・「いちご100%」(11)~(19)(完結) 河下水希(2004~2005、集英社)
前にも書いたが、主人公の真中、文学少女・東城、とびっきりの美少女・西野つかさ、という三角関係が斬新で、なおかつ完璧すぎて、後はもうどうでもよくなってしまった感は否めない。
かろうじて、超積極的少女・北大路さつきくらいまでが読者としては許容範囲内で、後の新キャラはぜんぶ付け足し感がアリアリなのである。残念なことだが……(19巻のあとがきで作者も「後のキャラは急いで考えてた」とか、ぶっちゃけすぎですよ!!)。
その北大路さつきにしてからが、西野が別の高校に行ったから出演する余地が与えられた存在で、さつきの出現あたりから「ハーレムもの」にしようとする意図が汲み取れる……ような気がする。
しかし、三角関係のバランスがおかしくなって以降でも、個人的に最もグッと来るシークエンスは一位が真中と東城、二位が真中と西野だった。とくに、「お互いの夢を打ち明けあうことで友情が生まれ、そこから恋愛に発展する」というのがこの作者はいちばんしっくり来るようだ。
19巻の美鈴を主人公とした番外編「京都初恋物語」も、けっきょくは真中と東城の関係の語り直しにすぎないわけだし(まあ、作者としては要請されて描いた可能性もあるが……)。
私は、「別れ」で終わるラブストーリーは嫌いじゃないんですよ(現実だったら哀しいけど)。
それは、マンガの登場人物が成長をとげた場合、当然、それゆえに合わなくなってくるということは普通にありえることだから。
逆に、恋愛でハッピーエンドになるということは、どのような意味でも「一人じゃなくなる」ということ。だから、人間的成長と矛盾するんだよね本当は。
そのような苦み、痛みを甘受することにはやぶさかではないが、では本作の「別れ」は必然だったのか? っていうと……どうも何か決定的なものがない気がするんだよね。最後までどっちでもいいように引っ張られたなあ……という印象しかない。
本作の出だしは本当にすばらしかったと思うんですよ。男からすれば、女性と「なんだか趣味があっちゃう」ってものすごくワクワクすることじゃない? それとは別に、だれもが振り返るような女の子と付き合える、ってのも夢じゃない? それを両方描いてたから、三巻くらいまでものすごく面白くなるんじゃないかなあ、と期待していたんですよ。
あ、それと、本作が「ハーレムもの」として今ひとつうまく行ってない(と私は感じる)のは、けっきょく中核となる三角関係が常に不安定だからだよね。
たとえば本命っぽいコがいて、そこに別の理由で離れがたいコがいて……という図式だと、読者は「最終的にはこのコが本命なんだろうな」って思うから、その三角の外縁にいくつキャラクターが取り巻いてもあまり違和感はないんです。
古いたとえで恐縮だが、あたる、ラムちゃん、しのぶの関係がこれに相当する。
だけど、本作は意欲的に最初の三角関係を不安定にしすぎたために、後々新キャラが出てきても安定しないんですよ。常にグラグラな印象を受けてしまう。
むしろ、ラムちゃん的な積極性を持った北大路さつきを本命の地位にまで上げていったら、「ハーレムもの」としては安定したとは思うんですよね。
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