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2009年11月

【ポエム】・「日記」

午前5時起床、軽く走ってからシャワー、その後昼食。

メニューはトースト、ゆで卵、フルーツゼリー。
それから電車に乗って出勤。

午前中、ナシゴレン協会へ。

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【ポエム】・「ひげそりの自動販売機物語」

(叫び声)アーアーアーッ

ドンゴドンゴドドンドドン
ドドンドドンド ドンドドドン

電動ひげそりに 手足がはえて ロボットだ

身長57メートル
体重100グラム

軽い、軽いよ空飛ぶよ
その名は 超電磁ロボ

その名は

菅野美穂太郎

菅野美穂太郎は、生まれつき女っぽい顔だったのでいつも差別されてきた。

そんな彼は、路地を通り抜けようとして、はさまって出られなくなって、
ゆっくりと死んでいった。

その彼の怨念をエネルギーとして、

今、電動ひげそりがよみがえる!

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【書籍】・「謎のマンガ家・酒井七馬伝─『新宝島』伝説の光と影」 中野 晴行(2007、筑摩書房)

[amazon]
酒井七馬の伝記。
むちゃくちゃに面白い。
むちゃくちゃに面白いが、本書を面白いと感じられるかどうかは、
「酒井七馬」というマンガ家が、手塚治虫の出世作「新宝島」の共著者であること、
そしてその「新宝島」が、「絵が動いているように見える」ということでトキワ荘世代に多大なる影響を与えたこと、
さらに、現状では(少なくとも復刻版が出る前は)「本当に『新宝島』は画期的なのか?」という議論がある(あった?)こと、
などをふまえておく必要があるかもしれない。

あるいは、別の側面で、日本アニメの黎明期に興味がある人も読んで面白いと感じると思う。酒井七馬は、アニメーターでもあったからだ。

「新宝島」に話を戻すと、今年初めに「完全復刻版」[amazon]が刊行されるまで、読むことができなかったらしい。
「らしい」というのは、正直私が手塚マニアではないからで、よく知らないからである。
しかしこれはある意味問題で、日本マンガ史の、どうひっくり返しても重要作が、研究者でさえ読むことができなかったのには驚かされる。

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【雑記】・「洗脳の甘美な誘惑」

マイケル・ジャクソンが亡くなるちょっと前くらいから、たまたま聞いていたラジオでマイケル再評価的な話があって、その後残念ながらマイケルが亡くなり「THIS IS IT」が公開されたあたりから、一気にマイケル再評価的な気運が高まって行っていると思う。

実は私は「スリラー」のPVも通して見たことがないくらい、マイケルになじみがなかった人間なのだが、ヒットしているというので野次馬根性で「THIS IS IT」は見に行った。とてもよかった。
そして、漠然とマイケルと自分の、リアルタイムの接点について考えたときに、ひとつだけ思い浮かんだ作品があった。
それが、ディズニーランドで1987~1996年まで公開されていたという立体映画「キャプテンEO」である。

Michael Jackson - Captain Eo part 1 of 2

(マイケルの踊りだけ堪能したい方は後半から。)
Michael Jackson - Captain Eo part 2 of 2

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・「九頭竜」(上)(下) 石ノ森章太郎(2009、小池書院)

[amazon]

1974年頃、ビッグコミック連載。
富山の薬売り・九頭竜は、殺された母親の謎を追いながら旅をする。彼の仕事は売薬だが、厄を買う……買厄も扱う。すなわち、行く先々でトラブルとなっている者を依頼によって殺す、殺し屋としての顔をも持っている。
物語は九頭竜の「買厄人」としての顔を1話完結で、殺された母親の謎解明のための唯一の手がかり「九頭竜の彫り物」をめぐる話を、連続した物語として見せていく。

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・「画太郎先生だぁ~い好き」 漫・画太郎(2009、秋田書店)

[amazon]
ヤングチャンピオン連載分と、ビジネスジャンプ連載の「世にも奇妙な漫・画太郎」などを合わせた短編集。

あいかわらず「バイオレンスな世にも奇妙な物語」的なプロットとコピペ芸が冴える。
被抑圧者が復讐する話が多くて、読後もスッキリしますね。

いつの間にか、デビュー20年ってマジか!?

尊敬します。

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【絶望】・「無題、あるいは是是非非で行きたい」

さんざんイヤな話を聞かされて、ここ2、3日、いろんなことのモチベーションが落ちていた。
自分は、ここ15年間くらい、言いたいことの半分も言わないで来た。が、人生も残り少ないので、そういうことは今後できるだけやめていきたい。
以下は適当に垂れ流した文章です。

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【ムック】・「ダ・ヴィンチ 殿堂入りコミックランキング150 マンガ史50年が生んだ名作はこれだ! 」(2009、メディアファクトリー)

[amazon]
amazonの内容紹介

日本が世界に誇るマンガ史50年を振り返る、永久保存版ランキング!
ダ・ヴィンチ読者、書店員などのアンケートから作成した、マンガ史50年を通観するランキング!あなたの胸を震わせた名作が、続々登場します。
50年間のトップに輝くのは、果たしてどの作品か!?総合ランキングのほか、60年代、70年代、80年代、90年代、2000年代の年代別ランキングも集計。かつてあなたの胸を震わせた名作が、続々登場します。井上雄彦、椎名軽穂、中村光ほかインタビューも多数収録。

ほんの少しだけ、書いてます。ほんのちょっとだけね。
記録としてここに書いておきます。

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【イベント】・「伊勢田大博覧会4」

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公式ページ
ようこそ伊勢田大博覧会4へ!
■ごあいさつ

神戸在住の映像作家・伊勢田勝行さんは少女マンガ家を目指し、ずっとマンガを描き続けていました。
そんな彼の夢は、自分のマンガがテレビアニメになる事でしたが、マンガ家としてデビューすらしていない彼にとってそれは儚く遠い夢でした。でもある時気が付いたのです。

自分でアニメ化すればいいんじゃないか?

・・・・と、いうわけで彼は自分で描いたマンガを原作にしてアニメを独流で作り始めました。
シナリオ・原動画・トレス・彩色・撮影・編集など、全ての行程において独自の手法を駆使しさらには主題歌だけでなく、登場人物全員の声まで演じたので極めて純度の高い“伊勢田ワールド”が誕生したのです。

さて、原作マンガは山ほどあります。出版社に持ち込んではボツになったマンガが泣くほどあります。
ではどの作品から手を付けるか?普通の人なら迷うところですが、伊勢田さんは違いました。
月曜はAというアニメの原画を描き、火曜はBという別の作品に色を塗り、水曜はCという作品の撮影をファミレスで行い、店員さんに

「お客様。当店ではアニメの撮影はご遠慮いただいております。」

と注意されたり・・・・。ちなみに木曜と金曜は新作マンガに取り組んでいるそうです。
『伊勢田大博覧会』は、そんな彼が創ったアニメや特撮映画をみんなで楽しみましょう!というイベントです。
伊勢田さんのアニメはちょっと・・・・というか、かなり変わっているから、初めての人はビックリするかも知れません。
でもきっと、この世界のどこかに、伊勢田さんの作品を楽しんでくれる人がいるはずです。
ぼくらはそんな“仲間”に出会いたくて上映会を開く事にしたんです。

みなさんにお会い出来る日を伊勢田勝行さんと一緒に楽しみにしています。

映像温泉芸社一同  2009年11月
会 場

シネマボカン(BAR GARIGARI) WEBサイト

東京都世田谷区代沢2-45-9 飛田ビルB1F(Google map)


【アクセス】
◆池ノ上駅から
 京王井の頭線池ノ上駅下車、徒歩0分

◆渋谷駅からのアクセス
 京王井の頭線で3駅池ノ上駅下車、徒歩0分

◆新宿駅からのアクセス
 小田急線下北沢駅乗換え京王井の頭線池ノ上駅下車、徒歩0分
 小田急小田原線下北沢下車、徒歩10分
 小田急小田原線東北沢下車、徒歩10分

※専用の駐車スペースはありません。

※上映イベント終了後、舞台を新宿に移し、
 打ち上げ(『伊勢田勝行ディナーショウ』)を行います。
 どなたでもご参加いただけます。(要予約)
 詳しくはこちらをご覧下さい。
開催日:2009年11月28日(土)15時から17時40分まで(開場:14時40分)
料金:1,500円(当日券・前売り券とも)
前売り券:こちらからお申し込みください。
(伊勢田ディナーショウのお申し込みも同時に出来ます)
代金のお支払いは原則として銀行振り込みとなります事をご了承下さい。

※ 前売り券の販売数が定員数(50席)に達した時点で当日券の販売はありません。
出演 伊勢田勝行

司会:酒徳ごうわく(人喰い映像作家)
    インボーマン(企画・構成) 他
グッズ販売
伊勢田アニメDVDを各種販売いたします。
また、この会場でしか買えない『伊勢田博覧会バージョン(字幕付き)』も特別販売!
   
■プログラム

プログラムは予告なく変更になる場合がありますので油断なりません。
アニメーション作品

◆瞳の奥のレジェンド(ひとみのおくのれじぇんど)

◆1/2編ミューズ(にぶんのいちあみゅーず)

いずれも2009年・伊勢田大博覧会4バージョン

特撮作品
◆聖ジェルノンDロゼ(さんたじぇるのん・でぃあまんろぜ)

『瞳の奥のレジェンド』主題歌 歌:伊勢田勝行

■伊勢田勝行ディナーショウ

(打ち上げはカラオケ居酒屋で!)※要予約
会場 カラオケ個室居酒屋 『忍者・新宿店』 
東京都新宿区歌舞伎町1-12-3 MONビル3~4F(MAP)

内容 どなたでもご参加いただける打ち上げです。
3時間でガツンと食事付き、ビールも含めて飲み放題です。
伊勢田ソングに酔いしれて下さい。

会費:お一人様3,500円(税込)
時間 19時から22時まで
定員数:50名程度

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【雑記】・「さsか;さおssどしsどそds@ds」

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イベント告知していてふと思ったんだけど、以前、「ガッカリ! 売れない! 同人誌トークナイト」をやった後、ネットで感想を読んでたら、「求めている内容じゃなかった」ってだれかが書いていて、なんか申し訳ないなと思いました。
で、今回いちおうけっこうマジメなトーク内容にしますって書いたんだけど、マジメすぎる人は確実にガッカリする内容だと思うので、来ない方がいいと思います。
いやそうでもないのかな?

でも、だいたいやる前から話し合ったんだけど2時間で80年代ぜんぶやるの無理だからね。最初に言っとくけど。
普通、大学の授業でもマンガだけに限ったって前期まるまる使うくらいは必要なんじゃないか?

あー、もうイベントやる前から文句が出るのわずらわしくなってきて死にたくなってきたな。
でもやりますけどね。

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【イベント】・「新田五郎のぶっとびマンガ大作戦・出張版第3回~『80年代作家論』」

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【イベント】・「新田五郎のぶっとびマンガ大作戦・出張版第3回~『80年代作家論』」
 さまざまなマンガを紹介するイベント第三回は、なにかと賛否両論な時代、現在に連なるオタクやサブカルを育てた「80年代」のマンガ家にスポットを当てます。80年代という時代を通じ、マンガ家は何を描き、どう変化していったのか? 著書「二次元美少女論オタクの女神創造史」やコミケカタログの記事を執筆した吉田正高氏をゲスト にお迎えし、その真相(?)にせまります。

出演:新田五郎
ゲスト:吉田正高氏(東北芸術工科大学准教授、コンテンツ文化史学会会長)

日時:平成22年1月16日(土)
Open13:50/Start14:10
#昼イベントです
場所:ムーブ町屋 ハイビジョンルーム

荒川区荒川7-50-9センターまちや
地下鉄千代田線・町屋駅0番出口より徒歩1分
京成線・町屋駅より 徒歩1分
都電町屋駅より 徒歩1分
料金:¥2,000(当日券のみ)

#写真は内容と何も関係ありません

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【イベント】・「コミティア90」に参加します

コミティア90に委託参加します。
下記のサークルさんで「ぶっとびマンガ大作戦」などを委託販売させていただきます。
気が向けば、ペーパー的なものを売るかもしれません。

日時:11月15日(日曜日)
会場:有明・東京ビッグサイト西1ホール
サークル名:女医風呂
スペースNO.と13a

「女医風呂」では、サークル「昼寝堂」との合同で新刊「つのつのつの!」(角の生えた女の子マンガの本)を頒するそうです。

関連:
昼寝風呂

JUNK MOBILE ENGINE

昼寝堂

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【イベント】・「川上ゆうサイン会」

【速報!】川上ゆうサイン会開催!

可憐な容姿に秘められたM属性!
今注目のハードコアクィーンがタイヨー高田馬場に降臨!

■イベント詳細
【日時】2009年11月28日(土)14:00~16:00ごろ
※状況に応じて終了時間が変動する可能性がございます。

【会場】タイヨー高田馬場店
(東京都新宿区高田馬場2-14-4八城ビルB1F)
TEL/03-5273-3191

【参加方法】
対象商品のDVDを一枚購入すると参加チケットを進呈。
二枚ご購入するとチケット添付用シールが入手できます。
 
○一枚購入対象商品/川上ゆう出演作品
 (グローバルメディア作品に限る)
○ニ枚購入対象商品/グローバルメディア全作品

【購入特典】
一枚特典/サイン一点(色紙は当店で用意します)&握手
ニ枚特典/ツーショトチェキ一枚

【注意事項】
・当日は必ず参加チケットをお持ちください。
・参加チケット及びシールの紛失等による再発行は致しませんのでご注意ください。
・参加チケットに貼られていないシールは無効らなります。
・女優さんに対する不適切な発言及び行為が見られた場合は、退場していただく場合がございます。

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【イベント】・「資料性博覧会01」

【アニメ・特撮・TOY資料系同人誌】展示即売会 資料性博覧会01
こういうのが開催されるんですね。ぜんぜん知りませんでした。

日時:2009年11月22日(日曜日)12:00~16:00
会場:中野ブロードウェイ 4FまんだらけMG倉庫+スタジオ
内容:漫画・アニメ・特撮・TOYに関する研究を目的とした同人誌の頒布
主催:まんだらけマニア館
募集:12スペース予定
入場:無料

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・「聖おにいさん}(4) 中村光(2009、講談社)

[amazon]

感想は前の巻とほぼ同じ。
本作のギャグの中枢部分である、イエスとブッダについてのエピソードを私はよく知らないのであった。
……っていうか、読んでる人みんなそんなすごいくわしいのかな?

3巻の感想

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・「日常」(五) あらゐけいいち(2009、角川書店)

[amazon]

お・も・し・ろーい。
しかし単行本も5巻以降になると、新展開が必要になってくるはず。
ここからが正念場かもしれない。

4巻の感想

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・「○本の住人」(3) kashmir(2009、芳文社)

[amazon]
「まんがタイムきららMAX」連載。ロリコンの絵本作家の兄と、そのかわいい妹とその友達。
面白い。なごむ。癒される。絵がかわいい。

2巻の感想

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【イベント】・「コミティア90」に参加します

コミティア90に委託参加します。
下記のサークルさんで「ぶっとびマンガ大作戦」などを委託販売させていただきます。
気が向けば、ペーパー的なものを売るかもしれません。

日時:11月15日(日曜日)
会場:有明・東京ビッグサイト西1ホール
サークル名:女医風呂
スペースNO.と13a

「女医風呂」では、サークル「昼寝堂」との合同で新刊「つのつのつの!」(角の生えた女の子マンガの本)を頒するそうです。

関連:
昼寝風呂

JUNK MOBILE ENGINE

昼寝堂

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【雑記】・「ホルモン教異聞」

今日はとても機嫌が悪いので、連続更新することにする。
前にも書いたかもしれないが、何度でも書く。

YOU(ユー)とはNHK教育テレビジョンで1982年4月10日から1987年4月4日まで、土曜日の深夜に放送されていた若者のトーク番組である。

いきなりウィキペディアから引用してみた。若い人はもうほとんど知らないだろうが、そういう番組があったのだ。

それについて、思い出したことを書きます。

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【雑記】・「大量につくり飛ばされるものの鑑賞について」

このエントリに関連する事項として、メモ的に書きとどめておきたい。

それは「サブカルチャー的鑑賞態度」についてである。

サブカルチャー的な鑑賞態度として明確なものは、

「スルーされてきたけど、非常に丁寧につくられた作品を拾い上げて鑑賞する」

というものだ。
これは、通常の純文学などの鑑賞態度をそのまま周縁文化に敷衍させたもので、こういう鑑賞態度がひとまずいちばんわかりやすいし、それに対して異論はない。

よく、子供向け作品を評価する場合、「子供だましの作品はたいていダメで、子供に真剣に向き合った作品こそ本当に子供に支持される」という物言いがある。

あるいは、「一見書き飛ばされた、つくり飛ばされたものでもよくよく検討してみると真剣に、丁寧につくってある」という物言いもある。

しかし、それでは、「書き飛ばされ、つくり飛ばされ、そして読み飛ばされ、斜め読み、斜め観されてきた作品の評価はどうするのか」ということは、「真摯なサブカルチャー的態度」ではあまり検討されないのである。

あるいは、評価基準として「真摯につくられた、いい作品」の評価、拾い上げがまずあって、「書き飛ばされ、つくり飛ばされたモノ」は、「こういうのもいいよね」的に、サブカルチャー評価の、周辺領域としてフォローされる場合が多い。

しかし、現実には大量生産、大量消費の流れの中で、「書き飛ばされ、つくり飛ばされ、そしてあっという間に消費されていく」というケースも多いはずだ。

「書き飛ばされたものの中から、珠玉の名作を拾い上げる」こともサブカルチャー的態度だが、それは物事の一方の面しか観ていない。
世の中には「書き飛ばされて、読み飛ばされる」ことが役割の作品も大量に存在するのだ。

そもそもが、一部のマニアならいざ知らず、昭和三十年代から四十年代前半くらいまでのオトナというのは、現在のサブカル青年が鑑賞するようには、小説や映画を鑑賞しなかったのではないかと思う。
あるいはそれは、ドラマ「花より男子」にハマって毎週夢中で観ていた女性とも違う鑑賞態度である。

昔は「中間小説」というのがあって、そういうものは純粋に楽しまれ、ひと時の愉悦を与えて、そして忘れ去られた。かつての、歌謡曲を聴くみたいな感覚だったと思う。

あるいは「頭の体操」などのパズル本や、映画のノベライス、新聞や雑誌に掲載される小粋なコラム、町で見かけたちょっとした面白いことを取材した記事などは、たとえば似たような鑑賞態度で消費されてもいた「マンガ」とか「小説」とか「映画」が「作者の存在する作品として正しく鑑賞する」というふうに後年、変えられたようには、たぶん永遠に変えられない。

ある時期までの「テレビ番組」も「鑑賞されたはしから忘れ去られる」存在だったが、現状では多少変わってきている。

「いつまでも永遠に鑑賞者の心に残る」作品も大事だが、「一時の愉悦を与えて、瞬時に忘れ去られていく」作品だって、それはそれで役割をまっとうしているのである。

かつての多くのオトナというのは、それほどエンターテインメント作品に執着しなかった。たとえば、マニアでもなかった父親の本棚にアガサ・クリスティーや、イアン・フレミングや、松本清張や、山田風太郎の文庫本を発見する人もいるだろう。

しかし、それは別に、ものすごく真摯に読まれたわけではなく、出張先のひまつぶしに読まれてすぐに忘れ去られ、ムカシの人特有の「もったいない」という感覚から本棚におさまっているだけかもしれない。

似たようなことはとくに70年代に氾濫したUFOや超常現象本や、矢追純一UFO特番についても言える。なにも読んだ人、観た人が全員真摯なビリーバーというわけではなく、たいていの人はすぐに読んですぐに忘れた。

大量消費文化に特別な思い入れを持つのは、大人ではない「青年」の感性である。
それが悪いとは言わないが、鑑賞態度としてはワンオブゼムでしかないことは、再検討されるべきだと思う。

なぜこうした評価があることの可視化が定着しにくいかというと、実は旧世代のテーマ主義、極端な例でいえば革命に近づいているかどうかだけを作品の評価基準とするらしい「プロレタリア芸術論」みたいなものが否定されつつも、やっぱり至高の評価基準としては現在でも「テーマ主義」があるからだ。

サブカルチャーは根源的に(いかに消臭化されたとは言っても)社会変革主義的な態度があるため、「オトナが楽しんで、すぐに忘れられてしまう作品」を「そのようなもの」として受け入れる、ということが認められにくいのである。

実は「物事を斜めに観て笑う」という態度にもいろいろな、他の鑑賞態度との「通路」のようなものがあって、「すぐに忘れ去られるものをそういうものとして消費する」態度に近い場合もあるのだ。
コレが「笑いを通して背後にある社会について考察する」みたいなところに基準があると、「ただ笑いたい」という人と摩擦を起こすことになる。

もちろん、それは「取るに足らないものを拾い上げてわざわざしゃぶり尽くして見せる」という「青年的態度」とも関わってくるわけだが、さすがの温厚な私もこの辺のことがわかってない人が多すぎるので、暗澹たる気持ちになっています。

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【雑記】・「やわらか柔軟剤ゴックゴク一気飲み」

山口和彦監督、「怪猫トルコ風呂」鑑賞。
於:銀座シネパトス。
1975年の邦画で、赤線が廃止になりトルコ風呂が開業、室田日出男にだまされ続けたけなげなトルコ嬢(谷ナオミ)が、さんざんひどい目に合わされた挙句、化け猫となって復讐する。

2年くらい前に観て、あまりに面白かったのでもう一度観に行った。
で、やっぱり面白かったので大爆笑して帰ってきた。

で、ひと晩経って感想を検索していたら、以下のようなブログにぶち当たって驚愕してしまった。
(文章は適当にまるめてある。)

「観に行ったら劇場に笑い屋が大量発生していてうんざり。殿山泰司(悪徳トルコ風呂経営者)が、室田日出男とその愛人で殿山の妻でもある真山知子(両方悪人)にめった刺しされるシーンにまで馬鹿笑いしていて不愉快だった。
旧作を上からのいびつな目線で観て競い合うように爆笑していた映画秘宝ファンのような観客には心底うんざりした。」

実は、ものわかりのいいオッサンのふりをすれば、「映画館で笑うところではないところで笑う客」という問題は以前からある。

・その1
大槻ケンヂがエッセイで、
「空手バカ一代の映画を観に行ったら、ゲラゲラ笑っていたお客さんが極真の門下生かもしれない男性に一喝されていた。その門下生かもしれない男性にとっては大山倍達は師であり、師の映画を笑われることは非常に不愉快だろう。こういう映画は、笑いたいところをこらえて笑ってはいけないのだ」(大意)
というようなことを書いていたこともある。

私自身も、「明確に『信者』が観るためだけの映画」を観に行ってわざわざ大爆笑するようなことはない。
その会場においては、自分は脇役だから。
主役は信者の方々。

それに、「モノをナナメから観る」という「視点」があまりに定着しすぎてしまったために生じるクリエイター側の不愉快さ、あるいは鑑賞のゆがみ、というものを感じることもある。

というか、こちとらそんなことをもう20年くらい考え続けているのだ。
笑う方だって、伊達や酔狂じゃないんです。

一方で、井口昇監督の「片腕マシンガール」という映画がある。
弟を殺され片腕を切り落とされた女子高生がマシンガンを装着して復讐するという作品だ。

この映画は作品の冒頭に監督自身が登場し、鑑賞法をレクチャーしてくれる。

うろおぼえだが「残虐シーンでは盛り上がりましょう! 笑えるところでは笑いましょう! でも、倫理的に笑ってはまずいようなシーンでは笑うのを慎みましょう」みたいなことを言うのである。

もちろん、「怪猫トルコ風呂」と違って「片腕マシンガール」は、最初から「狙った」映画ではあるのだが、
それにしたって、「笑ってもいい残虐シーン」のある映画は存在する。

くだんのブロガーが不愉快に思ったという「殿山泰司がメッタ刺しにされるシーン」は、悪人同士の欲望がもつれて、悪人が悪人をブチ殺すという場面で……、なんでこんなこと解説しなきゃならないのだ、私は国語の先生か? と思うが(まさに「上から目線」で(笑))、欲にまみれて餓鬼道に堕した人間たちが、醜くともぐいをしあうシーンなのである。

恐ろしくても、やっぱり笑えてしまうシーンなのだ。あるいは笑えてしまうけど恐ろしいシーン。意味は同じだ。

真山知子が谷ナオミを拷問するシーンでも笑っている客がいてブロガー様は不愉快だったらしいが、その場にいた私が感じるかぎり、殿山泰司惨殺シーンよりも笑いは少なかった。
それは観客の倫理観でもある。

もっとも、谷ナオミが「緊縛女優」と言われていたから緊縛シーンを入れたのだろう、と思えばやはり笑ってしまう人はいるだろう。

・その2
「怪猫トルコ風呂」という映画、「化け猫映画とトルコ風呂をプラスして新機軸を狙ったもの」で、何か重大なことを訴えるというたぐいの作品ではない。
鑑賞態度としても、「恐がらせよう」というシーンで笑ってしまうというのは製作者側の意図と違っているといえば違っているが……それにしてもねえ、この映画をリアルタイムで観て恐がっている人がいたとも思えない。

不幸続きで化け猫に変貌する谷ナオミの境遇は確かに悲劇だが、「笑ってはいけない」っていうヤツはそこに感動して涙しろとでもいうわけ?
ブロガーの年齢がいくつかわからなかったのだけど、1975年時点でも、この手の映画はバカバカしいと思われていましたよ。当時の観客で爆笑するような人がいなかったというのは、こういう映画を真剣に観るような人がきわめて少なかったからだというだけのことである。

「映画秘宝の好きそうな客」って書いてあったけど、それをすれっからしの映画マニアだと批判するのなら、「笑ってはいい映画といけない映画」を十把ひとからげにして観客批判をするオマエだって何様なの、と。

そもそもが、「作品の鑑賞態度」というのはある時期まで(70年代初めくらいまで)抑圧的なものだったわけですよ。「こう観るべき」というのが決まってた。マジメなものは笑っちゃいけなかった。

そこに多様な視点を持ち込んだというのは、時代の流れから言えば観客の解放だったとすら言えるわけ。

で、それが広がりすぎちゃって、逆に「マジメな観客」を抑圧するという逆転現象が少し起こっているのかもしれないけれど、こと「怪猫トルコ風呂」の鑑賞態度に関していえば、あらゆる側面から検討して、これを笑わずにどうしろというのよ。

こういう映画こそ、個別具体的に検討しないといけませんよ。

・その3
あ、あとまた別の話を思い出したけど、何年か前に「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」という映画を観に行ったら、主演の荒木一郎が上映前のトークで出てきたんだよ。
知らなくて驚いたけど、トークが終わった後、荒木一郎がお客さんと一緒に鑑賞するって言って。

それで、どうしてもやっぱり笑えてしまうシーンも出てくるんだよね。それもはっきりギャグとはいいがたいシーンが。なにしろ主演の人と一緒に観ているわけだから、どういう態度をとっていいかとまどってしまった。
でも観客は笑ってましたよ。あきらかに荒木一郎ファンとおぼしき人が多かったけどね。
荒木一郎ご本人も、鑑賞後も上機嫌でした。

本来、ポルノとかホラーっていうのは、「笑い」と「驚き」と「恐さ」と「エロさ」っていうものが混然となっているでしょう。
でも、観客はどんなに複雑な感情が浮かんでも、笑ったり悲鳴をあげたりといった単純な態度しか取れないんだよ。
しかも、映画館で悲鳴をあげる人ってあんまりいないですよね。

恐くても、感動しても、本来の意味でのギャグシーンでも、「笑い」がこみあげてくるっていうのは、あるものなんだよ。

まとめ。
この手の「笑っていいかいけないか」っていう議論のときには、「笑うこと」の批判者に「つくり手は自分のどうにもならない心情をフィルムに焼き付けているはずだ」という思い込みが無意識のうちに前提としてあると思う。
いやよしんば監督の山口和彦がものすっごい真剣に、谷ナオミ演じる女性の不幸を描きたかったという可能性はなくはないけれども、しかしまあそういう映画じゃないと思いますよ。

プロレスで「真剣勝負なんですか」と言われて、「真剣にやってるから、真剣勝負だ」っていう話があるけど、映画でもなんでもそれと同じで、つくっている人はそれは真剣ですよね。そう思いたい。

でも真剣につくっているからといって、内容が真剣であるとはかぎらんでしょう。

もちろん、何でもバカにして笑っていいというものではないが、「笑えという明確なメッセージがないものに笑ってしまうとはどういうことかの検討」という歴史的背景をふまえない脊髄反射的な批判には、自分はいつも危機感を覚えている。

確かに「さあ笑ってやろう」っていう、それ以外の視点を持たない困った客というのもいるんだが、今回のエントリでは意図的に、そっち側ではない「マジメな観客」を批判することにした。

もう一度繰り返して書くが、今回のエントリにかぎっては、私は「鑑賞態度の歴史的背景を勉強しようともせず自分は旧作を理解していると思い込み、多様な視点を許さない頑迷な映画ファン」を批判する内容にしたので、文意を誤解しないでほしい。

追記:タイトル少し変えました。

関連エントリ:
【雑記】・「大量につくり飛ばされるものの鑑賞について」

【雑記】・「ホルモン教異聞」

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【ポエム】・「しょうゆとコーラを間違えて」

しょうゆとコーラを間違えた

たぬきの親子が大激怒

おかげで町は 焦土と化した

そんな夢観て目が醒めた

ここは宇宙の番外地

惑星ピョロピで ございます

人口わずか12人

他には 羊と ネコ3びき

ブタの置物 100万個

平地に ずらっと ならんでる

おお 地球よ
おお おもち引換券よ

とくに おもち引換券

どこに行ったら 引き換えてもらえるんですか?

さあ 東大出ている 私でも

そんなことは わかりまへん

ワカリマヘン
ワカリマヘン

ワカリマヘンダーソン!!

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【ポエム】・「武士の一分、プイマンダーよ空を飛べ」

(ナレーション)
西暦5230年!
地球は月面人からの攻撃を受けいていた!!

地球最高の科学者、天才大天才博士は、総力を結集してスーパーロボット、
宇宙合体プイマンダーを完成させた!!

その頃、手袋を器用にくまのぬいぐるみに改造した
ドビッドドビッド将軍は、
牛とブタが合体してやっぱりブタになるという研究を完成、

これを「苦労したわりに損した」と名づける。

しかし、いといしげさとの萬流コピー塾において、

「苦労したわりに損した」ではなく、
「苦労したわりに損・シター」にすべきだという意見が続出。

ヘソを曲げた小学生は、せっかく描いた自分の絵を、
先生の前でびりびりにやぶいてしまったのだった。

それを黙って観ているオダギリジョーではない。

オダギリジョーは、名前を酢飯太郎と改名。

堂々と、国際連盟から脱退したのであった。
(完)

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