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・「キューピー」全8巻 高橋ヒロシ(1997~2001、少年画報社)

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ヤングキング連載。
あるガソリンスタンドに、アルバイトの新人が入って来た。その名は石田小鳥。その髪型からキューピーと呼ばれる。名前とあだ名はかわいいが、巨漢で恐ろしいほどのケンカの強さを持ち、ある事件で少年院に入っていた男だ。
ガソリンスタンドのバイトたちはビビりまくるが、その中の一人にしつこくからんでくる不良を小鳥が撃退したことから、お互いに少しずつ心を開いていく。

小鳥は少年院時代の「先生」を尊敬しており、暴力の世界から抜けることを決意している。彼のケンカ仲間だった者たちも現在は高校を卒業し、ツネはロックバンド、幸三は大工をしており、まっとうな大人の道を踏み出していた。しかし、唯一、我妻涼だけが愚連隊グループを組織し、暴力の世界で生きていた。

小鳥は無事にカタギの道を歩んでゆけるのか。それとも我妻涼を象徴とする暴力の誘惑に負けてしまうのか。
そんなところから、物語は始まる。

連載時期は、「卒業後の不良」を描いた傑作「莫逆家族」と重なっていて、連載当初も「現在」を舞台に話が展開する。それで「そういう時期だったのか?」と思ったが、すぐに小鳥がいちばん悪かった学生時代の回想となる。

本作が「一時期悪かった、将来のことなど何も考えていなかった男が改心する物語」であることは間違いないが、同時に、その「悪かった学生時代」をノスタルジックに描いていることは否定できないだろう。それをどう評価するかで、本作全体の評価も変わってくるに違いない。

高校時代の小鳥は、ツネや幸三、涼と友情を育んでいく中で、もう一人重要人物に出会う。
それが、青道高校の上田秀虎である。彼は「秀虎会」のトップで、ケンカも強いが人望があり不良同士のトラブルをなるべく減らす度量を持っている。
小鳥が無軌道な暴力衝動から解放されかかったのはタイマンの末、秀虎に感化されたからだが、同時に涼の引き起こした事件にからんで重傷を負った秀虎の復讐のために大暴れして、少年院に入ることになってしまったのであった。

「ケンカは強いが、とくに人をまとめる能力のない男」とは別に、ケンカも相当強いが最強同士でやったら勝てるかどうかはわからない、だがカリスマ性のある男、が登場するという構図は「クローズ」と同様である。

血の気の多い男たちは、かろうじてそういうリーダーに従うことで秩序を学んでいく、というのが高橋ヒロシワールドなのかもしれない。

一方、我妻涼だけは少年時代の暴力の世界から抜け出すことができない。
ケンカに明け暮れた時代をモラトリアムだと割り切った小鳥たち、そして「今、ここ」の暴力を将来の自分と結び付けている涼。
二つのイデオロギー闘争は、クライマックスに両者の対決というかたちで現れるのである。

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