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・「アガルタ」 石森章太郎(1976、朝日ソノラマ)

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東北から石森プロにやってきたマンガ家志望の黒木シュンは、石森プロにちょくちょく遊びに来るUFOマニアの美少女・橘レミと親しくなる。
しかしシュンには秘密があった。人類の存亡にも関係している秘密が……。なお、彼が石森プロのアシスタントになるために持ち込んできたマンガのタイトルは、「アガルタ」であった。

1974年、少女コミック連載らしい。ヒロインがお蝶夫人みたいなオシャレな髪型をしているのはそのせいか。
絵柄は石森が劇画タッチに変えてから、変に絵が荒れる前のいちばんいい頃である。

本書に出てくるのはオカルトアイテムの数々だ。日本のピラミッド・クロマンタ、竹内文書、アトランティス伝説、そして爬虫類型宇宙人、さらには人類文明に宇宙人が関与していた説、そして「アガルタ」。

はっきり言おう。本作のプロットに、現在読むにあたって新味はまったくない。
当時こそ、石森一流の多読・乱読がオカルトブームとあいまって読者には刺激になっていただろうが、ネット時代の現在、何がどう影響し合っているかがわかってしまえば、プロットの構成やオチは簡単に割れてしまう(私は前から、70年代の石森は大陸書房系のオカルト本を好んで読んでいたと推測している)。

しかし、石森ファンとして観るべき点がないではない。
繰り返し書いていることだが、乱読の中で石森は「ユダヤ陰謀論」なども当然知っていたはずである。だが、私が彼の作品を読むかぎり、安易な陰謀論を描くことはほとんどなかった(もちろん、荒唐無稽な陰謀論は描いた。「ショッカー」とかね)。
時代アクション劇画「九頭竜」でも、日本は背後で敵対する組織が奪い合っていることになっているが、その正体は明らかにはならない。本作「アガルタ」でも、人類の運命を握っているのは二派に分かれた宇宙人だが、そのどちらが悪いというふうには書いていない。

いわば「石森的陰謀論」は、ギリギリまで「ユダヤ」に接近しつつ、おそらく意識的にそこをスルリとすり抜ける。
そして、さらなる荒唐無稽な(たとえば宇宙人などの)対立構造にバトンタッチされていく。
80年代、「幻魔大戦」復活プロジェクトみたいなことが行われていたとき、平井和正の意気込みに比べてどうも石森のトーンが低かった印象があるが、彼の念頭にあるのは究極的には「大連盟」と「幻魔」といった抽象化された組織の戦いだったのかもしれない。

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