« ・「どげせん」(1) 板垣恵介&RIN(2007、日本文芸社) | トップページ | 【書籍】・「コミックマーケット創世記」 霜月たかなか(2008、朝日新書) »

【映画】・「ファイナル・デスティネーション」

[amazon]
2000年、アメリカ
監督 ジェームズ・ウォン

・魅惑のノイローゼ・スプラッタ開幕!!
10年も前の映画について、何を今さら書くんだと思われる方もいらっしゃるだろうが、ホラーやスプラッタに対してくわしくない私としては、本作の恐怖表現に実に今日的なものを感じたのであった。

その1
主人公は高校生の少年。ワクワクのフランスへの修学旅行(?)だったが、飛行機に乗り込んだとたん、それが墜落する光景をはっきりと幻視する。
恐怖にかられて飛行機を降りてしまう主人公、そして彼に巻き込まれて一緒に追い出された教師、生徒。さらに、自分自身もイヤな「予感」を感じていた女の子。
パニックを起こした主人公に非難が集中する中、本当に飛行機は爆発、墜落した。

しかし、生き残った主人公は感謝されることなどなく、むしろその予知能力を不気味がられ、飛行機が墜落したのは彼のせいだと皆思いこむ。
そんな中、生き残った人々が次々と死んでいく。なぜか? それは「死」という運命に逆らったものは、帳尻を合わせるために再度死ななければならないからだ!

その2
「不慮の事故で偶然生き残った者も、やはりその場で死ななければならない」という発想自体が、ちょっと病的である。「自分たちは幸運だった」と思えばいいではないか。そう思って思い出してみると、本作では最初に、飛行機の乗客として赤ん坊と障害者がいることが明らかにされている。
そして、主人公の友人に言わせている。「神は赤ん坊や障害者には慈悲深いはずだ。だから飛行機は落ちないよ」

だが、飛行機は落ちてしまった。赤ん坊も障害者も死んでしまったのだ。「死」に選別などない。「死」は「死」なのだ。
そして、明晰な幻視ではなく、「死の予兆」が主人公の周りを取り巻き始める。
雑誌の切れ端が友人の名前になっていたり、気分転換に飛行機事故で死んだミュージシャンのレコードをかけ始めたり……。
いやそもそも、幻視以前にも「予感」的な描写がある。生き残る女の子が読んでいる本をバサッと落とし、開くとなぜか自動車事故のページだとか……。

これとは別に、「感電死しそうな漏水」だとか「釣り糸がブラブラしている」などの、直接的な「事故死」への布石の描写もあるのだが、それと「死の予兆」を表す描写はまったく別のものだ。
つまり、はっきり言って、それは一般には「ノイローゼ」と呼ばれる。

その3
本作では「事故で生き残った者が死ぬ」という根拠はどこにあるかというと、中盤までは主人公の「幻視」しかない。それ以外は、ほとんど勘違いとか妄想と思われてもいいような「予兆」ばかりである。
中盤以降、ある人物から「死神の運命は逃れられない」というセリフがあるが、その「死神」というのがどこのどんな神なのかという描写はいっさい、ない。それすら、その人物の妄想かもしれないのだ。

むしろ本作における「予兆」とは、「事故で生き残ったことに対する罪悪感から逆算して主人公がつくり上げた妄想」とした方がしっくり来るのである。
このように、「敵」の存在がまったく不明瞭で、その防衛策も今一つ明確ではないことは非常に今日的な描写だと思う。そして訪れる「死」自体も、ほとんど不可避な「事故」として顕現する。
「13日の金曜日」にはあった、「チャラチャラ遊んでいる若者はぶっ殺されるべき」というルサンチマンや、「だれかの強烈な怨念が無差別殺人に走らせる」といった従来の「死に至るまでの因果関係」はここにはまったくない。

そして、途中から「ゲームのルール」は明確になる。
当初のラストシーンでは、主人公と後に恋人となる生き残った少女との間に子供が生まれ、その子供が「死神」の運命から逃れ出たものとして「死の連鎖」が終わる、というものだったらしいが、テスト試写で不評だったため差し替えになったという。
純粋に観客受けを考慮してのことだというが、確かに、徹底して「因果」を排除したプロットの最後に「因果」を持ってくるこのラストは「ゲーム」としては不徹底だったと言える。

本質的に、人間の死に意味や理由などありはしない。もちろん、本作以前のスラッシャー映画にもその意味は込められていたが、少なくとも殺人者側には意味があった。快楽という意味が。
ところが、本作では死には本当に意味がない。ただ、「死のシステム」とでも言うものが冷徹に存在するだけなのだ。

本作のスプラッタシーンは、ビックリした後に笑ってしまうようなものばかりなのだが、笑うしかないのだ、我々は。その死の無意味さに。

|

« ・「どげせん」(1) 板垣恵介&RIN(2007、日本文芸社) | トップページ | 【書籍】・「コミックマーケット創世記」 霜月たかなか(2008、朝日新書) »

ホラー」カテゴリの記事

映画」カテゴリの記事