【雑記】・「定点雑記20110514」
「定点雑記」と付けているのは、その日づけのときにはそう考えているが、後々には変わってしまうかもしれない、という含みを持たせるためだ。それくらい、自分には311以降の自分の発言には迷いがあった。
・その1
前回の「定点雑記」は、ほぼ1カ月前だった。普通、大事件、大惨事が起こったときには情勢が安定するまで、頼まれもしないかぎり発言しないのが賢明である。
だが、私は、あるいはあえて「我々は」と言うが、ネットに発言を書くことが習い性になっている人たちは、結論の出ない状況で何かを発言せずにはいられなかった。
とくにtwitterにおける情報の速さと混乱ぶりは大変なものだったが、そもそも発言ツールがないならあそこまで混乱もしなかったわけで、少なくともネット上における「311以降」の混乱は、ネットの特性が関わっているということはあらためて留意しておきたい。
・その2
原発に関してこのテキストを書いたのが3月25日。11日から二週間ほどが過ぎた頃だった。
この頃から、私の見解は変わっていない。
特定の事案について、どの程度情報をプールすれば結論を出せるかは、他の事案のときにだいたい見当がつく。
よほど頭のいい人ならともかく、おそらく私が原発について、ある程度責任を持った発言をするには二、三年を要するだろう。
私個人の「行動」となると、恥も外聞もなく逃げ出すかもしれないし、何も気にしないかもしれないし、あきらめきってしまうかもしれないが、「発言」に関してはとても責任ある言葉を発する勇気は、ない。
・その3
で、無責任に興味深いのは広義のサブカルシーンでの「面白主義」の取り扱いについてである。
「面白主義」とは、定義はいろいろだろうが私の感覚としては、「70年代後半から80年代にかけて、『すべて発言は政治的な要素を帯びていなければならない』という圧力から脱するため、純粋に『面白』いものを、わざと『政治を語らない』というスタンスで表明すること、あるいはその後継」である。
「面白いことは面白いんだ」とする「面白主義」は、一見絶対不変のように思えるのだが、実は「政治的語り」に対するアンチなのだ。
この件に関しては、現状でもさまざまなスタンスがある。たとえばふだんはふざけてばかりいるように思えるが、キメるところは政治的発言もキメる、とか、あるいはまったく逆で「面白主義」を「ふざけている」と判断する場合もあるだろう。
あるいは、理科系的な観点でツッコミを入れる場合には、原発情報などにもそれが適用でき、「面白」と政治的発言とをスムーズにつなげたりすることができる、場合もある。
興味深いのは「純粋に面白主義」を貫かんとする場合で、それがもっとも危機にさらされたのは311から一週間くらいではなかったか。
つまりこういうことだ。「面白主義」は「政治的発言」に関するアンチではあるが、「政治的発言」が極端に重視される時代になったらどうなるか、ということである。
どんなものでも「面白」に変えてしまう「純粋面白主義」とでもいうべきものが存在するとしたら、彼の発言力は劇的に低下してしまうだろう。
何しろ、「ほんとうのこと(だと本人が思っていること)」が主義によって言えなくなってしまうのである。
「ほんとうのこと」が「面白い」とはかぎらないのだから。
平時には「純粋面白主義」が、とてもカッコよく映る。何事にも動じず、クールだからである。
だが、ひとたび「そんな場合じゃない」となったらどうなるか……。自らの政治的スタンスを明らかにするか、あるいは自分の命に関わる出来事があってもナンセンスに殉じるようなスタンスが必要になってくる。
実はいかにも新しい顔をしている発言者も、このあたりのジレンマについてはお釈迦様のてのひらの上に立っている。
多くの人はなんでそれに気づかないのかな、と思っているが。
・その4
オタクの選民思想、しかも「コミュニティとしての選民思想」というものが、自分にはまったくピンと来ない。
「おたくのビデオ」(→感想)というアニメの実写パートの中に「友達はいますか?」とおたくに質問を投げかけるシーンがある。最初はピンと来なかったが、よくよく考えるとこれはもしかして脚本の山賀博之が、おたくの人間関係のドライさを揶揄したかったのではなかったか?
私はおたくのホモソーシャル感は、その他の位相のコミュニティ(仕事関係、体育会系など)とも違う独自のものだと思い始めていて、それに対する違和感を抱き続けてきた。
何が言いたいかというと、「抱き続けてきた」ということだけなんだけど。
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