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.・「新・男樹―京太郎編」全4巻  本宮 ひろ志(1996~97、集英社)

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オールマン連載。「男樹」の続編。
村田京介の息子、京太郎を「やくざにさせないため」、母がやくざである父と彼を引き離して千葉の漁師町で暮らしてきた。
しかし、京太郎が自分の父が東日本の極道をたばねるやくざだと知った17歳のとき、彼はすでに立派なシノギをあげるやくざになっていた!
そのことを知った父・京介は、全力をあげてわが子・京太郎を潰しにかかろうとするが……。

行き詰ってムチャクチャになって終わってしまったというか、無理矢理つじつまを合わせたようなラストだが、それでもこのラストにはそれなりに意味があった。
不気味なのは、本作の序盤の部分である。

京太郎は地元で数十人の子分を持ち、特筆すべきは密漁、スナック経営、売春などで収益をあげていることである。
これは「ガキ大将」とは明らかに違う。本物のやくざなのだ。

彼は、いつもの本宮キャラではあるのだが、何を考えているのか読者にはまったくわからない。
そもそも、京介には「やくざになる」動機があったが、初登場時から京太郎は、だれからも学ばぬうちに「やくざ」になっている。なぜそんなことをしているのか、将来どうしたいのかがまったくわからない。
だから、不気味なのだ。

作者の本宮ひろ志は、「先のことや結末を考えないで連載している」と明言しているし、そのこと自体は連載マンガで珍しいことではない。
だが、いくらなんでも単行本1巻くらいまでの、連載が始まってからの序盤は、ある程度の主人公のキャラ造形をしているはずである。それに、父・京介とのキャラ分けが必然、ということもある。
しかし、それにしても京太郎の描き方は不気味すぎる。

もっとも、私が感じる不気味さは連載当時かなり荒唐無稽だと思われた「少年やくざ」が、「関東連合」などの情報が明らかになりつつある現在から観ると、妙にリアリティがあって君が悪い、ということも理由のひとつだろう。

そして、少年刑務所に入った京太郎は、あるご都合主義と奇想天外な発想によって父に反撃することになる。このあたりはなかなか面白いが、どうにももやもやする印象が否めないのは、京太郎がいったい何をしたいのか、最後までよくわからないところにある。
もしかして、作者はラストを思いつくまで何も考えていなかったのだろうか?(その可能性も、ないわけではないと思う)

ところで、くわしい連載時期を調べていないが本作はオウム事件の後の連載だろう。作中で、「警察には追い風があって不況の中、予算が増やせる」という描写があるが、これはオウム事件の影響のことのはずだ。
まさかとは思うが、オウム事件の直後、「強烈なイデオロギーを持ち、なおかつリーダーシップを取る人物」を、作者が描きにくい時代だと感じたのだろうか?
しかし、オウムのつくった小世界は、少年・青年マンガの中にあり続けたユートピア、コミューン的なものの最悪の現実化であったことは確かである。

実に根拠のない話だが、本作を読むにあたって「京太郎が何を考えているのかわからない」ことの仮説としてあげておく。

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