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・「ツレがうつになりまして。」 細川貂々(2009、幻冬舎文庫)

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最初は2006年に刊行。
うつ病になってしまった夫と、彼をサポートする妻の日常を描いたエッセイマンガ。
……なんて説明書かなくても、ベストセラーだからいいだろう。

正直、私はこのテの絵柄(マンガではなくイラストレーションの勉強をしてきた人が、わざとヘタに描いたような感じ)が苦手で敬遠していたのだが、いざ読むとなかなか面白かった。
闘病記をユーモアをまじえて描く、という方法は前からあったんだろうけど、やっぱり「うつ」をテーマにしたのが注目が集まった理由かなあ……。
そして百万回言われてると思うけど、妻のがんばりと肩の力の抜き方、そしてときにはうつの夫に当たってしまったり……といったことが正直に淡々とつづられているところに、静かに感動してしまうよね。

で、私が個人的に思ったことは三点ある。

まずは、現在の景気の悪さである。
ツレ(作中でも「ツレさん」という名前)がうつ病を発症した直接の原因は、リストラによって社員が減らされたことからくる激務。しかも、その会社は彼が退職した後、なくなってしまったという。
最近、就職活動情報から遠ざかっていたのでこれには衝撃を受けた。15年前にはまずあり得ない自体ではないか?
「15年前」と中途半端な過去のことを考えたのは、おそらくツレ氏はその頃にもすでに社会人だったはずで、その当時は「社員を減らされて急に激務に」なんて、考えられなかったと思うのだ。それが精神のバランスを崩すほどの激務に追い込んでしまったのではないかということ。

そして、もう一点はツレ氏に対する、私の世代的な共感である。
「四十歳になって理想の自分になっていない」ことに対してすごくショックを受ける、というくだりがあるのだが、これにも共感できる。
たぶん彼は私より二、三歳年上だと思うが、この世代は若い頃にいわゆる「ニューファミリー」を理想とした世代であり、なおかつ現在の三十代、二十代よりもずっと「マトモな大人像」がはっきりしている世代である。
(話は飛ぶが、この「ニューファミリー」と「マトモな大人像」の間で揺れ動く男女を描いたのが、ドラマ「金妻」だ。)

世代の問題かどうかはわからないが、1969年生まれだという妻がそういう理想をまったく抱いていないのは、ものすごい救いだなと、私は思ってしまうのであった。

第三に「過去の自分とくらべる」という章への共感。
ツレ氏が、過去の自分のいちばんいい時期と自分を比べておちこんでしまうというのだ。これは私もあるある!!
彼の妻はそんなことを考えたこともないらしく、「へええ~っ」と思った。
男女の差かどうかわからんけど、男は過去をひきずると思う。少なくとも、私はひきずる。

読後の感想は、そんなところです。

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