・「足利アナーキー」(1)~(3) 吉沢潤一(2009~2010、秋田書店)
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ヤングチャンピオン連載。
楽しいことが何にもない場所、栃木県足利(ということに、作中ではなっている)。
この場所から、高校生の喧嘩師の主人公と読者モデルもやってるというイケメンの親友、そして中学時代、この二人と「黄金時代」を築いたと言われる二人を加えたメンバーが、「日本一のギャングになってやる」という野望をもとに周辺のギャングたちにケンカをふっかけるというヤンキー(ギャング?)マンガ。
本作は微妙なバランスの上に成り立っている。が、現在のところ、非常に面白い。
1巻では、「タイマン」文化を否定する「いまどきの不良」のリアリティが先行していた。これが2巻以降になると、1巻ではどこまで本気かわからなかった「路上のケンカの論理性」を追求するようになってくる。タイマンはなくても、1対1でケンカするときにはどうすべきか、が詳細に語られたりする。
「不良」と「喧嘩師」を「別物」として、「ほとんどの不良は本当にケンカをしたことがない」と断じたり、大勢の人間を暴力による恐怖でビビらせ、自分に手を出させないようにするという過程にもリアリティがある。
ケンカにおける集団乱戦のノーハウについても語られている。どこまで本当かはわからないが、「路上」のリアリティを感じる面白い描写だ。
テーマも、いったいどこまで本気なのかがまだわからない。「何もやることがないから、とりあえずケンカして名前を売って行く」というのは「クローズ」以降のモラトリアム感覚と言っていいだろうが、そのわりには「日本一のギャングになる」という見果てぬ夢を持つ主人公より、荒れる生活をして喧嘩師となった元ボクサーを「クズ」と規定してみたりと、なんだかよくわからないところもあるのだ。
よくわからないところもあるのだが、妙なリアリティを感じることも確か。
本作が「やっても何の得にもならない無駄なことをやる」というモラトリアムに終始するのか、それとも本当に「日本一のギャング」になって何かをしようとうするのか(もしそうなるとしたら、主人公はスーパーヒーローになってしまうが)、どういうおとしどころに持って行くかは非常に興味のあるところだ。
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