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・「UFOロボ グレンダイザー」全3巻 原作:永井豪、作画:桜多吾作(1999、双葉社)

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70年代半ば、「冒険王」に連載。
ベガ星人によって、故郷のフリード星を滅ぼされた王子・デューク・フリードが巨大ロボ・グレンダイザーに搭乗して円盤獣と戦うスーパーロボット・アニメのコミカライズ。

70年代の娯楽作品も80年代のそれも大好きだが、読めば読むほど70年代という時代の特異性を感じてしまう。
本作はPTAなど裸足で逃げ出す、ハードな展開の連続。人間同士の不信や悪側の内紛、最後には敵対する相手が地球を救おうとするなどのものすごい展開が連続する。

時代背景を解説すると、おそらくはアメリカン・ニューシネマに影響を受けた劇画の影響を受けている。こういうことを書くと90年代を特別なものとみなしている人からイヤな顔をされてしまうのだが、「エヴァンゲリオン」などで展開された人類破滅テーマはこの頃の諸作品の変奏でしかない、と言わざるを得ない。

これには理由がある。いちばん大きいのは冷戦構造である。70年代は、核戦争がいつ始まってもおかしくない、すなわち人類滅亡、という意識が一般庶民にもあった。誤解を恐れずに言えば、911のテロから人類全体が滅亡することを予想した人はいないと思う。しかし、70年代は小さな事件でもそれが一気に世界核戦争につながってしまうのではないか、という一種神経症的な感覚が蔓延していた時期だった(実際、本作でもラスト近くになって世界核戦争が勃発する。)

もう少し大枠で観ると、日本では高度成長期から時間が経ち、公害病などが問題視されていた。現在よりずっと光化学スモッグの出る日も多かった。人々は「科学文明」とか「物質文明」の見直しを考え始めていた。
本作で超古代文明(宇宙考古学)が、作品全体の背景として出てくるのはこのためである。この「世界核戦争」と「宇宙考古学」のコンボは、同時代のあらゆる作品に、それはもうウンザリするほど観られる。

そもそも、本作のロボットが「UFOロボ」なのは、当時UFOブームだったからである。他にも近い時期に「円盤戦争バンキット」という特撮作品があった。
「空飛ぶ円盤」、「UFO」がSFガジェットとしてある程度説得力を持ちえていたのは、本作よりずっと前の「ウルトラセブン」などを観ても明らかなのだが、70年代半ばには子供が多かった時期だからか児童誌に何かと特集が組まれ、実際の目撃例も多く紹介された。

つまり、本作は「アメリカン・ニューシネマ的悲観」、「冷戦にともなう核戦争への不安」、「不安による神秘への傾倒」が混然一体となって結実した傑作だと言えるだろう。

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