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2011年6月

・「麻雀バクチ列車!」(上)(下) 阿佐田哲也、原恵一郎(2011、竹書房)

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途中で単行本の刊行が止まっていたらしい「麻雀放浪記 凌ぎの哲」の中から、バクチ列車のエピソードをコンビニコミックとして単行本化。

高レートの賭け麻雀を楽しむ「バクチ列車」には、スリルに目がない麻雀打ちたちも入りたくない部屋があった。
そこでは、最下位になった者は文字通り列車から「飛ばなければならない」。運よく川や海に落ちれればいいが、下が地面だったら確実に死ぬ。
それは最強で盲目のバイニン(雀士)、ブー大九郎が、自分の強さを証明するためだけにつくったシステムであった。

ドサ健と坊や哲は、「バクチ列車」のキップをもらいブー大九郎との対決することを決める。あらゆるイカサマを駆使した、プライドと死を賭けた麻雀が始まった。

麻雀マンガにはくわしくないが、麻雀マンガを避けて通っているとしたら「もったいない!」と言いたくなるほどの傑作。弱者の意地、強者の傲慢、バイニンという存在のいかがわしさ、そしてそのいかがわしいところから出てくるギリギリの倫理観のようなもの。それらを充分に味あわせてくれる。

上下合わせて800ページというまとまりは、ちょうど映画一本ぶんほどの体感時間。実にすばらしいひとときを過ごさせてもらった。

なお、阿佐田哲也の原作にはこのようなエピソードはないそうである。ドサ健や坊や哲というキャラクターを使った、オリジナル作品に近いらしい。

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【書籍】・「トンデモ本の大世界」 と学会(2011、アスペクト)

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アスペクトのサイトから引用:

著者からのメッセージ

と学会:世にあるトンデモ本(著者が意図したものとは異なる視点から読んで楽しめる本)を収集・鑑賞して楽しむ“謎の読書集団”。正式な「学会」ではなく、冗談でそう名乗っているだけ。SF作家の山本弘を会長に、100名以上の会員を擁する。2011年、結成から20周年を迎える。

編集者からのメッセージ

90年代に大ベストセラー『トンデモ本の世界』を発表して以来、世の中のありとあらゆるトンデモ物件を発掘、紹介してきた「と学会」も今年で結成20周年。それを記念した『トンデモ本の世界』スペシャル・エディションの登場です。いままでのトンデモ研究の成果の総決算から、東日本大地震関連のデマをはじめとする最新トンデモ物件研究報告、それに西原理恵子さん、荒俣宏さんなどの豪華ゲストによる特別寄稿など、いまだかつてない特別仕様の『トンデモ本の世界』です。未曾有のピンチに直面している今こそ、すべての日本人に読んでもらいたい一冊です!

(私の読後の感想)
新刊「トンデモ本の大世界」、「と」の世界の基本事項をおさえた初心者向けの構成だが、読む人が読めば超常現象に対する執筆者のスタンスの違い(それはそのまま、広義の懐疑派のヴァリエーションでもある)や、「トンデモ」という定義の多様性を理解できるつくりになっている。

私も執筆させていただいています。よろしく!!

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・「原宿天鵞絨館」 柳沢きみお(1986、講談社)

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短編集。前半が少年マンガ、後半が青年マンガという面白い構成になっている。
なんでも、柳沢きみおが青年マンガに活動の場を移すきっかけとなった作品群ということで、「柳沢きみお」の青年マンガの基本的なフォーマットは初期から確立されていたことがわかる。

逆に言えば1984年掲載の、二本の「少年マンガ」は、ちょっとこの調子では80年代を乗りきれないだろうなあ……という雰囲気が出てしまっている。

一方、最初に描いた青年マンガだという「HEAD LIGHT」は、きみお青年マンガの本質があると言いきってもいい佳品である。
27歳で将来を決めかねている青年と、それまでの仕事を捨てて好きに生きようと決心する五十代のおっさんとの宅配便会社での交流を通して、男の人生の節目に去来する虚しさ、寂しさをエンターテインメントとして描いている。

私の記憶では、それまで「普通の大人の男の寂しさ」を、エンターテインメントとして表現できる作家は少なかったのだ。
この段階で作者は鉱脈を掘り当てたと言える。

(収録作品)
・原宿天鵞絨(びろうど)館
・MILK
・BMW R27
・HEAD LIGHT
・大人熱 その1 カゴの鳥
・大人熱 その2 マネーガール

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【イベント】・「トンデモ本大賞2011」


「トンデモ本」を集めて楽しむ読書集団と学会(会長:山本弘)が
一年間の収穫を持ち寄って年間最大のトンデモ本を選び、
そしてさらにと学会20年のあまたのトンデモ本の中から、
ベスト・オブ・ベスト(ワースト・オブ・ワースト?)を決定する
「日本トンデモ本大賞」の第20回大会を、今年も東京で下記の通り開催することになりました。
豪華ゲストや宇宙人解剖くじ(下記参照)もあるよ!

日時;2011年6月11日 土曜日 12時開場/13時開演(予定)
会場:銀座ブロッサム
出演者:山本弘 with と学会
演芸:米粒写経、
入場料:前売り3,800円/当日4,000円
前売り券販売方法:ローソンチケット(Lコード:38189)

※前売り券発売開始しました。
 売り切れることが予想されますので、お早めにお買い求め下さいませ。
 また、前売り券の保管は購入された皆さんでお願いいたします。
 前売り券で全席埋まった場合は、当日券の販売はありません。

内容:トンデモ本大賞20周年記念を銘打ち、これまで選ばれた「トンデモ本」の最優秀「トンデモ本」と、
前夜祭で選ばれた最新の2011年のトンデモ本が激突し、当に「ベスト・オブ・ベスト トンデモ本」を選びます。
栄冠に輝くのは「植物は警告する」か「人類の月着陸は無かったろう論」か、はたまた「発情期ブルマ検査」か!
あなたもぜひご参加の上、一番面白かった本にご投票ください。

今回は20周年を記念し、豪華ゲストの来場も予定しております。
また、恒例となった演芸ゲストは昨年の後夜祭で大受けをとった米粒写経のお二人を予定しております。
豪華ゲスト陣発表!

・高須克弥(高須クリニック院長)
・西原理恵子(マンガ家)
・桃井はるこ(声優・ラジオパーソナリティ)
・飯塚昭三(声優)
・矢追純一(UFOディレクター)
ビックリ!会場のみの販売物(リンクファクトリー

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【雑記】・「定点雑記20110603 同じ言動の繰り返し」

・その1
いつぞやの週刊プレイボーイに、乳首が一個も出てこない、というw話題がtwitterであった。
週プレが自主規制しているわけではなく、たまたまだったらしいが、その会話の流れの中で、
「乳首は出さなくてもエロはできる」という意見が出て、それに対して「言葉狩りのようなことになったら困ると懸念する」という返しがあった。

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【小説】・「アムネジア」 稲生平太郎(2006、角川書店)

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編集プロダクションに勤める青年・島津伶は、戸籍上、数十年前に死亡した(ことになっている)男・徳部の死の謎に興味をひかれる。
小さな新聞社の記者・澤本と知り合った島津は、それが出所のあやしげな超巨額の融資ばなしに関係があると聞かされる。一方、徳部は「いかにも永久機関的なもの」の開発にも携わっていた経緯があった。

島津は、日常にぱっくり口を開けている「異世界」の奇妙な出来事に、やがて取りこまれていく……。

「すべての伏線めいたものをチグハグに配置し、その不協和音こそを全面に出していく」という手法は面白いことは面白いが……。前半が整然とし過ぎているために、謎が解かれないという意味でのだまされ感覚は否めない、かなあ。謎解き小説ではないと承知してても。

私が本書を読んで連想したのは、根本敬が「人生解毒波止場」などで主張している「因果」という概念だ。というか、私は本作の著者と根本敬氏の主張は、元となる教養の質はまったく異なるが、本質的には非常に近しいと思う。
現在、「稲生平太郎 根本敬」で検索してもこの二人を比較した論考は観られない。
二人のファンが、その背景となる教養の違いを大きな理由に、完全に別個のクラスタに分かれてしまっている、そのことこそが実は問題だと、私は思っている。

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