【特撮】・「やはりパシリムには日本オタクの呪いがかかっている」
昨日、ツイッターで、
「今だから言えるが、パシリム公開時に『ロボットVS怪獣』は日本のお家芸!! みたいに行っている人がいたけど、具体的に例をあげさせたら『ジェットジャガー』くらいしか出てこなかった」と書いたら、ものすごい勢いでリツイートされたりリプライが来たので、怖くなって削除した。
あっという間に「メカニコング」、「メカゴジラ」、「ジャイアントロボ」、「ジャンボーグA」、「スペクトルマン」、「機龍」、「戦隊もので巨大化した怪人と戦隊ロボとの戦いはどうなのか」、などの意見があがってきた。
いや、みなさんの言いたいことはわかります。そして私の言葉が足りませんでした。すいません。
私が言いたかったことは二点。
まず第一点は、これは私の言葉が足りなかったが、「パシフィック・リム」の基本設定である、「怪獣の出現により、人類の叡智によってつくりあげた搭乗型の巨大ロボットで対抗する」という設定のこと。
これにあてはまるのは、「ジャイアントロボ」くらいしかないと思う(ジャイアントロボは搭乗型ではないが、まあ近い)。「マグマ大使」も、「アース」という創造主がつくったから「ロケット人」という設定以前にちょっと違う。ジャンボーグAもスペクトルマンも「サイボーグ」だが、それ以前に、宇宙人から与えられたとかなんとか、そういう設定である。「人類が創造した」わけではない。
メカゴジラも宇宙人がつくったし、「機龍」は人間が搭乗するが(正確には違うけど「操縦」はする)、サイボーグという設定以前に、「本来存在してはいけないもの」として描かれていることがネックなのだ。
怪獣特撮を何本もつくっていくうち、SFブームなどからの流れで、シリーズ中に巨大ロボットが出るのは当然である。「水戸黄門」で、定期的に「にせ黄門さま」が登場するのと同じことだ(そういえば、「メカゴジラ」は当初、「にせゴジラ」として登場した)。
では「怪獣プロレス」がジャンルとして成立しているほどに、「怪獣VSロボット」が成立している(いた)か? ということが言いたかったのだ。「水戸黄門VSにせ黄門」は、パターンではあるけれども、これが「ジャンルだ」と言われたら、だれもが首をかしげるだろう。
だいたい、「怪獣VSロボット」で真っ先に「ジェットジャガー」をあげるやつは、よほどの変わり者か、ロボット愛がない人間に決まっているではないか。「パシリム」は、ロボット側か、怪獣側か、どちらに自分が無意識に加担しているかをあぶり出す映画でもあるが、「日本特撮の再現」イコール「パシフィック・リム」という考え自体が、おかしいと思うのだ(いちおう書いておくが、だれもがそう思っている、と言いたいのではない。中にはそういうやつもいた、ということである)。
「ジェットジャガーは本当にクソか」とか、「ゴジラ対メガロは面白いか」という問題になるとまた話がややこしくなるので、ここでは問わない。私の立場としては、「ゴジラ対メガロ」という映画は面白いと思うが、「ジェットジャガー」にロボット愛は感じない。
やはり、「怪獣VSロボット」という設定は、そういう企画をビッグバジェットの映画にしたということ自体が、デル・トロ監督のオリジナリティーだと、素直に認めた方がいいのではないだろうか?
もう一点は、「パシフィック・リム」という映画を、「日本特撮の、巨費を投じたCGでの再現」だと思い込んでいる人が決して少なくない、ということである。
だからこそ、日本のアニメへのオマージュであるイェーガーまで、日本特撮サイドに含めてしまう。だからジェットジャガーという、比較して考えればきわめてドウデモなキャラクターを持ち出してこなければならなくなる、ということが言いたかったのだ。
別にデル・トロは、日本人に媚びるために「パシリム」を撮ったわけではないだろう。「カイジュウ」がどれだけ「怪獣っぽいか」という論議などは、そこら辺を混乱させている一因だと思う。酒飲み話としてはきわめて面白いが、「カイジュウ」が「怪獣っぽくないから」0点かといえばそんなことはないだろうし、「怪獣っぽくないこと」が、「デル・トロが日本特撮をわかっているかいないか」の、指標にもならないだろう。
最後に、「パシリム」公開当時、「やはりパシリムは日本のオタクを幸せにしなかった」とつぶやいたら(この発言自体はガイ山さんのものだったか?)、「私は幸せになったぞ」というリプライもいただいたので、それについても説明しておく。
オタクって言ったっていろいろいるわけで、私が言いたかったのは「日本特撮に強いこだわりを持ち、なおかつ縦横につながりを持つ濃い年配のオタク」ということである。
世間的には、「怪獣映画を観る人」自体がオタクだと受け取られるだろうがそうではなく、「年配の日本特撮オタク」という一種の「群体」のことをさしてそう書いた。
「おれはそうは思わない、一緒にするな」と言われたら、まあそりゃそうでしょうね、とこっちも返すしかないよなー。
他にも、「パシリムは女性のものではない」発言のまとめが、意図的なフェミ炎上狙いのものだったり、そのときに怒った女性たちのベクトルは主に「ロボット」にあって、怪獣派はきわめて少なかったんじゃないか、というねじれであったり、いろんなことがある。
「パシフィック・リム」は、「批評以前の了解事項が、意外なほど共有されていない映画」として、今後もとらえられるべきだろう。
そしてその理由は主に、オタクの多くが「既視感」でしか作品を語れなくなっている、というところが大きいと思う。
「おれなら徒手空拳でも語れる」と勘違いさせてしまう映画が、「パシリム」なのだ。
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