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・「教師女鹿」全2巻 沼礼一、川崎三枝子(1978、芳文社)

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品行方正なある学園に、若い美人教師が赴任してくる。あらゆる規律に従わない彼女は、学園そのものを崩壊させようとしているかのようだった。
教育熱心な校長は、彼女の心を「調教」するために、教師たちにあの手この手を使わせるが……。

一時期はどこの古本屋にもあって、ワイド版も出た。映画化もされている[amazon]、川崎三枝子の作品では最も有名なのではないか?

本作の重要なところ、そして最もよくわからないところは、ヒロインの敵である校長が決して悪人でも過度の管理教育を推進しているわけでもない、ということである。
ネタばれになってしまうが、ヒロインの復讐の相手は管理教育のために狂気の世界に入り込んでしまった母親であり、母親と思想を同じくする(しかし別に狂気の領域には達していない)校長との戦いは「代理戦争」にすぎない。
このため、読めば読むほどよくわからないことになっている。
70年代という時代状況をかんがみれば、ヒロインにとって自由と快楽のためにはすべての規律は破るべきであり、すべての社会秩序のために己を抑えている人々は偽善者となる。ヒロインはその偽善の皮をひっぺがし、人々を欲望に殉じるけだものにすることに、何よりも喜びを感じるのだ。

が、もともとが「代理戦争」であるため、ヒロインと他の教師たちとの戦いにまったくカタルシスがない。
やや雑に言ってしまえば、「捨てられた鬼っ子」がその出自ゆえに社会に復讐するという、貸本怪奇劇画にあるようなパターンだと解釈すればいいのだろうが、やはり最後は母親との対決にすべきだっただろう。

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