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・「仮面ライダーBlack」 全6巻 石ノ森章太郎(1988~1989、小学館)

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週刊少年サンデー連載。
人類を滅ぼし、生き残った者たちだけで地球を支配しようとする秘密結社・ゴルゴムに改造され、「仮面ライダーBlack」となった南光太郎の戦いを描く。

陰謀論ギリギリとしての石森アクション

確か、本作が最後の石ノ森章太郎の少年誌連載作品。本作が連載された当時、すでに石森(石ノ森)章太郎は、少年誌では現役とは言い難くなっていたが、それでも本作は忘れ去られるには惜しい作品である。
スプラッタ映画全盛の頃に描かれただけあって残酷描写が多く、怪奇色を強く打ち出しており「バッタの改造人間」である仮面ライダーもきわめて不気味な存在として描かれている。
「怪奇アクション」としての完成度は高い。

さて、「手塚はオカルトを小馬鹿にしていてが、石森は魅力を感じていた」というのが私の仮説。永井豪は……というと、あくまでアイディアの叩き台としてしか考えていなかったんじゃないだろうか。

とにかく、石森はユダヤ陰謀論的なものにギリギリまで近づいた。だが、見識があったので特定の実在組織を悪の黒幕などにはしなかった(と思う)。
本作「仮面ライダーBlack」では、舞台は世界各地に飛ぶ。その中には俗流オカルト・超常現象的なものも織り交ぜられる。「フィラデルフィア実験」や「アボリジニの神秘」などがそうだ。

「ゴルゴム」の怪人たちが光太郎を襲うが、「ゴルゴム」の全容は最後までわからない。特撮作品にありがちな「首領」や「大幹部」といった存在もいない。あくまでも謎の結社なのである。
このあたりの組織の不明瞭さは、私の知るかぎり石森作品では徹底している。「サイボーグ009」でも「変身忍者嵐」でも、敵の存在は常によくわからない。

子供の頃何の疑問にも思わなかったことで、大人になると気になってしょうがないことがある。たとえば石森作品で、なぜ悪の組織は主人公の居住区まで把握しているのに、彼を抹殺することができないのだろうか?
家族や友人を人質に取ってしまえば、一瞬で殺せるのではないか?

確かに断片的にそのようなエピソードが出てくるが、本作でもゴルゴムが徹底してそれをやった形跡はない(アメコミヒーローが正体を隠す理由の一つは、家族や地域を人質に取られないためだろう)。

しかし、石森作品では悪の組織が「陰謀論」的な、鵺のような不明瞭な存在であると認識すれば、納得がいく部分もないではない。
なぜなら、陰謀論的な悪の組織は、自分たちの秘密を知る人々を泳がせたり、実力行使と裏腹な姑息な手段を使ったりすることがあるからだ。

もっと言ってしまうと、「妄想の産物」と考えるとわかりやすい。だからこそ、悪の組織のやることは常に合理的なようでいて非合理的なのである。

なぜ石森がこのようなスタンスでいたのかの答えは、「サイボーグ009」ですでに明らかになっている。「人間の悪の部分」こそが、悪の組織の永遠性を保証するものだからだ。本当の敵は、石森ワールドにおいては人間自身の心の中にあるのである。

だからこそ、アメコミヒーローと違い「ヒーロー(政治家や軍隊、警察などと立場的には近い)と市民」というような関係性も、石森ワールドではきわめて曖昧なのだ。

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