【映画】・「口裂け女」
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結論から言えば、お話のつじつまがあっていなさすぎる。
ホラーだから多少の飛躍はいいと思うが、「えっ、これってどうなの?」と観ている途中で引っかかってしまい、鑑賞していて集中力をそがれてしまう。
本作のテーマというか、恐怖を転がしていく題材は「DV(ドメスティック・バイオレンス)」、あるいは幼児虐待である。
だが、本当に単なる「ストーリーの転がし役」としてしか、「DV」、「幼児虐待」が機能していない。
この映画では、「口裂け女」は、DVを起こす母親にも、そうでない母親にも憑依する。
これでは、なんでもアリになってしまう。
「口裂け女」誕生のきっかけをつくった、ある人物が登場するが、
彼の口裂け女に対する愛情も、憎しみも、贖罪の気持ちも、いっさいが観客に伝わってこない。
そもそもが、登場する「普通の社会人としての顔を持つが、DV経験のある母親たち」と、「口裂け女」となった女性とを、「本質は同じものじゃないか」と突き放して描きたいのか、「口裂け女と、その子殺しの誘惑に耐える普通の母親たち」というふうに対峙させたいのか、観ていてサッパリわからない。
だいたい、DVが問題になるのは母親ばかりではないのに、この映画に登場する、子供に暴力を振るう大人は女性ばかりだ。
「母の愛が、あるいは憎しみが怨念となる」というテーマはホラーに昔からあるが、
そこはやはり「なぜ、愛情や憎しみが強いのは父親ではなく母親なのか?」というところはうまくごまかしているのであって、
この作品ではそこのところがうまく行っていないように感じた。
それと、死人が出ているのに警察を呼ばず、
それにも関わらず、別の場面では平然と警察にものを尋ねたりしているが、あまりにもいいかげんすぎると思う。
サトエリと加藤晴彦の演技がひどすぎる、という意見をさんざんネット上で目にしたが、
演技力以前に、脚本や演出による人物造形に大いに問題があると感じた。
それと気になったのは、これはだれ向けの映画なのか?
70年代後半、「口裂け女」におびえた世代か。
だとしたら、当時10歳でも38歳にはなっている。
この映画は、38歳の、自身にDV疑惑を持っている母親が子供を連れて観に行く映画ではないし(残酷すぎるから)、
かといってデートムービーに適しているわけでもない。
(興行収入は1億円行ったというが、そりゃわかりやすいタイトルだからね。)
水野美紀はすばらしかったが。
少しほめておくと、まず「口裂け女」の造形はかなりすばらしい。
「現代の狂女」の実在感と、ありえなさが同居した恐ろしいデザインだ。
次に、小学校の口裂け女騒ぎによる集団下校やテレビのワイドショーの口裂け女報道などの描写にはリアリティがあった(中盤以降、とつぜんリアリティなくなるんだよなあ)。
少し考えてみたが、DVや幼児虐待をテーマにするのなら、ラストに「口裂け女に憑依される男」を描くべきだったと思う。
(作中では、「口裂け女」に乗り移られると姿まで変貌してしまうから、男が口裂け女に変身したっていいわけだ。)
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