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【書籍】・「幻獣ムベンベを追え」 高野秀行(2003、集英社文庫)

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最初は単行本として、1989年発行。
1988年、アフリカのコンゴにあるテレ湖というところに、「モケーレ・ムベンベ」という怪物がすんでいるという伝説がある、と知った著者と当時所属していた早稲田大学探検部の面々が、実際にテレ湖に行って約40日間、ムベンベ探索のために湖を調査したという記録。

「モケーレ・ムベンベ」はおそらくコンビニ売りのUMA本にも載っているであろう(確認はしていないが)、比較的有名なUMA……というか、ビッグマイナーな存在だろう。
しかし、おそらく本書が刊行されてはじめて日本人が多く知るところとなったのではないかと思う。

タイトルだけでは、いったいどういうスタンスの本かはわかりにくいのだが、読み始めて30ページくらいでぶっとんでしまった。
むちゃくちゃに面白い。

とにかく、著者とその仲間たちの行動力がものすごいのである。

まず、1年以上をかけて下準備をする。ほとんど英語とフランス語しかないムベンベについて翻訳して読み込む。フランス語も現地の言葉も勉強する。学者に話を聞きに行く。スポンサーを募る。スポンサーを得るために分厚い企画書を作成する。必要な機材について調べまくる。費用一人70万円をかき集める。
一度、コンゴへ行く(着くまでに二週間かかる、マラリアになる)。
そして、湖での調査のシミュレーションのために国内でプレ合宿を三回やる。

いよいよ本格的にコンゴ入り。コンゴに着くまでに何週間もかかる。着いてから、テレ湖近くの村に行くまでまた数日、村でのポーター雇用のめんどうくさい交渉、さらにそこから三日くらい歩いてやっとテレ湖到着、そしてそこに40日間滞在……。

本当に圧倒された。本書を読んでいると、一瞬でも日常の細かいことがすべてバカバカしく感じられる。
これが、もっと本格的な学術調査だったらここまで衝撃は受けなかったかもしれない。とにかく、大学生(参加者には社会人もいたが)が「モケーレ・ムベンベって何だ!!」、「生きた恐竜を見てみたい!!」というやみくもな衝動によって探検を思いつき、しかもそれを思いつきに終わらせず、周到に準備し、尋常じゃない苦難を経てそれを遂行する、そのすべてに打ちのめされたのだ。

現地の人の純朴さ、それに相反するしたたかさもきちんと描いており、探検隊内でのもめごとなどについても書いてある。どこに行っても人間との問題が持ち上がってくるし、それも含めての探検、冒険なのだと思い知らされる。

さらに、テレ湖滞在中、ほとんどマラリアでふせってしまっていた隊員がいることが心に響いた。過酷な状況下で、みんなに迷惑をかけながら、しかもまともな医者や薬もない状態でいることはどんなことよりも苦しいだろうに。それを乗り切ってしまい、心も折れなかったのには率直に感動した。

しかも、これだけの苦しい旅を終えてなお、アフリカに残って放浪する隊員まで現れる!! まったく、どこまでタフなんだこの人たちは、と思わせる。

当たり前だがけっきょく、モケーレ・ムベンベは発見されない(発見されていたら、とっくに世に出てますわな)。
しかし、最後の最後に、作者はこう書く。

モケーレ・ムベンベが見つかったか見つからなかったのか、また、怪獣が実在するのかしないのか--そんな一言で答えられるほど簡単な問題ではないのだ、と私は声を大にして言いたい。しかし、「では、どういう問題なのか」というと、どうしても口ではうまく説明できず、結局、面倒くさくなりヘラヘラ笑ってごまかすことになる。(本書、P300)

 「問題は複雑なんだ」というのは、超常現象研究家の、かなりマジメな人からよく聞く言い回しである。
が、作者がオカルトや超常現象にとりたててハマっていない人で、さらに思いつきやシャレでは済まない探検の果てにこういうことを言ったのは興味深い。

最近、この「簡単な問題ではない」ことについて、個人的には気になり始めているのであった。

「現地に行く」という点では佐藤健寿の「X51.ORG THE ODYSSEY」 (2007、夏目書房)(→感想)に近いが、印象は大きく異なっている。「超常現象を確認しに行く」という観点で興味がある人は、「X51.ORG THE ODYSSEY」を読むといいだろう。

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