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【創作小説】・「政次郎とトシユキとEM」その3 政次郎とトシユキ

その3 政次郎とトシユキ

 当面の酒代をどうするかしばらく考えて、いい案も浮かばないので政次郎はまた自宅に戻り、自分の定位置であるスプリングの飛び出たソファーに座って古雑誌を読み始めた。
 数分すると、物音がした。かなり大きな音で、何かの部品が倒れたようだった。
「……またガキどもか、それとも借金取りか」
 政次郎はよっこらしょと声を出して立ち上がり、再び外に出た。
 家の前には、御堂トシユキが立っていた。
 だが、家のすぐ前ではない。十メートルほど手前に立っている。
 いまどきのチンピラ風の男。いや政次郎からすれば、まだガキだった。借金取りは過去に何人か追い返したが、その中でも弱そうな男だと思った。
「借金取りか? 帰れ!」
 政次郎はトシユキを怒鳴りつけた。酒がまだ残っていて、少々気が大きくもなっていた。
 怒鳴られたトシユキは、両足がガクガクと震え、口をパクパクさせていた。なんだこいつは? 借金取りじゃないのか? 政次郎が疑問に思うほど、彼は驚きうろたえていた。
「戸澤さん!」
 トシユキが、十メートル前方から政次郎に叫んでくる。
「うるせえ! 借金取りなら帰れ! クルマが欲しけりゃ、持って行け。動かねえがいくらかにはなるだろう! おい、そこのガキ! ウロチョロするなと言ってあるだろ!」
 途中からはトシユキにではなく、その背後にいるだれかに向かって叫んだ。トシユキは政次郎の「ウロチョロするな!」の声ではじかれたように後ろを振り返り、ヒッ、というみっともない声を出した。
「戸澤さん、あ、あいつらは何だ!?」
「知らねえよ。近所のガキだろう」
 政次郎は無造作に言う。
「ガキじゃねぇよ!! 潜水服着たガキがどこにいる!? あ、あれはもしかして……い、いやおれが言いたいのはそこじゃなくて……」
「とにかくうるせえ。おれと話がしたけりゃ、酒持ってこい」
「だから! おれが言いたいのは借金の話じゃねえんだよ!」
 政次郎は、短く沈黙した。
「……じゃ何の用だ」
 トシユキの視線は、政次郎の後ろにあった。彼は右手を高く上げ、政次郎の背後にあるものを指さした。
「その、あんたの家の後ろにある、でっかい円盤は何だって言ってんだよォ―ッ!!」
「ああン?」
 政次郎が状況を理解できず聞き返したその瞬間に、背後からウィーンという、モーターがものすごい速さで回転する音が聞こえてきた。
 その音は急速にかん高くなってゆき、酒で半分眠ったような政次郎の頭でも事態の異常さを理解できた。だから振り返った。
 そして政次郎は、自分の住む平屋の一軒家の背後に、その数倍はあると思われる大きさの銀色の円盤が、日中の光に照らされて存在しているのを観た。
 円盤は今にも浮上するところだった。高速で回転しているらしく、強風が砂利を巻き上げていた。
「戸澤さん! 何だよあれは!!」
 トシユキは叫んだ。
「知らねェよーッ!!」
 強風の中、政次郎は言い返した。
 やがて円盤は急浮上を開始し、そのまま轟音をあげて、真昼間の空の彼方に垂直に飛んでいき、雲の彼方に消えた。

「その4」(完結)に続く

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