・「原宿天鵞絨館」 柳沢きみお(1986、講談社)
短編集。前半が少年マンガ、後半が青年マンガという面白い構成になっている。
なんでも、柳沢きみおが青年マンガに活動の場を移すきっかけとなった作品群ということで、「柳沢きみお」の青年マンガの基本的なフォーマットは初期から確立されていたことがわかる。
逆に言えば1984年掲載の、二本の「少年マンガ」は、ちょっとこの調子では80年代を乗りきれないだろうなあ……という雰囲気が出てしまっている。
一方、最初に描いた青年マンガだという「HEAD LIGHT」は、きみお青年マンガの本質があると言いきってもいい佳品である。
27歳で将来を決めかねている青年と、それまでの仕事を捨てて好きに生きようと決心する五十代のおっさんとの宅配便会社での交流を通して、男の人生の節目に去来する虚しさ、寂しさをエンターテインメントとして描いている。
私の記憶では、それまで「普通の大人の男の寂しさ」を、エンターテインメントとして表現できる作家は少なかったのだ。
この段階で作者は鉱脈を掘り当てたと言える。
(収録作品)
・原宿天鵞絨(びろうど)館
・MILK
・BMW R27
・HEAD LIGHT
・大人熱 その1 カゴの鳥
・大人熱 その2 マネーガール
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