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【創作小説】・「政次郎とトシユキとEM」その4(完結)

その4 完結編

「本当に見えてなかったのか?」
 トシユキは政次郎のゴミの散乱する部屋に入っていた。ガタガタの椅子に座っている。
「知らねぇ。よく覚えてない」
 政次郎は手酌でウイスキーをコップに注ぎ、飲んだ。どうしても酒を飲ませろと騒いだのだ。おごってやる筋合いではなかったが、トシユキも飲まずにはいられなくなり、コンビニでウイスキーを買って真昼間から二人で飲んでいる。
「あのさぁ。もうおれが廃工場を曲がって、あんたの家の敷地の全容を見たときには、あのでっかい円盤が、あんたの家の後ろにそびえてたんだよ。明らかにおかしいだろ。ここに住んでて、あれが見えてないなんて」
 トシユキは問い詰めた。
「だからよく見てないものは見てない、っつってんだよ。ウチの裏は空き地になってんだよ。だれかが何か建てたのかもしれねぇだろう」
「建てた!? 何を!?」
「だから……タンクか何かだよ。化学薬品の入ったタンクでもどこかの会社がつくったのかな、と思ってたんだよ」
「タンクぅ?」
 トシユキはあきれ果てた。おそらく、政次郎は毎日飲んだくれていて周囲のことがよく理解できていないのだろう。
「あれがタンクだと思っていたとして、いつ頃からあるんだ、あれは」
「さあなあ……半年くらい前からじゃないか?」
 政次郎はウイスキーの方に意識が言っていて、思い出すのも面倒という様子だった。
「あんなものを? 半年も放置? じゃあの……宇宙人は?」
「宇宙人って何だよ」
「あの潜水服を着た小人だよ! あんたも観たんだろ? しかも何度も!」
 政次郎は何食わぬ顔で言う。
「あれァ近所のガキだ。ガキがウチの敷地を遊び場に使っていやがったんだよ」
「ふざけるのもいいかげんにしろ!」
 思わずトシユキは怒鳴ってしまった。
「潜水服を着た小学生が三人も、昼間っからウロチョロしてるわけねえだろがっ! ……ありゃーおれが観たところ、宇宙人だ。UFOがあったんだから間違いねェ」
 会社の先輩たちも、UFOはともかく潜水服の小人は何度か見ているに違いない。だから「出る」と言っていたのだ。
「……もういいだろ。いなくなっちまったんだから。飛んでっちまったんだから」
 政次郎はまたウイスキーをぐびりと飲んだ。
 トシユキは自分の知識と経験を総動員して考えた。政次郎はまったくあてにならないから、一人で考えた。
 政次郎の家の背後に、半年前からUFOが止まっていた。町はずれなので、あまり気づかれなかった。ここで、理由はわからないが小人型宇宙人が調査を行っていた。調査が終わったので、飛び立っていった……。
 そうとしか考えられなかった。
 しかし、そう解釈したとしても、どうなるものでもないことも確かだった。
 家の裏に回って見ると、空き地には巨大なものが止まっていた形跡はなかった。宇宙人目撃の証拠があるわけでもない。第一、トシユキの仕事は借金の回収であり、円盤について考えることではない。
「……持って行けよ」
 政次郎が言った。
「……何だと?」
「クルマ、持って行けよ」
 再び、政次郎が言った。
「動かなくても、多少は価値があるんだろ?」
「言われなくてもわかってるよ」
 トシユキと政次郎は家を出て車庫に向かった。
 車庫を開ける。トヨタ・2000GTが、そこにはおさまっていた。
「でも動かないんだよな。いつ頃からだ?」
「……半年前くらいからかねえ……」
 政次郎は他人事のように言う。
 トシユキはまず手始めに、と、クルマに乗りこんでエンジンをかけた。
 一瞬にして、エンジンがかかった。
「お、動くじゃねえか」
「動くか!」
 政次郎がちょっと嬉しそうな顔をした。手にはウイスキーの小瓶を持ったままだ。
「動くなら何の問題もねぇや。これであんたの借金はチャラだ」
 トシユキはホッとして言った。先輩が小人宇宙人にビビっていた件を自分が解決したとなれば、まあポイントを稼いだことにはなるだろう。
 政次郎とトシユキはまた家に戻った。
「おっ、テレビもつくな!」
 政次郎がそう言った。クルマが動いたならテレビも映るような気がしてスイッチを入れたら、映ったのだ。
「時計も動いてるぞ」
 政次郎は、半年前から止まったままだった壁掛け時計を見上げた。
「じゃあ、クルマの件はいいな?」
 トシユキは念を押した。
「よくわかんねぇが、それでうるさいあんたらが来なくなればホッとするよ」
 政次郎は、自分の定位置であるソファーに座ってテレビを見始めた。もうトシユキには目もくれない。
「なあ」
 トシユキは最後にもう一度、政次郎にたずねた。
「あの潜水服たち、また来ると思うか?」
 政次郎は振り返りもせずに、言った。
「さあね。ウチの敷地に入ったら追い出してやるだけだ」
「そうか」
 トシユキは政次郎の家を出た。
 数分が経ち、政次郎は、もうUFOを観たことなどすっかり忘れていた。逃げた妻子のことも、明日の今ごろまでは思い出さないだろう。それまでの人生も、トヨタ・2000GTをどうやって入手したのかも、なぜ借金したのかも。
 考えているのは、今飲んでいるウイスキーがなくなったら、酒代をどう工面するかだけだった。
 そしてその考えも、酔いで頭が混濁するにしたがって、消えた。


EM効果 (Electro Mgnetic effects)
電磁効果。UFOが接近したり通過したりした時などに、人間や動物、機械などが影響を受けること。
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(完)

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