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スタンス

私のフェミニズムに対するスタンスは、自分の親やきょうだいや、親しい女性の友人が悲しむのは観たくないから、ある程度までは真剣に考える。
もちろん、今はまだまだ男性中心主義的な社会である。そしてある程度近代化された国々の女性たちにも、抑圧された数千年の怨念がある、と私は思っているから、たとえば男女が完全にフィフティフィフティな状態であっても、過去からの蓄積を考えると女性の方がワリを食っている、と考えている。

ただし、ものには言いようというものがあり、私にも非・論理的な感情の臨界点というものがあって、
「そんなに攻撃的になるなら、こちらは理解の努力もしないし協力もしない」
と言いたくなるときもある。

というわけで、「いつかは出るだろう」とは思ってはいたものの、ある女性ライター(ライターでいいのか? けっこうキャリアのある人)の「テレクラキャノンボール2013」批判には、本当にがっかりしてしまった。

もう読み返したくないので、記憶で書くが、彼女は「テレキャノ2013」を観て激怒したと。
その理由は、確か「男性中心社会の中の、さらなる競争社会を、ゲームを通して再現しているから」
「男性が女性にマウンティングしているから」
「体育会系的ホモソーシャル感が気に食わない」
といったような理由だったと思う。

まず驚いたのが「テレキャノ」が、そのまま競争社会と相似形である、と断じている点だ。
彼女の批判は、監督のカンパニー松尾との対談の中で行われているのだが、松尾は「たとえば、『ナンパ王決定戦』にしたらガチな『競争社会』で『男性中心主義』な内容になるだろうが、それはしたくなかった」というようなことを言っていた(と記憶する)。
彼は確か他のインタビューでも「プロレスも、ストリートファイトもやりたくなかった」と言っており、「テレキャノ2013」が、「ガチな競争社会」をズラしているのは明白だと私は考えている。
だからこそ、優勝者に絶対的なスポットライトが当たらなかったり、競争で勝てなかった者にスポットが当たったり、勝負が終わってもまだ「妙な勝負」が続いたりする。
優勝の「ごほうびセックス」は、どのくらいタイトな期間で撮られたのか忘れてしまったが、スパンが短いほど「苦痛」でしかないのも明白である。「テレキャノ2013」では、こと勝負に関しては最終的にグチャグチャになってしまっているのである。

次に説明しておきたいのは、激怒したという女性ライター以外にも、この映画の「体育会系的ホモソーシャル感が苦手」という人が男にも女にもいた点である。
私が観たかぎりでは、彼らはむしろ「チーム」であって、体育会系的上下関係の命令/服従的な関係とは無縁だと思っているからである(少なくとも、そう理解してもらいたい、という撮り方がなされている)。

あんまりこういう書き方はしたくないが、男同士の「ホモソーシャル的関係」がどのようなコミュニティでもすべてフラット、一様に同じであるような書き方は、やめてもらいたい。
正直、非常に不快である。

また、「格差につけこんでいる(金で吊ってハメ撮りをさせる)」という指摘もあったが、これも首をかしげざるを得ない。
「テレキャノ2013」で、極貧を感じさせる女性は出ていないと思う。しいてあげるなら、ボロボロの家に住んでいる人が一人いたが、長尺版のDVDを観るとタクシーの運転手の彼氏がいるとのことである。それで、いくらなんでも「格差による貧困からハメ撮りに」というのはおかしいだろう。

最近、私がものすごく気になっているのは、「男性向けとしてつくられた作品を、女性も観るようになり、そこにある女性差別的部分を声高に批判する」というパターンが増えているということである。

確かに男の私もいい気持ちがしない描写はある。映画「G.I.ジョー2」では、女性兵士が上官に認められず、本名で呼んでもらえずに、死地をくぐり抜けて初めて名前で呼んでもらうというシーンがあり、「これ、いったいいつの映画だ?」と思ったものであった。そんな扱いするなら、最初から女性など出さなければいいのである。
お色気要員としてそろえておいて、差別されては演じた女優もたまったものではない。
(このあたりのことが、注意深く描写されているのが同じく女性兵士の登場する「エクスペンタブルズ3」である。
この辺は、「男性しか観なかった映画を、今は女性も観る」という配慮が感じられる)

例が長くなったが、つくり手が昔のチョーシでつくっていることも多く、確かに不快な描写はあるかもしれないが、それをいちいち指摘することで、世の中が変わるかどうかが、私にはわからない。

大きかったのは「パシフィック・リム」をめぐる騒動だが、あれも意図的に混乱させられていた。
女性が好きなのは主にロボットのはずなのに、「怪獣はどうなのか」がうまくごまかされ、批判が展開されていた。

それと話が飛ぶが、「憧れのお色気要員」として、多くの女性たちから「公認」されているのが峰不二子である。
峰不二子のキャラクターの面白さを否定するものではないが、男性側は、女性側が「公認したかしないか」で欲情の対象を変えることはない。
ぶっちゃけ、峰不二子が人気があるのは「自律している女っぽい」からだろうが、「峰不二子」は男性側にとっては「記号化されたお色気」に堕してしまった感は否めない。
セクシーアイドルが「理想の女性は峰不二子」とか今さら言ってたりすると、アホかと思うが、実は「峰不二子」などの存在は「女にきらわれるセクシーな女」の隠れ蓑として、非常に有効に機能しているので、男性陣はそんなことをバカ正直に否定してはならないのである。

もうぜつぼうしたので、ピミマス帝国。

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