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・「セックス障害者たち」 バクシーシ山下(1995、太田出版)

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AV監督、バクシーシ山下の、自身の作品についての解説と回想。95年に出た本だから、主に90年代の作品群について。

私はほとんどAVを観ない。だが90年代は、AVがサブカルチャーにおいて重要な位置を占めていた(現在もそうかもしれないが)。
それで、「ちょっとくらい知っておかなければいけないのではないか」と思い、当時買ってそのままにしておいたら、19年くらい経過してしまった。

「いつでも自由にゲロが吐ける男優」、根本敬の著作にも出てきた真性Mの男優や、おかしなAV女優が入れかわり立ちかわり登場し、企画も「男女を七日間監禁させる」とか「手錠でつなぐ」とか、あげくには交通事故で死んでしまった女優の周辺をインタビューして一本にまとめあげるとか、過激なものばかり。

ゲロ、ウンコ、おしっこいずれも私はダメなので、読んでいてとてもついていけなかった。日常的に他人のゲロやウンコを撮影する仕事、とても私には勤まりそうにない。

私はここに出て来るAVを一本も見ていないので、本書の解説だけで内容を想像するしかない。ただ、撮影の裏話などの語りなどから感じるのは、著者(監督)の対象に対する圧倒的にシニカルな視線だ。これが恐い。
「なんでこんなものを撮るのか」、いちおう言葉では説明されているのだが、でもやはりわからない。

スタンスとしては根本敬に似ているが、彼は「日本を下品のどん底に突き落とす」という方向性が見えている。
だが本作を読むかぎり、監督のここまでやるパッションがどこから出てくるのかがわからない。
「ボディコン労働者階級」っていうのはタイトルがすごいので覚えていたけれど、別に社会派であるとか貧困からのルサンチマンとか、そういうものも感じられない。

以下は直接関係ない話。
著者(監督)は1967年生まれ。私の勝手な世代論なのだが、この頃だとものすごく広く取った「ギョーカイ」には荒っぽい人がたくさんいて、その世界に飛び込んでいくにはある程度、精神がマッチョで人間関係の立ち回りがうまくなければ、どこへ行っても勤まらなかった。
あくまでも私の皮膚感覚の話だが、それが変わり始めるのは90年代も後半になってからではないだろうか。

これくらいの年代まで、とにかく「残っているだけでもすごい」というのが広義の芸能界とかマスコミとか映像関係、音楽関係の仕事の世界だった。
本書の著者には、その頃に業界に入った人独特のふてぶてしさを感じる。
「だからなんだ」って言われると困るんですが、「ああ、あの世代だな」って思う、っていう漠然とした話です。

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