« ・「エスパー魔美」(1) 藤子・F・不二雄(2009、小学館) | トップページ | 【雑記】・「ガラにもなくファッション談義」 »

・「エスパー魔美」(2) 藤子・F・不二雄(2009、小学館)

Mami02
[amazon]
藤子・F・不二雄全集版の第2巻。
また私の自分語りから始めます。

最初の二話くらいしか、リアルタイムで読んでない。そろそろ藤子不二雄を卒業しようと思っていた時期だったのかもしれない。
藤子不二雄のマンガはあまりに完成されすぎていて、ハマってしまうと抜け出せなくなるような気もしてた。
同時期の「コロコロコミック」でも、若いマンガ家の中で藤子テイストなギャグマンガはまったく見られないという事態になっていて、まあ同時期的には鴨川つばめ、小林よしのり、山上たつひこ、江口寿史、といった時期ですよね。ひたすらに狂騒的でアナーキーなギャグが主流だった頃なんだよね。

さて、この巻では息子を交通事故死させた青年を殺そうとする男の話「黒い手」がひたすらに泣ける。
殺人予告をしてターゲットを精神的にも追い詰める謎めいた男の(魔美にとっての、そして読者にとっての)不気味さが、中盤から逆転する手腕がすばらしい。たぶんヘタな人がやっちゃうとお涙ちょうだいにしかならないと思うんだけど、Fだからいい。Fしか描けない。

冒頭、魔美が能天気に「エスパーとしての百回出動記念に、地球制服をたくらむ宇宙人と戦いたい」とかなんとか言って、ラストにはまったく正反対の苦い感情をかみしめているところなんかは本当にすばらしいね。

「うそ×うそ=うそ?」は、「キージェ中尉」という組曲が元になっているエピソード。ウィキペディアの「キージェ中尉」の項にもこの話のことが載っているが、これって「新オバケのQ太郎」の「ダレ太郎」というエピソードとまったく組立てが同じなんである。
どちらが先に描かれたのかはわからないが、子供向けギャグの新オバQと、やや大人向けに描かれた魔美とを比較するのも一興だろう。

「エスパークリスマス」は、貧乏な子供たちのために魔美がサンタ役をやってやるというエピソード。これも泣ける話なのだが、実は子供たちが「サンタはフィクションである」と認識していないと成立しない話。
77年当時、「サンタクロースの実在を子供に信じ込ませる」という風習は、まだ日本になかったのであった。

1巻の感想

|

« ・「エスパー魔美」(1) 藤子・F・不二雄(2009、小学館) | トップページ | 【雑記】・「ガラにもなくファッション談義」 »

マンガ単行本」カテゴリの記事

SF」カテゴリの記事