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【小説】・「神は沈黙せず」 山本弘(2003、角川書店)

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「神は存在するのか? するとしたら、なぜ人間に矛盾した干渉をしてくるのか?」ということをテーマにした長編SF小説。

読むのが遅れて本当にすいません(だれにあやまっているのか?)、買ってからずいぶん時間が経ってしまったんですが、私としては「神テーマ」であることと、「超常現象におけるハイストレンジネス事例」を盛り込んでいるということで、ちょっと逃げていた感はあったんですね。

いや、いざ読んでみたら面白かったことは間違いないんですが。

なお、あらすじはどこか別のところで参照してね。
そして、以下は自分語りにすぎないのですが。

・その1
「神テーマ」というのはSFでは昔からあると思うんですが、私自身としては「非合理だから神なのだ」っていう結論に落ち着いちゃってたんですよね。
私自身は、別に何の信心も持っていない、平均的な日本人だと思います。クリスマスもやるし初詣にも行く人間です。

で、「神の存在の論理性」ということに対しては、私自身がトシをとってしまったのか、あまり興味がなくなっていたんです。
まあ当然、「非合理な神」を自らが「選択する」場合、論理性を放棄すると現代では信仰に入ることができない、という大矛盾があるんですが、そういうのも心の中で適当にごまかしていたわけです私は。

本作は、そこに真向から取り組んでいます。「神の存在を論理的に考える」ということは、逆に言えば「近代人における非合理とはどういうものか」というところにまで発展します。そして、その非合理のさいはてにあるものは結局は「死」(そして恋愛)です。

人間は事故にあえば死ぬ、ほっておいても老化で死ぬ。だいいち、毎日何千万人もの人が死んでいる。しかし、親しい人の死にはどうしても納得できない。
そのこと自体が非合理で、その点において一見合理的に行動している人間は揺さぶられます。

それは、私も含めた、「自分は宗教なんか信じる前時代的な人間ではない」と自認している人の、アキレス腱であるわけです。
そして、本作では、幼いときに事故で両親を亡くして以来、人を愛せなくなってしまったヒロインがそれを象徴しています。

そのように重いテーマだろうと思ったので、刊行後すぐに買ったんですがなかなか手が伸びなかったということは、あります。

・その2
もうひとつ、気になっていたのが超常現象における、いわゆる「ハイストレンジネス事例」を扱っていた作品だということです。
「ハイストレンジネス」とは、簡単に言えば「インチキとも思えないが、状況が突飛すぎるのである研究家が困惑したり無視したりした事例」のことです。

私は数年前から、このことがものすごく気になっていたのですが、それはあくまでもコンピュータのバグであるかのように日常に存在しているから面白いのであって、そこをSF的解釈で世界観に完全に統合してしまうとどうなるのだろう、というのを観るのが少し恐かった、ってのがあります。

実際に読んでみると、ものすごく面白い解釈だったわけですが。

・その3
読後の印象としては、「神」について「なるほど、こういう解釈なのか!!」と、ポンと膝を打ちました。陳腐な言い方ですが、クリスチャンの人が本作をどう読むかには興味がありますね。

・その4
最後に、僭越ながら「ちょっとこうした方がよかったんじゃないかな~」というところをあげます。
まず、ヒロインとその恋人、兄とその恋人(ヒロインの親友、葉月)、という二つのカップルが作中に存在していますが、このダブルカップルがそれぞれ、何で相手を好きなのかをもう少し描写してほしかったです。
とくにヒロインのお兄さんは学究肌のどちらかというとおとなしいタイプで、その恋人は思ったことをずけずけ言う女性、という設定なのだから、その関係性を描くだけでも人間ドラマパートがもっと面白くなった気がします。

それと、かなり信頼のおける超常現象研究家が、「心霊」の問題だけは保留にしていた(そして、しかもそれにヒロインも同意している)というのもちょっと解せませんでした。
「心霊」の問題は、超常現象研究では最初に否定されるべき事象、というふうに思えるからです。

しかし、総合的には非常に面白い小説でありました。

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