【無題】
「なんか毛色の変わったポエム書いていましたね」
「何のこと?」
「埋立地につくられたオフィス街に、雨が降っていて……」
「あー、あんなもの、忘れていいよ」
「でも、いつものと雰囲気違ってて、よかったですよ」
「よくないよ、あんなもん」
「いや、そんなことないですって」
「もういいよ、お世辞言わなくても……」
「お世辞じゃないですよ」
「もう、何もかもがいやになったから、書いたんだよ」
「またまた~」
「もうしぬよ、おれは」
「はあ」
「でも、やっぱりしにたくない」
「えー」
「もう、いくら書いても伝わらないから」
「そんなことないですよ」
「あるよ。だって、あれは天からの使者に対する暗号だったんだから」
「どれがですか」
「うるせえ!」
「えっ、すいません……」
「もう、何もおもしろくないよね。本当におもしろくない。何かおもしろいことがあると、次につまらないことが起こるんだ」
「それは、だれでも同じですよ」
「もう何ものこっていない。いや、正確にはのこってるんだけど、たとえばケーキを食べていて、食べている瞬間、まだケーキが残っていても、いずれなくなることは観ていればわかるよね。それがつらい」
「だから、それはだれでも同じでしょ」
「同じじゃないよ。おれ以外、みんな楽しそうだもん。とくに所ジョージね。あんなにクルマ買っちゃって」
「所ジョージ?」
「この世で、所ジョージがいちばん楽しいんじゃない」
「そんなことないでしょう」
「じゃあ、撤回」
「えっ」
「聞こえないのか。じゃあ、撤回!!」
撤回
撤回
撤回
撤回
撤回
撤回
撤回
撤回
撤回
撤回
撤回
撤回
おうせんしゅ
(完)
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