・「男樹」全6巻 本宮ひろ志(1979~1980、小学館)
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ビッグコミック連載。
村田京介は、優しい母のもとに北陸で生まれ育ったが、実はやくざの子である。
そして、母方の祖父は日本一の電力会社の社長であった。
京介は何にでもなれる度量と人望を兼ね備えた男だったが、父と同じ極道の道を進むことを決意し、「初代・村田京介」として既存の極道界に殴りこみをかける。
一方、四国のやくざ・伊達宗太郎は、京介の祖父が日本の将来のために備蓄してある石油をねらって北陸に侵攻する。
京介と伊達の対決は必至となる。
つい最近でも、続編が連載されていたこともあり、最初からさかのぼって読んでみようと思い購読。
名前だけは聞いていたわりと有名な作品だが、個人的には「男一匹ガキ大将」の焼き直しという印象が否めない。
私も本宮ひろ志の作品をたくさん読んだわけではないが、生来的に東映任侠映画のような、「滅びの美学」みたいなものは好まない人だと思う。
かといって、どこぞの青年実業家のように、「がんばればなんとかなる」というおためごかしも好きではないだろう。
成り上がるには、どんな世界でも「政治」が必要なことは、じゅうぶんわかっているはずだ。
本宮マンガの魅力とは、主人公の「破天荒さ」と「クレバーさ(政治の問題)」が同居している、そのブレ、ゆらぎにあるような気がしている。本宮チルドレンのマンガ家たちによって、本宮ひろ志というと「破天荒」というイメージのみがあるが、それだけでは生き残ってこれなかっただろう。
そういったことをふまえての本作なのだが、結論から言ってしまうと「極道の世界」を描くことは、本宮ひろ志には向いていないのでは? と思ってしまうのだ。
なぜなら、敵を徹底的にせん滅し、あるいは服従させなければ、やくざ稼業というのは成り立って行かないからである。
結果的に、お話はだいぶ陰惨なものになってしまうのだ。
男女関係も、たぶんわかっていてやっているのだろうが男尊女卑が極端すぎて、連載当時ならまだしも、現在ではさすがについていけない。
本作が面白くなってくるのは、着々と勢力を拡大する四国の伊達に、村田京介がむちゃくちゃな戦法で反撃するところにあるが、それはもう「男一匹ガキ大将」の世界で、本作の独自性はない、と言わざるを得ない。
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