「ゴジラ総選挙」で一位を取ろうが、沢口靖子が出ようが、関係ない。
やはり「普通の人」には「着ぐるみ同士がプロレスする映画」としか映っていなかった、ということなのだ。
不思議なことに、こういうことはアメリカのSF映画などではあまりない。理由は簡単、一定レベルより下のSF映画を、一般の人は見ないからだ。スター・ウォーズにしても、インディペンデンス・ディにしても、常に最高級のものを味わっているのだ。
今回の「シン・ゴジラ」は、最初の「ゴジラという完全に虚構の存在が、現実の東京に現れる」という設定を称賛する声も多い。私もそう思うが、ひまつぶしにしか映画を観ない人(アメリカ映画を観慣れている人)にとっては、そんなことは当然なのだ。
だから、今回「シン・ゴジラ」にピンとこなかった人の中には、これほど「現実の世界に虚構のゴジラが現れる」という設定をつくりこんでなお、「なんでゴジラなんだ?」という根本的なところで引っかかっている人が、かなり多いのではないかと私は推測している。
南キャンやまちゃんの「シン・ゴジラ」についての感想が、早く聞きたい。
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