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・「大飢饉」全1巻 本宮ひろ志(1983、集英社)

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天明二年。蘇助、弥二、捨蔵の少年三人は、長男ではないため、「自分たちの土地」を開墾して生きていこうと日々、がんばっている。
とくに捨蔵は、村人へのルサンチマンが強く、何かと三人のリーダーシップを取ろうとする。
蘇助は、自分の土地を持っておさななじみの少女・八重と結婚することを夢見ている。
ところが、そんな三人をあざ笑うかのように、「天明の大飢饉」が襲ってくる……。

初出は週刊少年ジャンプ1981年4・5号~6号だそう。
一読して、「パニックもの」として飢饉を捕えて描く手法がうまく、キャラクターも立っていて、本宮ひろ志のマンガのうまさが堪能できるが、リアルタイムの少年読者には陰惨なストーリーと「土がゆ」という、土からつくるおかゆのことのみが印象を残しているようだ。

確かに、読後の感想は「70年代っぽい作品だな」ということで、不平等に対する恨みつらみや、「苦しくても強く生きていく市井の人々」というテーマは70年代そのものだ。だが本作は81年の作品。そうしたテーマが好まれる時代は、当に過ぎ去っていた。

……にしても、忘れ去られるにはおしい作品だ。とくに本宮ひろ志の、(本人が映画が好きかどうか知らないが)「映画的に、キャラを立たせて描く」方法は、もっと思い出されてもいいのではないかと思う。

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