【書籍】・「超合金の男-村上克司伝ー」 小野塚謙太(2009、アスキー・メディアワークス」
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いちおうお断りしておくが、私は玩具についてはまったくの門外漢である。
「超合金」、「スーパー戦隊」、「ゴールドライタン」、「宇宙刑事ギャバン」などの企画におもちゃメーカー側から関わり、玩具にできるメカのデザインをし続けてきたデザイナーの評伝。
個人的には「マジンガーZの超合金」で(名前は知らないが、当然だれかがデザインして販売したという意味では存在していることは)知っていた人ではある。
アニメや特撮雑誌などを読みかじると「30分間、ロボット玩具のCMになってしまった」とか「ロボットプロレスだ」とか皮肉られていた、「スポンサーの玩具メーカーからの支持で登場メカを動かす」というシステムの立役者、ということになろう。
「おもちゃメーカーの都合」が作品世界を壊すものとして、クリエーター側からは嫌われたらしいこのシステムだが、おもちゃを買う側にしてみれば「アニメに出て来るメカに酷似した商品が買える」といったメリットがあった。
そして、本書を読むと工業デザインの下地がある村上氏のデザインはコンセプトがしっかりしており、なおかつ合体機構も80年代を通じて進化してきたことがわかる。
まあ、本書には当然、本人のチェックが入っているので露骨な失敗作などはほとんど出てこないが、それにしても「超合金」、「スーパー戦隊」、「宇宙刑事」、「ゴールドライタン」、「ゴッドマーズ」、「ゴッドシグマ」、「マシンロボ」と、80年代の少年向け玩具、およびオタクシーンの最先端を走っていたことは否定できない。
ネットで検索すると強引な性格や、わーわー言うわりには後々前言をひるがえしたりする、と悪口がたくさん出てくるが、ひとまず「企画を強引に変更させた」という逸話はすべて取り除き、彼が関わってきたロボットデザインのみについて考えてみる。
すると特徴的なのは、いわゆる「リアルロボット」的な発想がゼロ、ということである。
「ガンダム」が大ヒットしたとき、彼がどう思ったか考えると非常に面白い(後に「サイコガンダム」のデザインをしているが)。
少年時代の自分の感覚を思い出すと、もちろん村上氏の関わった「ライディーン」や「スパイダーマン」の「レオパルドン」、「闘将ダイモス」などには親しんできたけれども、「ガンダム」の概念はそれらとはまったく別のところから来た。
「ガンプラ」はあくまでもプラモデルであり、村上氏の関わる「合体玩具」とは対象年齢層が異なるので、市場を食い合うようなことはなかったとは思うが、それにしても架空のものに対する「リアル」の置きどころ、ということについて、本書を読んで思いをはせざるを得ないのである。
本書を読むと、70~80年代を送った少年たちは、あらためて「スーパーロボット」と「リアルロボット」というコンセプトの違う「未来イメージ」を浴びて育っている、と感じさせる。
ところで、本書には(マニアの人には有名な話かもしれないが)ひとつたいへん重要な記述がある。
なんと、「ロボコップ」撮影前に、バーホーベン監督から「ギャバンのデザインを引用させてほしい」という手紙が届いたというのだ。村上氏は快諾し、金銭のやりとりもなかったという。
ここは、たいへん重要である。
「ロボコップ」上映時の1987年、「ギャバン」を見たことがある日本人のほとんどは「ギャバンじゃねえか!!」と思ったはずだ。バーホーベン監督が当時、「ギャバン」からの引用について言及していたのかとぼけていたのか知らないが、私個人としては、「西洋人が東洋のデザインからサクシュしている!」と思ったことを覚えている。
(ちなみに「ロボテック」がアメリカでやっていたことも知らなかった。)
ここから先は、本書とは関係ない話になる。
80年代までの日本のアニメ・マンガの海外事情といえば、一般人や薄いオタクにとっては、「子連れ狼の劇画がヒットしなかった」、「ドラえもんは海外ではウケない」、「アルプスの少女ハイジは海外で人気だが、日本のアニメだとは認識されていない」といった情報ばかりが入ってきていた。
もちろん、業界人や海外通のオタクは別の情報を得ていたのだろうが、大半の情報はそんなものだった。
膨大な欧米文化からのパクリが、日本のエンタメを形成していることも事実なのだが、まだ80年代にはサブカル的には、西高東低のイメージ、もしくは断絶感が強く、そのコンプレックスはみんな大なり小なり持っていたはずだ。
そのルサンチマンが蓄積し、「暴走」とすら言える「日本のオタク文化、サブカルの継承者としてのパシフィック・リム」という評価のみが肥大化していくことになる。
このルサンチマンの流れは、多くの「GODZILLA」評にまでつながっていくのである。
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