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・「仮想敵機を撃て」 旭丘光志(1974、芸文社)

自衛隊でパイロットを目指す優秀な兄と、グレて「トルコ・コンサルタント」なる職業に就いた弟。
兄は飛行訓練中、旅客機と衝突してしまい、百六十名の客は全員死亡。しかし自分はパラシュートで脱出して一命をとりとめる。
世論が一斉に自衛隊批判に傾く中、兄は国の軍事計画をつまづかせぬようにと、間接的に自殺を勧められる……。

1971年に実際にあったという「全日空機雫石衝突事故」を元にした社会派劇画。

「強大な権力によって個人が押しつぶされる」という、本作刊行当時にはよく見られたテーマではある。
劇画としての出だしは面白いし、何より執筆に際しての志の高さについては、敬意を表することにやぶさかではない。
しかし、「自衛隊員専門のトルコ」を経営する弟が面白くからんでこれそうなのに今ひとつからんだこなかったり、最後に兄が、自分を国の計画のために殺そうとした大物政治家に一矢報いようとしてけっきょく報いなかったりと、正直、読後のカタルシスはない。
作者の真剣ぶりが伝わってくるので、おそらくは一個人が国家権力に対抗することなどできない、という絶望から導き出された結末だとは思うがあまりに……である。

中編「アフリカの標的」、「自衛隊叛乱」を同時収録。どちらも「一個人が強大な権力にふみにじられてしまう話」。
「自衛隊叛乱」は、タイトルどおり自衛隊のクーデターの話だが、反戦自衛官が「自衛隊のクーデターをおさえることによって民意を得る」計画を練っていたのが少し面白かった。

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