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【書籍】・「人生がときめく片づけの魔法」 近藤麻理恵(2010、サンマーク出版)

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「収納の前に、必ずいらないものを捨てろ、この順番は逆にしてはならない」
本書の言い分をひと言で表せば、そうなる。つまり捨てなければ片付けはできない。当然のことなのだが、人はものを捨てたがらない習性があるらしく、「捨てること」を心理的に不問にしてしまうようだ。
「『捨てる!』技術」(2000年)という先行本があるとは言え、なるほどと思ったところである。

「捨てるかどうか迷ったとき、手にとってみて、ときめくかどうかで捨てるか残すか決める」というのも面白い。
世の中には「整理・片付け本」という一大ジャンルが存在することを今回初めて知ったが、「手にとったとき、ときめくか」というのが本書のオリジナルだったとしたら、興味深い。
これは、完全に「衣類がたまりやすい人」の発想だろう。書籍でも同じことをコンサルタントとして顧客にやらせるらしいが、書籍から出発してはこの発想は出まい。

いろいろ面白かった。本書を読めば、片付けが進むことは間違いないだろう。

が、全体を通すと思想的にはスピリチュアル寸前のところまで行っている。ギリギリである。
「トイレを掃除すると幸せになれる」とか、そのレベルのところや風水まで接近する。しかし完全にそこまで至らないのが、またうまいところだ。

だが、「トイレを掃除すれは幸せになれる」と言った「俗信」を排除した後に来るのは、欧米流の合理主義と自己啓発だと、私は観た。
「過去の思い出に浸るより、未来のことを考えよう」とし、子供の頃の思い出の品や写真まで(チョイスはさせるとは言え)捨てさせるのは、劇的な体験によって心理を変えさせようとする、言っちゃ悪いが「心理的マジック」であろう。
「捨てたぶんだけ前向きに生きなければならない」と思わせるという手法である。

これは売れるわけだ、と感心した。この本を読んで、片付けを実行し、失敗しても成功しても著者に直接クレームを言う人は少ないだろう。
なにしろ、捨てるも捨てないも、「片づけ」をした者の判断なのだから。

ただやはり、ひっかかりは残る。どんなに「思い出の品を安易に捨ててはいけない、本当に大切なものは残しておこう」と書いてあったとしても、著者は中学生の頃から家じゅうのものを捨てまくってきたという人である。

要するに「捨てる」前提なのだ。「人にできるだけものを捨てさせるにはどうすればよいか?」から、逆算して「思い出の品をどう捨てさせるか」考えているように思える。

まあ、基本的に自己啓発本だから当然なのだが、ここにあるのは「片づけ」を実行した、個人の満足度だけである。
親から子へ、子から孫へと行った「歴史的なつながり」はいっさいない。
いやむしろ、著者にとって「片づけ」とは、「もったいない」が口癖の母親からの決別、ともとれる。

しかし、このひとの言うとおり、何でもかんでも捨ててしまったら、あとあとになって、孫は祖父や祖母がどんな人物だったのか、まったくわからなくなってしまているのではないか。

この本、序盤は「片付けの虜」となって「片付け修行」を続ける中高生時代の作者のエキセントリックぶりが笑えるのだが、後半、だんだんむかついてくるので捨てました。

著者も、本書が用済みになったら捨てていい、と書いていたので、文句はないだろう。

本書と正反対のことろにいるのは「ごみ屋敷」の住人である。つまり、「モノがあふれている時代」の象徴性が「整理・片付け」と「ごみ屋敷」に表れていると思ったが、そんなことはとっくの昔に、だれかが考えているだろう。

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