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・「バキ外伝 疵面-スカーフェイス-」(1)~(6) 板垣恵介、 山内雪奈生(2005~2015、秋田書店)

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チャンピオンRED連載。「バキ」シリーズに登場する人気キャラクター「花山薫」を主人公としたスピンアウト作品。
花山薫は、暴力団花山組の二代目であり、超人的なステゴロ(武器を使わないケンカ)の強さを持つ。だが、「鍛えることは女々しい」というポリシーのもと、いっさいのトレーニングなどは行わない。
序盤は一話完結ものだったが、「グランドマスター」と呼ばれる、世界最強の暗殺術を持つ男が登場してから、花山と彼との対決を主軸に置くストーリーとなっている。

実は本作、個人的に第一話からあまりノレなかった。花山にケンカに負けた少年が、花山を倒すために三年間トレーニングをして再戦を挑むが、まったく歯が立たなかったというエピソードである。
最後は「花山に名前を覚えてもらえていた」ということで大感激するというオチだが、三年間も鍛えていて、ケンカにも負けて、名前を覚えてもらっていたからってそこまで服従するものだろうか?
おれなら一生恨む。

花山がとてつもなく器の大きい男であることは、「バキ」シリーズ本編からも、本作からもうかがい知れるのだが、それが「いかにケンカが強いか」ということだけになってしまっているのが、弱い。
普通は、任侠ものの場合「痩せ我慢」が感動を呼ぶのだが、花山は強すぎてその表現がむずかしい。しかも「ぜったいトレーニングしない」というポリシーだから、これでは「持って生まれた肉体でケンカに勝ち、それゆえに尊敬されている」と誤解されかねない。

「あまりに強すぎる」ことが、本作のプロットに支障をきたしていると、私は考える。

本作は、「バキ 死刑囚編」の、素手で人を殺せる死刑囚に匹敵するほどの怪物、通称「レックス」や、世界最強の暗殺者と言われる、身長が子ども並みでゲイキャラという「グランドマスター」が登場してから、まあ細かいことは関係ない、怪獣映画のような展開になってきた。
それはそれでいい。
しかし、ただ身体がでかいだけの「レックス」はともかく、「グランドマスター」の設定はあまりに荒唐無稽すぎるだろう。

そもそも、花山の「強さ」の根拠は、体の大きさと拳の固さ(握力)、ということになっている。そこから「重いパンチ」が繰り出されるのだ。
だが、「グランドマスター」の技は催眠術のような幻術で(まあ、これはこれでいい、死刑囚「ドリアン」も使っていたから)、身長が1メートルちょっとしかないが、薬で抑えなければならないほど強靭な筋力を持っているということになっている。
いくら筋力が強くても、子ども並みのリーチとウェイトしかないのなら、さすがに「世界最強」とは言えないのではないか? というより、花山の「強さ」の説得力(拳の固さとウェイト)と、矛盾してしまう。

「バキ」本編では、「脱力して相手を倒す」という「消力(シャオリー)」という中国拳法の技が登場するが、力まかせのキャラに対応できるのは、そちらだろう。

いや本作はそれなりに面白い作品なのだ。が、ときどきあまりに荒唐無稽な設定が出てきて、それが「すごい!」と感じるよりは、「不安」になってしまうのだ。「えっ、これでいいの?」と思ってしまうような。
「グランドマスター」の背後の秘密結社の存在、なども同じである。

そんな読者のへりくつなどふっ飛ばすような、怪獣映画のような理屈抜きの戦いを、今後も望みたいところである。

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