【雑記】・「Chim↑Pomかどうかはともかく、あるいはあすのしんわ、あるいはむらかみサン」
「明日の神話に原発を付け足したのはChim↑Pom」、とネットニュースに載っているがちょっとどうもよくわからない。
なので、「彼らが付け足した」ことを前提として話を進める。
賛否両論で、しかもいろいろなレベルのものがある。
twitter上で知り合いと、「果たして彼らの勝利条件はどこにあるのか?」という話になった。
ええと、その前にまず前提を明らかにしなければならない。
こういったパフォーマンス的な所業の際、必ず「アートなど何もしらない人たち」の目に触れることになる。
そのことについて、である。
・その1
まず重要なのは、「日本の一般人には、基本的にある程度法をおかしてまで社会風刺的行動を取るタイプのパフォーマンス」にたいして、歓迎するムードと言うのはほとんどない、ということである。
「粋な冗談を、よくやった!」という評価は、してくれないのが普通である(このあたりは、HIPHOPのグラフィティに関する報道でもうかがい知れよう)。
もう一つは、一般的な日本人は、「社会風刺」を「アート」に入れ込む、そのことさえ嫌う、ということ。
日本で最も愛されているのは、ルノアール、ミュシャ、物語もコミでの山下清、ラッセンくらいのものだろう(そのような受け入れられ方はアートの受け入れられ方ではない、という批判を承知の上で)。
これらは、基本的に政治とはまったく無縁である。
「なぜアートが政治と切り離されたのか」については、勘だけで書くと、70年代半ば以降、学生運動が挫折し、過激派のあいつぐ内ゲバが人々を政治に関わらせることに嫌悪感・恐怖感を抱かせたこと。
70年代の言論シーンにおいて、「必ず社会問題を取り扱わねばならない」という価値基準に反発したかたちで、表面上はノンポリの「面白ければ何でもいい」という思考が、大量消費時代、業界ブームなどと重なって80年代の日本を席巻したこと。
60年代以降、新左翼的言説の中で「市井の人々の嗜好を理解しなければならない」という観点から、通俗小説や紙芝居、マンガなどの大衆文化を称揚する機運が高まり、相対的に「高踏的な芸術」、「王道的な芸術理解」の価値が下がってしまったこと。
「一般庶民の感覚」を大切にすべき、という観点が芸術理解にまでおよんでしまったこと。
今でも印象的なのは、60年代か70年代のやなせたかしの著作において、「ピカソがわからないならわからないでいいのだ」と書いてあったことだ。
これは「ありのままを、自然な気持ちで観ればあらゆる芸術はいい、悪いが見えてくる」という思想に基づいた発言である。
私もこのトシでやっとわかったが、抽象芸術はそこに至るまでの芸術シーンのコンテクストが見えてこないかぎり、理解もできないにも関わらずの発言であった。
これだけの土壌で、アートシーンから社会風刺をすることは非常にむずかしい。
だから、そういう流れの中で「Chim↑Pomはがんばっている」という評価も、当然出てくるだろう、とは思う。
私自身の経験だが、かなりサブカルチャーに精通している人でも、意識的にアートに接してこない人はとくに現代アートに関しては「高踏的に奇抜なことをやっているだけ」というふうに受け取っている人も少なくない。
ここでネット上では、必然的に「批判する者」に対して、「現代アートのコンテクストを無視して何を偉そうに批判しているのだ」という批判が出てくる。
しかし、美術展などではなく、まだしも大衆から支持されている「明日の神話」に落書きをしたということは、明確に「芸術など理解していない一般人」の目に触れる行為だ。ということは、無知な一般人に評価されることも必然だろう。
それをどう彼らが再解釈するのか、という興味はある。
・その2
似たような「一般人(というか、おたく層)からの批判」ということでは村上隆があげられる。
その状況でもやはり、村上の「なぜ現代アートのコンテクストを無視して批判してくるのか」という批判は、ひとまず間違ってはいない。
間違ってはいないが、彼が目指していることが「日本人アーティストが世界で認められること」であったとしたなら、「じゃあそうなったらどんないいことが起こるか」ということを、反感を持っている人たちに説明しなければならないのではないか(すでにやっているのならスイマセン)。
ささいなことでも、「特定のコンテクストのものを別のコンテクストで評価する」ことに対する反感、は常に存在する。
そのことの意味についての説明を、多少面倒でもするべきではないのか、と思ったりするのであった。
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