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・「ブラック・ジョーク」(1)~(4) 小池倫太郎、田口雅之(2008~2010、秋田書店)

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アメリカ51番目の州、ニホン州の東京湾立地にある通称「ネオン島」は、カジノ・売春が合法の遊興都市となっていた。このため国際的なマフィアの競合地と化している。
そこの唯一の日本人経営のホテルを舞台に、ひと癖もふた癖もある登場人物たちの血なまぐさいエピソードを描いてゆく。タイトルのとおり、「ブラック・ジョーク」として。

私はこの作者の絵やアクションは好きだが、お膳立てとキャラ造形に関しては「ああ、これがイマドキの感覚か……」というふうに思わざるを得ない。

本作に酷似した作品としては、マンガ版の「ルパン三世」を思い出す。ルパンの世界にはほぼ悪人しか登場しない。それも、自分の才覚や腕に自信を持って生き抜いてきたやつらばかりである。
しかし、どんなにすごいやつらでも、ルパン三世にだけは勝つことができない。
まあ言ってみればマンガ版「ルパン」とは、そういう話である。

「悪人同士の出しぬきあい」となると、殺伐とした話になりがちで、「ルパン三世」ではそれをジョークでまとめていた。
もうひとつ重要なのは、「ルパン三世」という最強の男がいる、どんな結末でも必ずルパンが勝つ、という「おとしどころ」が決まっていたという点である。

対するに、本作ではさまざまなキャラクターをあまりに並行させて描いてしまっているため、読んでいて「おとしどころ」が見つからない。
義に厚い者も、仲間のためには命を賭ける者も、すべてが「ネオン島」の一登場人物に過ぎず、彼らの生きざまは「ブラック・ジョーク」として……矮小化されてしまうのだ。

これは、私が勧善懲悪的なものの見方をしているからではない。並列したキャラクターの中で、まずまず主人公だと思われる男・吉良潔が「狡猾で手段を選ばない」という性格づけになっていることが、大きく作用している。
つまり、本作は「さまざまな人々を描く」風ではあるが、その根底には「目的のためなら手段を選ばないこと」を是としてしまっている感じがあるため、この世界内で義理人情が描かれても、何となくどうでもよくなってしまうのだ。

またこの手の「非情な掟の世界」において、女性の描き方が、エロ要因としてもキャラクターとしても少々希薄なのがかなり気になる。
そこはかとなく、ミソジニー的なものも感じてしまうのであった。

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