【映画】・「十三人の刺客」
監督:三池崇史、脚本:天願大介
もうすぐ老中になるという殿様(稲垣吾郎)は、手あたり次第に女を犯し、男は殺し、とにかくメチャクチャな狂気の男。
こんな人間がご政道に関係してくれば、民草はひどい目にあうことになる……。
そう考えた現・老中(平幹二郎)は、島田新左衛門(役所広司)に、殿の暗殺を命じる。
すでに武士が刀で斬り合うことのなくなった世で、「戦って武士として死にたい」と考えた十一人の男と一人のトリックスター的男(物語後半に登場)、そしてリーダー・島田の計・十三人が、同じく武士として殿を守り通そうとする鬼頭半兵衛(市村正親)率いる二百人の武士たちと、壮絶な斬り合いを繰り広げる。
ひと言で言って、最高の復讐映画。
この現代に「勧善懲悪モノ」を現出させようとした三池崇史と天願大介の心意気は大いに買いたい。
そしてその上で、「武士であること」をまっとうしようとする二人の男(役所と市村)が敵味方に分かれてしまうという描き方、勧善懲悪をベースにしながらも、どこか「武士同士の戦い」を一種の内ゲバととらえているような少し突き放した感じ。
それでいて小賢しい印象はいっさいなく、全体は骨太なドラマに仕上がっている、その感触がたまらない。
とくに、本作を成り立たせているのは稲垣吾郎だと言っていいだろう。
狂気の権力者だが、どうも完全に狂っているわけでもない。計算されたサディズムで暴挙を行っているようにも思える。だがそう思った瞬間には、また狂っているとしか思えないことをやり出す……というものすごく恐いキャラクターを、見事に演じきっていた。
また、多少ネタバレになるが「彼の言っているのが本当のことかも」といった、イヤラシイ逆説もなく、最終的には極悪人として断罪される。
こういうのを待っていた!
こういうのを待っていたんだ!!
クライマックス前のある「もの」を掲げたシーンには、震えが走ったよ!!
強くオススメする。
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