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【映画】・「矢島美容室 THE MOVIE~夢をつかまネバダ~」

監督:中島信也
脚本:遠藤察男

テレビのバラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」から生まれた音楽ユニット「矢島美容室」結成までを描いた作品。

アメリカのネバダに住むマーガレット(木梨憲武)は、夫の徳次郎とともに美容室を経営し、夫と二人の娘・ナオミ(DJ OZMA)とストロベリー(貴明)とともに幸せに暮らしていた。ところがある日、徳次郎が家出してしまう。
そのことから起こる騒動を、笑いと涙をまじえてミュージカルっぽく描く。

最初に書いておくよ。ヒドいよ! この映画。
ただし、実は腹も立たなかった。その件については後述する。

・その1
その前に、ユニット「矢島美容室」の、少なくともデビュー曲当時(その後、どうなってるかよく知らないから)のコンセプトについて考えたい。
デビュー曲の歌詞や、その頃の「みなさんのおかげでした」における「矢島美容室の私生活」みたいなドキュメンタリータッチのコントを合わせて観ると、一見「ドリームガールズ」のパロディのように見えるが、とどのつまりは「じゃぱゆきさん」であることは一目瞭然である。

デビュー曲「ニホンノミカタ ~ネバダカラキマシタ~」は、歌詞を読んでみれば明らかに「不況の日本を元気にする歌」だ。要するに基本コンセプトはモーニング娘。の「LOVEマシーン」と変わらない。
しかし「ニホンノミカタ」は、「本来なら日本に比べて経済的には豊かでないはずの地域から働きに来る人たち」から励まされている、という倒錯を狙っているのだと思う。

さらに、それをアメリカ人にして、「アメリカから夢を持って日本に来た」というふうに、日本側を優位にしつつアメリカに憧れた設定にしているので、二重にねじれているというべきか。

あるいはそこに、「変なガイジンは面白い」という、一歩間違えれば差別につながりかねない80年代的な冗談感覚も見え隠れする。

・その2
要するに「矢島美容室」というのは、まったくの予想で書けばかつてはジャパンアズナンバーワンだったのがすっかりダメになってしまった日本人の屈折した応援歌を歌ったユニット、ということができる。

で、ここからは映画の話。
このような複雑な読み説き(しかし、バラエティとして観るぶんには何ら読解を必要としないというテレビの特異な性質も持つ)が可能なユニットが、簡単に映画になるわけがない。テレビでは何となく「まあ、いいんじゃないの?」で済んでいる部分が、映画ではむき出しになってしまうように感じるのだ。
それは、最も基本的なところでの「日本人が顔を黒く塗って黒人のようにふるまう」という部分から、である。

つまり、導入部から徹頭徹尾、「日本のテレビの、とんねるずの80年代的な感覚をもってつくられたバラエティ」ということを理解しないと承服できない展開が、あとあとえんえんと続くことになる。

奇怪と言えば奇怪だが、あまりにも「バラエティを映画に『移植』したときにどうするか」を考えなさすぎだろう。

あーもう書くのが面倒になってきた。とにかく個々のシークエンスが有機的につながていないので、評価以前の問題である。安易すぎるお涙ちょうだいの展開も不愉快だ。

・その3
ただし、実は「9 〈ナイン〉~9番目の奇妙な人形~」を観たときほどは腹が立たなかった。
というのは、「矢島美容室 THE MOVIE」のいちおうのクライマックスである「友情をとるか、恋愛をとるか」というエピソードにいちおうのつじつまが合っていたからで、どうせならそこを中心にすればよかったのに、と思う。まあぜったいしないと思うけどね。

一方、比較するのがおかしいのだが「9 〈ナイン〉~9番目の奇妙な人形~」は、テーマとその表現の仕方があまりに陳腐すぎた。つくり手の真剣度といったら比較にならないだろうが、こちらも真剣に観たぶん、失望が大きかったということはつけ加えておこう。

と、最後は「矢島美容室」とは関係なくおわる。

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