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・「ドラゴンボール」全42巻 鳥山明(1986~1995、集英社)

週刊少年ジャンプ連載。
孫悟空という少年が、さまざまな冒険をしながら「7個集めると、どんな願いでもひとつだけかなえてくれる」という伝説のドラゴンボールを探して冒険をする。

言わずと知れた有名作であり、連載終了後も新しいファンを獲得しているという。
「ドラゴンボール」直撃世代の上限は、1986年に16歳だとすると44歳。連載は10年続いているから26歳のときには購読をやめている可能性もあるので、ヴォリュームゾーンは現在の40歳前後ということになろうか。
ドラゴンボールの連載時期は、いわゆる「ジャンプ黄金時代」とだいたい重なっていることもあり、特別な「メジャー感」を醸し出している。
ちなみに「北斗の拳」の直撃世代はもう少し上の年齢となる。

で、現在でも劇場版新作アニメが公開されている本作なのだが、現状、新しくリリースされている作品と違った、すでに「古く」なってしまった部分、ある意味、「ドラゴンボール」というか「少年ジャンプ」が「終わらせてしまった」部分を、指摘してみたいと思う。


・ファミコンRPG的な「強さのインフレ」
本作は、少年マンガにおける「強さのインフレ」の最も有名なケーススタディとなっている。
それまでも、少年マンガは「いつまでも続くこと」を望まれるあまり、不自然な強さのインフレ状態を起こしてきた。
が、たとえば梶原一騎はほとんどすべての物語を「挫折の話」としてマゾヒスティックに終わらせ、
小池一夫や雁屋哲は、ストーリーテリングによって巧みにごまかした。
「リングにかけろ」も行くところまで行った作品だったが、同じ作者の「聖矢」では「リンかけ」にあった無理矢理さを軽減する設定がいくつも盛り込まれていた。

しかし、本作は「ドラクエ」に代表されるRPGのシステムを参考にしていることは間違いなく、「主人公が天井知らずに強くなっていくことで物事を解決する」というパターンは、最後まで崩れることはなかった。
10年にわたって続いた物語終盤の「魔人ブウ編」に至っては、「連載を続けさせられている鳥山明がかわいそうで読んでいられなかった」という意見もあった。
本作終了後も、いわゆるジャンプ・パターン(トーナメント戦や5VS5マッチなどを行って連載を続ける)を踏襲した作品は出続けているが、本作が「いつまでもダラダラと続くマンガ」のケース・スタディとなったことは間違いない。

少年誌・青年誌では、この後、「幽☆遊☆白☆書」の突然の終了などを経て、
「いかに物語を破綻させずに連載を長期化させるか」
という部分に労力を集中させることになる。
現に、1997~2006年まで続いた「からくりサーカス」全42巻。
「はじめの一歩」は、1988年から続いて現在も連載中。
「ワンピース」は現在69巻で連載中。
「ブリーチ」は現在59巻で連載中。
「ナルト」は現在64巻で連載中。

・「大ボスを倒すと終わる物語、あるいは大ボスの目的」
本作は、とにかく大ボスを倒すと物語が一段落できる構造になっている。
大ボスの目的は、ピッコロ大魔王は世界征服だったがその内実はきわめてゲーム的で、
その後、「戦いたいから戦う」サイヤ人ベジータ、宇宙人フリーザを経て、「ゲームのためのゲーム(セルゲーム)」を行うセルの登場、そして魔人ブウに至っては無邪気な子供の遊び感覚、にまで到達する。
これが80年代に始まり、80年代に終わった「北斗の拳」だと、ラオウの征服欲や「征服されたら世界はどうなるのか」に関しては実態があるのだが、「ドラゴンボール」は、80年代後半から90年代にかけて、どんどん「ボスの存在理由」が希薄になっている。
2000年代に入ると、「大ボスありきの物語」は陳腐化し、ほとんど機能しなくなってしまう。

・「キャラクターの淡泊さ」
「友情、努力、勝利」をうたった80年代ジャンプの中でも、本作のキャラクターはとりわけ淡泊だ。
連載の初期の頃は、「天下一武道会」が開かれない間は、お互いの家をたずねあうこともないらしい。
恋愛や結婚に関して、わざと淡泊に描いているのは有名な話でもある。
アニメ版はどうか知らないが、マンガ版では「泣けるシーン」が意外とない。同時期、同系統の作品としては「男塾」も「泣けるシーン」はあまりないが、とにかく男同士の絆がものすごい。
ところが、本作では人気キャラクターたちは、大ボスがやってくるから集まってくるだけで、悟空とクリリン、悟空とベジータの強い関係以外は、かなりドライである。
「Dr.スランプ」の頃から、鳥山作品にはどこか突き抜けたドライさがある。
これは人間関係にある程度無頓着でいられるからできる態度でもあり、

異常なまでに「人間関係の複雑さ」が発達してしまった現在は、このドライさは通用するのだろうかという気持ちもあるが、鳥山明が新作を描かないのでもうその辺のことはわからないのである。

おわる。

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