【無駄話】・「『宇宙からのメッセージ』の思い出」
「スター・ウォーズ フォースの覚醒」が公開され、それにともないネット上では、「日本版スター・ウォーズ」とも言える「宇宙からのメッセージ」についての言及が多くなっている。
大半は、表現は古いがいわゆる「生温かい視線」で、日本でのスター・ウォーズ公開前に「やり逃げ」的につくられた同作について、愛情こめて語られる場合が多いようだ。
しかし、当時小学校五年生で、親に拝み倒して1年に1回、劇場で映画を観る機会があるかないか、という状態での私のリアルタイムでの感想は、書き残しておかねばならないと思う。
・その1
スター・ウォーズファンには有名だろうが、「宇宙からのメッセージ」公開時の1978年4月頃、「スター・ウォーズ」1作目はアメリカで公開済みにも関わらず、どういうわけか日本ではまだ公開されていなかった。
当時の学習誌の、確かシンセサイザー奏者か何かのインタビューで、「現在の趣味はスター・ウォーズのグッズ集め」と書いてあり、写真でそのコレクションが紹介されているのを、非常に奇異に思ったものだ。
その人がSWを観て集めているのかどうかは知らないが、「本編を観ていないのにグッズだけ集めている」ということは、当時わりと普通に行われていたようなのだ。
そんなわけで当時、小学生にも「何かすごいSF映画がアメリカでつくられた」くらいの知識はあった。
そこで、「本物が公開される前に、似た企画の映画を先に公開してしまえ」ということでつくられたと言われるのが、「宇宙からのメッセージ」と「惑星大戦争」であった。
そんな状況下で、私は、たまたま「宇宙からのメッセージ」公開前のテレビ特番を観てしまった。確か土井まさるが司会だったと思う。当然だが映画の宣伝の特番は、映画が見たくなるようにつくられている。私はいてもたってもいられなくなり、母親に拝み倒して連れて行ってもらうことにした。
・その2
伊集院光などもラジオで言っていたが、「昔の人」は、途中から映画館に入ることをたいしたことだと思っていなかった。途中から映画館に入り結末だけ観てそのまま待ち、次の回の見逃した冒頭の部分を後から観てよしとする人も多かったのである。
突然思い出したが、1979年公開のアニメ映画「がんばれ!! タブチくん!!」は、当初「どこから観ても面白い!」みたいな、つまり「途中から観ても、オムニバス形式だから楽しめますよ」という意味のキャッチコピーがついていた。今なら、オムニバス形式だからと言って「途中から観て、途中で出て行っていいんだな」と思う人はいまい。
とにかくそういう鑑賞習慣だった。
そんな感じだから、母親も時間どおりに映画館に入ることを重要視しておらず、公開時間ギリギリになって、「アイスクリームが食べたい」と言い出した。
そして、開始20分くらい前に、デパートに入り食堂でアイスクリームを注文した。
観たい映画を1ミリも見逃すまいと思っていた私は、「早く食べてよ!!」と言ったが、母親に「うるさい!!」と言われた。そして、映画が始まろうがどうなろうが知ったことじゃないという風情で、「ああうまい、うまい」と言いながら、ゆっくりアイスクリームを食べた。
このときのことを思い出すと、今でも過呼吸になるくらい、イライラする。
確か、それでギリギリ間に合ったと思う。映画館の名前は忘れたが、場所は新宿だったことは間違いない。
そして、実際観た映画は……まあしょーもなかった。私は、ものすごくがっかりしてしまった。
そもそも、モチーフとなっているのが「八犬伝」だというのがいけない。2時間弱の映画では、主要キャラクターを八人描きわけるのはむずかしいのだ。
監督の深作欣二は、後の83年にも「里見八犬伝」を撮っているが、何かこだわりでもあるのだろうか。
(「里見八犬伝」も、まあどうしようもない映画とは言わないが、名作とは言いがたい作品である。)
この際だからはっきり言わせてもらうが、「宇宙からのメッセージ」には、1978年当時の小学生がワクワクする要素はほとんどなかったと言っていい。これはとても重要なことだ。後でどんなノスタルジー補正をしようと、この事実は変わらない。
どこがどうガッカリしたかは、もう忘れてしまった。ただこういうものは理屈ではない。何かこう圧倒的な「ダサさ」を感じてしまったのだ。
そもそも考えてみてほしい。今でこそ、日本のオタクは「名誉白人」的な余裕をかまして「まあ、こんな作品もいいんじゃない?」などとほざいているが、1978年に「宇宙からのメッセージ」、その直後にテレビ「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」、1984年は「さよならジュピター」、そして1989年には「ガンヘッド」という流れなのだ。
いや今でこそ「さよならジュピター」にしろ「ガンヘッド」にしろ、そんなにボロカスに叩くほどの映画ではないとは思う。そうは思うが、そうした流れで観て行くと、私が日本映画界に対して「やってもやっても勝てない」、「ポテンシャルはあるはずなのに結果は出ない」野球チームのような歯がゆさを感じたとして、だれが責められようか。
ちなみに1984年にはいわゆる「84ゴジラ」も公開されているが、これも前宣伝のわりには、やはり「滅法ひどい」わけでもないが、なんとも複雑な気持ちになる仕上がりの特撮映画であった。
(89年、「ゴジラvsビオランテ」も公開されている。これはまあよかった。)
・その3
「宇宙からのメッセージ」は、その後再見したが、それほど、ものすごくひどい映画というわけではない。
「東映の映画」という観点からみれば、むしろやくざ映画や空手映画の「いつものメンツ」がそろって出ていて、安定感、安心感すらある。だがやはり、どうしようもなくダサい。
今の私は、「宇宙からのメッセージ」は嫌いではない。むしろ好きな方である。だが、スター・ウォーズを観るどころか、公開前にグッズすら買うことのできない小学生が、「似たような作品どころか、さまざまな新機軸を打ち出したすごい作品だ」と言われて、この作品に満足するかどうか。
しかも、テレビシリーズならばまだ、笑ってすまされるが、子供にとってはお祭り空間とも言える劇場公開映画でこのようなことをされては、たまったものではない。
そうしたことは、忘れずに記しておきたいのである。
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