【オタク】・「いや、だから冗談でしょそれ?」
スルーしようと思っていたのだが、かなりの「識者」と思われる人たちまでもが、このtogetterにのっかって発言していて、いまだにリツイートとかが回ってくるので私の思ったところを。
パシフィック・リム』は奇跡の一本?樋口真嗣&中島かずきが激論トーク!
まず、樋口真嗣監督は「パシフィック・リムは女たちのものではない!」と直接言ったわけではないことに注目。
このタイトル、アクセス稼ごうとしてちょっと盛ってあるよね。このニュアンスだと、全世界の、潜在的パシリムファンの女性に対してさえ、樋口監督が否定的な発言をしているように思えてしまう。
これ、かなりタイトル勝ちしてて、このタイトルでの脊髄反射的な反発も目立つ。
で、以下は自分の意見。
その1
ここの下の方にも書いたけど、なんだか樋口監督のやや偏った特撮観がジェンダー的にロックオンでもされてるのか? という印象なんだけど、まあそれは自分で考えても違うかな。
樋口監督、および中島かずき氏の世代では「まあまあ通る言動」が、時代の変化でそろそろ看過されなくなっている、ということなんだろう。
そういえば、たけしの特番などでたけしがアシスタントの女の子を「おねえちゃん」って言うと、いつの頃からか若手がいっせいにつっこむようになったからね。
話はちょっとそれるが、かつてのたけしの「おねえちゃん」というもの言いは、30年くらい前は(女性にとっては面白くなかったかもしれないが)まずまず普通で、それはたけしの「下町風のデンボウな感じ」を表現していた。
だけど、現在では「世界のキタノだからこそ許される、他の者にはできない言動」として機能している。
話を戻す。
なにぶんイベントでの発言で、どのくらい問題となっているコメントが「アウト」だったのかはさだかではないが、私は樋口監督の別のイベントも観に行ってるし、テレビでの発言も観ているが、問題になるほど不用意な発言をする人とはとても思えない。
別に「女性は観るな!」って本気で言っているわけではないでしょ。まぁ芸人さん的な後フォローがなかったとしても、それは許してあげようよ。
ただ、ズルいようだが私だったら、たとえ冗談でもこういった発言はしません(笑)。
でも、それは私が「映画に出て来る怪獣やロボットに対する思い入れ」がないからこそ、そういった余裕も生まれるわけで、彼らと私では立場が違いますから。
それについては、後述します。
その2
樋口真嗣氏は1965年生まれ。中島かずき氏は、1959年生まれ。樋口氏は業界入りが早いので、二人とも「オタク第一世代」と言える。
対するに、ブルーレイイベントに参加して彼らの発言を不快に思った人はいくつだろう?
まったくわからないが、彼らと同世代ってことはないんじゃないかと勝手に予測する。おそらく、三十代ではないだろうか?
オタク第一世代のルサンチマンというのは、何度か書いているがそれはもうすさまじいものなのだ。
サベツされ具合も、ハンパじゃなかった。というか、世間的には認知すらされていなかった。
80年代後半、連続幼女誘拐殺人事件で、宮崎勤が大量のビデオの中に幼女の死体映像を隠しているとされ、捜査員たち(当時三十代、四十代とすると明らかにオタク世代より上)は、何百本もある宮崎のビデオをすべて観なければならなくなった。
ある宮崎事件に関する本の中で、捜査員の一人が「宮崎の収集しているビデオのほとんどが、自分たちの鑑賞に耐えないものばかりなのも苦痛の一つだった」と発言しているのが印象的だった。
また、何度も書いているが久米宏の「ニュースステーション」内のコーナー(80年代中盤)で、ある日「ジャンル別の映画の楽しみ方」という企画があった。この中で、「アニメ映画の楽しみ方」が、「前日徹夜する」、「映画館で寝る」というものだったのを今でも強烈に覚えている。
つまり、「アニメ映画などジャリ向けのもので、まともに観るに値しない」と思われていたのだ。
ちなみに「アニメ映画を大人がわざわざ見て感動する」という図式が生まれたのは、「観に行っている人たち全員がオタク」という「宇宙戦艦ヤマト」をのぞけば、1986年の「天空の城ラピュタ」か、1988年の「となりのトトロ」以降の現象なのである。
その3
1961年生まれの島本和彦の「逆境ナイン」では、「女の子とデートするか、野球に打ち込むか」という二者択一が描かれているが、彼の半自伝的作品「アオイホノオ」でも、「女の子に気に入られるか、オタク趣味に走るか」が重要な選択として登場する。
そもそも、スポーツ以外で男女の趣味が一致することなど、90年代以前はきわめてまれだった。
いわゆるリア充(この言葉、好きではないが)においても、テニスやスキーなどが爆発的に流行ったり、ディスコでみんな同じ振り付けで踊ったり、ということがあった。男女の趣味がそれだけ分かれていたことの証左だろう。
テニスとコンパくらいしか、男女が一緒にできることはなかったのだ。
(そういえば、結婚式のケーキ入刀で「初めての共同作業」などと言うが、他にもあっただろ、と思うものの、本当にそれくらいしかなかったのかもしれない。)
まだある。あるパンクファンのライターは80年代、中学時代までアニメが好きだったが、パンクスになるためにアニメファンをやめようと決心し、そのときまでに買ったすべてのグッズを捨ててしまったという。
70年代~80年代、少年少女がどの趣味を選ぶかは、自分のライフスタイルを決定づける重要な選択だった。
もちろん、「ロックを聴きながらアニメを観てる」ような人もいたかもしれないが、その横断性はあまりアピールされなかった。
いわゆる「秘宝系」のホラーや70年代東映アクションファンなども、たとえば宇宙戦艦ヤマトやスター・ウォーズを追っかけている層とは少し違っていたらしい。
「現在は趣味がタコツボ化しているが昔は横断的な人がいた」というのは本当でもありそうでなくもあり、だった。
また、女子は知らないが男がオタク趣味を持っていることは恋愛・結婚の足かせにしかならなかったことは間違いない。
樋口・中島両氏がイベントで感じたのは、地下闘技場で愚地独歩が範馬勇次郎と対戦する際、観客の大声援を受けて、かつてアメリカのリングで「キルザ・ジャップ、キルザ・ジャップ!!」と罵声を浴び続けたことを「夢のよう」だと思い出す、そんな感覚だったに違いない。
それは、オタク内のジェンダー問題とは、また次元の違う話なのではないか。
確かに発言に問題があったかもしれないが、これほどおおごとになることか? というのが私の認識である。
その4
なお、最近は映画でも「男向け、女向け」としないようなつくりがなされているらしいが(観客が二倍に増えるので)、だからといって、男と女が同じ映画で同じことを読みとっているとはかぎらない。
私は今回の件で、これがいちばん疑問だった。
女性アイドルファンでも、今女性はたくさんいるが、だからといって女性アイドルとセックスしたいとは思っていないだろう。
同じものを見たって、違いはあるはずだ(もちろん「だから観るな」と言っているのではない)。
そこは、うやむやにしてもいいのだろうか。
まだ、そこまで明らかにする段階ではないのだろうか。
その5
なお、今回の発言に関して批判的なツイートとして、パシリムの女性ファンを擁護する返す刀で、「樋口だか中島だか」と発言していた人がいるが、この人は「海外の特撮作品だけを認めて、日本の作品はクソだと思っている」人なのだろうか?
あるいは、昭和特撮が絶対で、平成のものなどバカバカしくて観ていられない、という含意だろうか?
またあるいは、樋口・中島両氏がどんなにすばらしい作品をつくろうが、発言のダメさで全否定する、という立場なのだろうか?
おそらく、いずれでもあるまい。ジェンダー問題に口出ししたくて、怒りのあまり「樋口だか中島だか」などと言っているだけだろう。
前の樋口監督のツイートに対してもそうだが、みんな特撮ファンのわりには彼に対する評価、低すぎないか?
樋口・中島両氏は、「日本特撮史」みたいな本が出たら、まずかなりの大きさで名前が載る人たちである。
まあ、実績があれば何を言ってもいいとも思わないが、日本の特撮にくわしいほど、脊髄反射的な怒りには到達しにくいはずだ。
さらに、樋口監督の「パシリムおれならこう撮るばなし」にも冷淡な人が多いが、クリエーターならそれくらいのことは言うだろう。
口をあんぐりあけて、ただ喜んでいるだけなら、単なるアホである。
SF研の学生が無責任に言ってるんじゃないんだから、大目に見てあげなよ。
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