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【雑記】・「気になったので補足」

このエントリのこの一文について、補足。

この頃の少女マンガは「少女が少女であること」は描いても、「少女がオンナであること(男性とは違う考え方をしていること)」を強調することはなかった。

たぶん、少女マンガのフェミ的な読み解きなんてとっくの昔にだれかがやっているだろうし、私が学術的な解説を書けるわけもない。

ただ、やはり補足させてもらう。

少女マンガは何段階かの時期に分かれるが、男性にも注目されるようになった70年代を基盤に考える。
少女マンガの中には、二つの要素がある。

・女の子として(できれば自分を変えることなくそのままで)理想の男性と恋におちたい
・カタにはめられた「女の子」としては生きたくない

作家や作品によってこの両サイドに揺れがあるが、大きく分けてこんな感じだろう。
また「ありのままの自分が愛されたい」というサイドと、「『世間』が強要する『女の子』として生きたくない」というのはつながってくる場合もあり、そうなると両サイドがつながることになる。

前者は、よくある「メガネを取ったら美人の女の子が、自分を変えようと無理をしてメガネを取って生活することにする。しかし余計なやつまで言い寄ってきて、意中の人には振り向いてもらえずクタクタ……。そんなとき、不良っぽいが本音で接してくれる少年が登場、『無理するな。おれはメガネをかけたままの、ふだんのおまえが好きなんだ』と告白されてハッピーエンド」みたいなパターンである(ちなみに、この際の「意中の人」は取り巻き女子が何人もいて、一見さわやかだが女を食いまくっているプレイボーイだと途中でわかったりする)。

さて、後者。
これの典型的なパターンは、「ベルばら」、「はいからさんが通る」、「生徒諸君!」、そして「キャンディ・キャンディ」も入るかもしれない。
「ベルばら」と「はいからさん」は、明らかに当時の時代状況から逸脱した人生、「女らしくない」人生を送ろうとしている女の子の物語である。子供の頃から男の子とケンカしてきたようなヒロインは、自分が「女であること」によって男と同列ではないことに疑問を持つ(「ベルばら」でも後期には、そういう展開になる)。
「生徒諸君!」は、ものすごく大雑把に言えば「ハリスの風」の女の子版である。スポーツ万能の活発な女の子が、周囲を巻き込んでいろいろと面白いことをやらかす。
ヒロイン・ナッキーにはマールという身体の弱い双子の姉がいるが、彼女はナッキーの「弱い部分」、「女の子らしい部分」の象徴としての役割もあったと思う。
「キャンディ・キャンディ」も、アンソニーとテリー二人との恋に破れてからは職業婦人として生きることを決意する。
キャンディも、もともと負けん気の強い、カタにはまらない性格として描かれている。

要するに、ある時期の少女マンガは「ありのままの自分が愛されたい」、という前提があり、そのうえで「そのためには世間と戦わなければならない」という一派と、「ひたすらに棚ボタを待っている」一派に分かれるということかもしれない。

ただし、こうした主張は同時代の男子にもじゅうぶん受け入れられる要素を持っていた。いつ頃からまでかはわからないが、ある時期まで少女マンガにおけるヒロインの受難は、世間のマチズモに辟易としていた男の子たちにも共感を得たのである。

ところが、少女マンガ、女流マンガ側の少年マンガへの大幅な乗り入れとは裏腹に、ある時期から少女マンガ、レディースコミックの一部には「自分であることを阻害しているのは、男のつくった世間ではないか?(注:自分を愛してくれる人はまた別)」という主張が混ざるようになった。

それは正論だ。正論だが、そうなると男が少女マンガを読む際に、ハードルが一段高くなる。その抑圧的な男社会を形成しているのは、男性読者自身でもあるからだ。
こうして、「男性読者がほぼハードルを感じることなく楽しめる少女マンガの時代」は終わりを告げた。

現在では、「大きなお友達」を取りこんだ児童向け少女マンガという特殊なジャンルが誕生した代わりに、普通のレディースコミックの中にはずいぶんとハードルの高いものがある。
それも、別に「大奥」みたいなヒット作の中にではなく、さりげない、普通のマンガの中に「あ、これは男が覗いてはいけないんだな」という描写が混ざっているのである。

しかし、それは歴史の必然で仕方がないのだな、と。

そう思う、という話である。

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