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2009年7月

・「ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日」(1)~(5) 今川泰宏、戸田泰成(2007~2009、秋田書店)

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「チャンピオンRED」連載なのかな。
今川監督の「ジャイアントロボ」とどう関係しているのかは忘れた。

本当、2巻くらいまで、筋とかないんですよね。
いや、あるのかもしれんけど頭に残らない。
ただひたすらに、ものすごいいきおいで力押しの展開が続く。

梁山泊の林冲と「白昼の残月」とその他もろもろがジャイアントロボにからんでいく因縁話になるようなんだけど、それもどこまで本気なのかよくわからないんだよね。本作だけ読むと。

ただ「鉄人28号 白昼の残月」を観たかぎりでは本気なのかなという感じではあるのだけれど、なぜ「あったはずの自分の役割」だとか「存在したはずの何か」……流産してしまった子供みたいな、そういう存在を今川監督が惜しむのかが、正直ぜんぜんわからないんだよなあ。

単純に思いつくのは「人類原罪論」みたいな、平井和正が言っていた「人類ダメ小説」みたいな、人間というか人類は生来的にダメで、破滅の種を持っていて……というようなことなんだけど、平井和正(とか手塚・石森とか)の時代には、まだ「人類とは」というスパンで物事を考えるSF、というのが価値としてはあった。

今はそこまで大文字の言葉は信じられないから、「なんで21世紀にこのテーマなの!?」ってのはある。

もうひとつ気づくのは「父親との確執」ですよね。
でも、たとえば90年代のエヴァンゲリオンにあった庵野監督の屈託、のような、確執なら確執としてのわかりやすさってものは今川監督にはないね。

映画「白昼の残月」の話になっちゃいますが、父の犯した罪とそれにとまどう息子と、その中間にいる「残月」という関係性が……たとえばこれが「日本が侵略戦争をしたという原罪」と直結するならまだわかるんだけど、「果たしてそれが本当に言いたいことなのかな?」っていう。

本作を先に読んでいたら、真マジンガーにとまどわなくても済んだかなあ、というのもありますが。

何にしても、面白い作品ですよ。まだ私にとって、今川監督は「解きがいがある」。村松友視のプロレス語り風に言うならば。

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【イベント】・「オタク大戦争」

Otakudaisensou
「オタク大戦争」

おたくイベント界の猛者たちが
「児ポ法はアリ?ナシ?」「ヤマト・ガンダムは観ておくべき?」「二次と三次、どっちが好きよ?」「モモとマミ、どっちが強い?」などなど、愚にもつかない命題について仁義なきトークバトル!
そして最終的なジャッジメントを下すのは観客の皆様にかかっています!
勝者には程ほどの賞賛を・・・そして敗者に待つのは・・・?
これはおたく版『人間学園』だ!


【司会】成田優介(JJポリマー)
【出演】キムラケイサク、鶴岡法斎、新田五郎、かに三匹、OE3、江戸栖方
【日時】平成21年8月1日(土) Open18:30/Start19:00
【場所】なかの芸能小劇場
中野区中野5-68-7 スマイルなかの2階
JR、東京メトロ東西線中野駅北口徒歩5分
料金:¥2,000(当日券のみ)

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・「蒼天航路」全36巻 李 學仁、王 欣太(1995~2006、講談社)

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簡単に言えば「曹操を主人公とした三国志」。
まあ、さすがに同時代に興味のない私も断片的に読んではいたのだが、「これくらいは通して読んでおかないと」ということで読んだ。
なお、私は吉川英治の三国志を赤壁の戦いあたりまでしか読んでいない。横山三国志も10巻くらいしか読んでない。「レッドクリフ」は観た。
そんな程度の三国志の知識しかない。
そういうことを前提にいろいろ思うところがあるので、つらつらと書いてみようと思う。

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・【マンガ雑誌】・「別冊パチスロパニック7」9月号(2009、白夜書房)

Bessatsu_panic7_2009
三号変則集中連載で、原作:鶴岡法斎、作画:張慶二郎「アルケミーの羊」の第三回が掲載。
要するにいちおうの完結編ですね。

書けない小説家・成田優一は、目まい、眠気、脱力感、幻覚といった体調不良に苦しむ。しかしその原因はわからない。
彼の中で普通に存在しているのは、漠然とした不安感。しかし、それでもスロットを打つことはやめられない。
かといって「スロットを打つと病気が持ち直す」というのでもない。むしろ逆で、当たっていると病状は悪化する。それでも、体調不良のときには奇妙に当たるのでやめることができない。

そこに、佐倉フミという、彼の小説のファンだという女性が現れて……。

というのが前回まで。

ここからは私が思ったこと、読み取ったことなので間違っていたらゴメン(だれにあやまっているのか?)。

物事には常にいい面と悪い面、ラッキーを運ぶ側面とアンラッキーを運ぶ側面がある。要するに両義性だ。
三話まで読んだ感想としては、この物語ってすべてこの「両義性」で成り立っているなあ、と。

「病気なのにすごいスロット能力を発揮する」でもなく、「すごいスロット能力の持ち主の弱点が病気」というのでもなく。
スロットに本気で打ち込もうと決心するのでもなく、スロットを通じて本当に自分のやりたいことを思い出す、というのでもなく。

「真の愛」に目覚めるでもなく、偽りの愛に身をゆだねるでもない。

そもそも、成田がスロットに夢中になっちゃったら小説をますます書かなくなってしまうかもしれない。けれども、今の成田にはスロットでさえ、楽しく打つことが重要なことかもしれないとも思わせる。

で、もちろんその「両義性」というのは達観したソレではなく、錯綜した、ゴチャゴチャな、日常のどうしようもないいろんなことの中で生きていくうえで、どうやって人生にとって「いいこと」を51パーセントにして、「悪いこと」を49パーセントにするかみたいな。
いいことが少しでもまさっていればそれはいいことなわけで。
それが積み重なっていけば、だれもが感じる絶望感多き人生、何とかなるんじゃないか、というような。

それも自己啓発的な「こうなんだッ!!」っていう感じじゃなくて、ジワーッと、人間の生、生きることの意志を肯定しているようなね……そういう感じがするんですよね。

以前の連載「crossover」の最終回を読んだときにも感じたんですが、何かが終わったとき、人の心の中でも何かが終わるけど、違う何かは変化し、しかし確実に先送りされていくでしょう。それは希望かもしれないし、絶望かもしれないし、もっと違う別の感情かもしれないけど、人の日常というのはそういうものであると。

なんか、すごいそういうのを感じるんですよね。

これは三号続けて読んでよかったと思いましたよ。本当に。

以下は私、僭越ながらおまけというか。
これで鶴岡さん原作のマンガを、いろんなタイプ、かなりの数読んできたんですけど、
・短編
・中篇
・長編
・長編の中の1エピソード
・伏線を活かす
・伏線など追っていない読者向きに長編を書く
・きちんと最終回で物語を終わらせる

……っていう、マンガ原作を商売として書いていくためのひとおりの技術がすばらしいと思います。
(職人的なものなのか、毎回苦心しながら執筆されているのかは知らないのですが……。)
短編はうまいけど連載したらアララとか、その逆とか、ぜったいないと思うのでマンガ出版社のヒトたちは注目しておいた方がいいですよ。

「アルケミーの羊」01感想

「アルケミーの羊」02感想

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【萌え談義・その9】・「チョコレート・ファイター」のジージャーは萌えか否か

チョコレート・ファイター公式ページ

ネットウロウロしていたら、映画「チョコレート・ファイターの主演のジージャーは萌えじゃないところがいい」と書いてあったので、その辺のことについて書く。

なお、「チョコレート・ファイター」は美少女がムエタイで悪人をバッタバッタとなぎ倒すアクション映画です。

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【イベント】・「オタク大戦争」

Otakudaisensou
チラシの図版が上がってきたので、再告知です!!

「オタク大戦争 ~今夜もオタク酒、月刊鶴岡法斎、ぶっとびマンガ大作戦、韓国まんがまつり、抗日名所巡礼者、オタクルネッサンス 地上最大の決戦~」

各おたくイベント主催者が真っ二つに別れてトークバトル!これはおたく版『人間学園』だ!

【司会】成田優介(JJポリマー)
【出演】キムラケイサク、鶴岡法斎、新田五郎、かに三匹、OE3、江戸栖方
【日時】平成21年8月1日(土) Open18:30/Start19:00
【場所】なかの芸能小劇場
中野区中野5-68-7 スマイルなかの2階
JR、東京メトロ東西線中野駅北口徒歩5分
http://nicesacademia.jp/facility/shogekijo.html
料金:¥2,000(当日券のみ)

当日は、「人間学園」についてよく知らなかった私が、「太りすぎ世界一の人の引越し」としてベッドごとクレーンに吊り下げられて移動するさまが観られます。ウソです。

私としては、「新宿歌舞伎町の、ロッテリアもケンタッキーもつぶれたので、マクドナルドが異様に混んでいることが許せない!!」と主張する予定。

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【イベント】・「月刊鶴岡法斎 愛した蔵書の供養祭」

『月刊鶴岡法斎 愛した蔵書の供養祭』

「凄く面白い。だがもう一回読み返さない気がする」
「自分よりもっとこの本を有効活用してくれる人がいるような気がする」
そんな思いを胸に、出演者が蔵書の面白を説明、その場で希望者に『無償で』プレゼントします。
意外なゲストの蔵書プレゼントがあるかも?
※お客様からの本の持ち込みも大歓迎します!

【出演】鶴岡法斎 / 大坪ケムタ / 他、ゲスト交渉中
7月18日(土)
OPEN 12:00 / START 12:30
前売 / 当日¥1200(飲食代別)
Naked Loftにて電話予約受付けます
問:tel.03-3205-1556(Naked Loft)

ネイキッドロフト
http://www.loft-prj.co.jp/naked/

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【雑記】・「懐疑派にとって、信じていた時期は必要か?」

いまだに定期的に、「ナントカの陰謀」とか「宇宙人」とか「大予言で地球は滅亡」などのテレビ番組をやっているらしい。
実はこういう番組に関しては、懐疑派の中でも議論がある、はずである。「はずである」というのは、本当にそうかどうかは私が知らないということと、たいていはどこかでゴマカされて議論になっていないのではないか、という予断が自分にはある、という含みである。

たとえば、「真か偽か」ということだけを問題にするなら、そんな番組、ない方がいいに決まっているのである。
世の中を動かしているのはフリーメーソンでもなければ宇宙人でもない。バイトでも死ぬほど働けば、金は稼げるんだというようなことをホリエモンも言っていた(ホリエモン、もろもろ含めてザマーミロである)。

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【雑記】・「アイドル写真集にとって『リアリティ』とは何か!?」

オトコなら買わずにどうする! オンナも感じる"ベストエロ"写真集(前編)

オトコなら買わずにどうする! オンナも感じる"ベストエロ"写真集(後編)

みずからがアイドルヲタであると公言するグラドル・仲村みうのアイドル写真集談義。
前編より:

仲 アート要素が強すぎるもの。コンセプトをかっちり決めて、モデルのキャラクターも作り込みまくって、男性目線で見ても"ヌキ"の要素が一切なくアートをごり押ししていると......萎えちゃいますね。

なんだかネットウロウロしていたらどっかの掲示板にこの前後が貼り付けられていて、「仲村みう、面白いこと言うなー」と思ったら、一般人のコメントの多くは、

「アンタの写真集こそ、アート要素が強すぎるだろ!!」

というものであった(笑)。

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【映画】・「口裂け女0 ~ビギニング~」

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監督・脚本:児玉和士

幼い頃に両親を亡くした姉妹、姉の弥生と妹の美里。美里の顔には幼い頃の火傷の後があり、精神を病んでいたが顔の手術は成功。しかし、美里は自分の手術の成功を信じようとはせず、火傷の原因となった姉をなじるのであった。

山奥で二人は白骨死体を発見、それは老心理学者の妻・サチコのものであった。
で、なんだかんだあってある夫婦が殺害される事件が起きる。弥生は美里がやったのではないか? と疑惑を抱く。はずである、確か(くわしいことは忘れた)。

過去の「口裂け女」シリーズと関係あるのかないのかわからんが、とにかく現時点でコレがいちばんひどいと思った。
しかし、他のブログで書かれているようにまったくどうしようもない、ということでもない。
まずは「いいところ」から書く(若干ネタバレあり)。

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【映画】・「口裂け女」

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結論から言えば、お話のつじつまがあっていなさすぎる。
ホラーだから多少の飛躍はいいと思うが、「えっ、これってどうなの?」と観ている途中で引っかかってしまい、鑑賞していて集中力をそがれてしまう。

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【訃報】・「ジョン・A・キール」、あるいは「キール発 根本敬行き」

心臓発作で死去、79歳。

私にしては非常に珍しく、訃報について2回連続で書く。
このようなときでもなければ、浅学な私がキールについて(体系だった超常現象に関する知識が望まれるにもかかわらず)書くことは不可能だからだ。

なお、ミクシィ日記に書いたこととは違った角度で書きます。

ジョン・キールがもっとも一般的に有名なのは「モスマンの黙示」[amazon]を著した、ということだろう。
テレビの超常現象スペシャルなどで定期的にあらわれる人気UMA、それが「モスマン」である。

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【訃報】・「平岡正明氏」

評論家の平岡正明氏死去

平岡正明氏が亡くなってしまった。
昨年の1月か2月、阿佐ヶ谷ロフトのイベントを観に行ったときがこの人のトークを生で聞いた最初で最後になってしまった。

私は平岡正明氏の大ファンというわけではなかったが、やはり気になる人だった。

私にとって、彼は簡単に言えば「勧善懲悪の人」。
むろん、「永久革命」という彼にとっての「正義」に基づいて物事を判断しているという意味。

大衆や周辺的な人が正義で、彼らが中央的なものにとって代わる幻想を抱き続けてきた人である。

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【映画】・「フィースト2/怪物復活」&「フィースト3/最終決戦」

公式ページ

監督:ジョン・ギャラガー
脚本:パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン

実は一作目を観てない。
で、結論から言えば、2、3と合わせてもうーん……という感じ。

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【イベント】・「雑談人の踊り2 ぶっ通しオタク話」

告知再掲です。

人生には大事な袋が3つある。「堪忍袋」!「無駄な知恵袋」!そして「新耳袋」!

毎度おなじみノー打ち合わせ、ノー設定。今回は木原浩勝氏を迎え、神出鬼没の雑談トーク!
 オニが出るか、蛇が出るか、誰にもわからぬ魔法陣!

【出演】唐沢俊一(と学会運営委員)、中野貴雄(映画監督)、木原浩勝(「新耳袋」著者)
【日時】平成21年7月11日(土) Open18:20/Start18:40
【料金】¥2200(当日のみ、全席自由)
【場所】ムーブ町屋 ハイビジョンルーム 荒川区荒川7-50-9 センターまちや
地下鉄千代田線、京成線、都電・町屋駅より徒歩1分

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【イベント】・「オタク大戦争」

告知です!!

「オタク大戦争 ~今夜もオタク酒、月刊鶴岡法斎、ぶっとびマンガ大作戦、韓国まんがまつり、抗日名所巡礼者、オタクルネッサンス 地上最大の決戦~」

各おたくイベント主催者が真っ二つに別れてトークバトル!これはおたく版『人間学園』だ!

【司会】成田優介(JJポリマー)
【出演】キムラケイサク、鶴岡法斎、新田五郎、かに三匹、OE3、江戸栖方
【日時】平成21年8月1日(土) Open18:30/Start19:00
【場所】なかの芸能小劇場
中野区中野5-68-7 スマイルなかの2階
JR、東京メトロ東西線中野駅北口徒歩5分
http://nicesacademia.jp/facility/shogekijo.html
料金:¥2,000(当日券のみ)

当日は、「人間学園」についてよく知らなかった私が、「太りすぎ世界一の人の引越し」としてベッドごとクレーンに吊り下げられて移動するさまが観られます。ウソです。

私としては、「新宿歌舞伎町の、ロッテリアもケンタッキーもつぶれたので、マクドナルドが異様に混んでいることが許せない!!」と主張する予定。

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【マンガ雑誌】・「パチスロパニック7」8月号(2009、白夜書房)

三号変則集中連載で、原作:鶴岡法斎、作画:張慶二郎「アルケミーの羊」の第二回が掲載。

書けなくなった小説家・成田優一は、不意に襲われる目まい、眠気、脱力感、幻覚に苦しめられている。それが「書けない」ことからくるのか、何かハッキリした病気なのかはこの第二回の段階ではわからない。
しかし、その発作が出たときには不思議とゆがんだ光景の中から「自分が必要とする物」だけが観え、パチスロで勝つことができる。

やがて、優一はスロ中に打てなくなるほどの強い発作に襲われてしまう……。

第一話の展開を引き継いだかたちで、三話で完結する話なので結末を予想して感想を書くことがなかなかむずかしい。
が、思いきって書いてみると、徹底的に個人的で、他人が成り代わることのできない孤独な悩み(小説が書けない、持病があるなど)に関して、他人とのちょっとした関わりとか、偶然とか、そういったものが救いをもたらす場合があるかもしれない、ということなのかなと。

もともと原作の鶴岡さんは、「ヤマアラシ」、その続編の「ヤマアラシ CROSS OVER」を読むかぎり、人と人とのちょっとした触れあいが孤独な人間に光を与える、状況にささやかな奇跡を起こしていく、という話が得意であるように感じている。

「友情」とか「恋愛」というのは、とくに青年期を経てトシをとってくると、物語において非常にベタなものに成り下がってしまうものだが(ベタなりの切実さを受け手が要求しているとしても)、鶴岡さんの原作は、たとえば何かに属しているという連帯感でもなく、傷のなめあいでもない、静かで、それでいて強い絆を志向しているように感じる。

それと、この第二話目から読んでも基本的に違和感がないのがいいと思った。パチスロ誌という性質上、たとえば自分の知りたい機種が載っているからその号だけ買おう、という人もたぶんいるだろう。
そうなると細かい伏線を張ったり、その号だけではお話がわからなかったりしたらまずいわけで、なおかつ、長期連載になった場合も読者側に、蓄積された長い物語を了解済みのものとして続けるのは困難だろう。
パチスロマンガには「実際に打ってみてのレポート」といった実録モノや、1話完結のギャグ、コメディ調のものが少なくないのもその辺が理由だろうと思う。

だが、たぶん本作は長期連載化しても、続けて読んだら読んだで面白いし、途中からでもすんなり入れる物語になるだろう。
そういう長期連載の才能は読みきりを書くのとはまた別の才能で、バランス感覚がないとむずかしいと思うが鶴岡さんにはそういう能力が備わっていますからね。それは過去の作品で実証済みのことでもあるし。

続きが楽しみ。

最終話は、7月25日発売の「別冊パニック7」に掲載。

「アルケミーの羊」01感想

「アルケミーの羊」03感想

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・「海人ゴンズイ」 ジョージ秋山(2009、青林工藝舎)

Kaijingonzui
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「ジョージ秋山 捨てがたき選集第1巻」として刊行。青年マンガ「ドハツテンツク」を同時収録。

80年代ジャンプに掲載、「努力 友情 勝利」を基盤とした明るく楽しいマンガ群にあって、ひときわ激しく残酷で、それでいてプリミティヴなパワーを持った「打ち切りマンガ」、それが「海人ゴンズイ」である。

ゴンズイ
ゴンズイ
海人 ゴンズイ

流人の島に
流れ着き

アチョプ! マウマウ!!
叫んだよ

サメに飛び乗り
空飛ぶよ

ゴンズイ
ゴンズイ

海人 ゴンズイ

フンムム フンムは戦(いくさ)の踊り

ウツボと戦い カマスをやっつけ

ジャンプに 残した
するどい 爪あと

ゴンズイ
ゴンズイ

海人 ゴンズイ

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【ポエム】草食系肉食系豚足

(以下は東京でOLをやっている松山聖子の一人称です。)

「欠員が出来たから急遽合コンに出てくれ」と携帯にメールが入ったのが午後6時。
あいかわらず強引だとは思ったが、ゲベ子には8万円も借りているので断るわけにはいかない。
いや、理をとけば断ることもできるのだろうが、回りまわって後になんて言われるかわからない。

仕方なく、出かけることにした。
ゲベ子は私・松山聖子の中学時代からの友人で、「合コン指南術」という新書サイズの本を出して近頃調子に乗っている駆け出しライターだ。
ときどき、あきらかに初老の域に達しているのにキャップをハスにかぶり、お尻の下がったジーパンを着ている年齢不詳の男と腕を組んで歩いているところを見かける。
パトロンらしいが、詳細はわからない。

ゲベ子はプライドが高く、上昇志向はあるが地道に努力するということができない女だ。

高校時代からテストの勉強なんてしたことがなかったので、よくノートを貸してやった。
容姿は並以上で、女子大に入ってからは(私から見たら)イメージとしてのバブル期みたいな遊び方をしていた。
彼女のファッションセンスについては私にはよくわからないが、とにかく派手で遠目では毒キノコにしか見えない。しかも緑を基調とした毒キノコだ。

しかし、男にはモテた。

ゲベ子は、どんなに自分が精神的に弱っていても決してそのことは言わず、失敗しても失敗を認めたがらない子だ。
それが私には不憫だったことが、今でもゲベ子と付き合いを続けている理由のひとつだったのだが、この点に関しては現在失敗したと思っている。
人にもよるが、ゲベ子の場合、自分の心の中でも弱さや失敗を認めていないということが、ある時期からわかったからだ。

内面凹んでいて、カラ元気を出しているのではない。本当に、自分でも認めていないのだ。

たとえば、できもしない分量の仕事を引き受けて失敗し、「頼んだ方が悪い」と言ってみたり、
友人の信頼を失って絶縁状をつきつけられても、「あの子が嫌いだからわざとそういうふうにふるまったのだ」と言ったりする。
かなり本気で。

そんなめんどくさい彼女に8万円も借りっぱなしになっているのは、私自身が「口からこんにゃくゼリーがとめどなく出る病」にかかってしまったからである。

「口からこんにゃくゼリーがとめどなく出る病」は、保険がきかないのだ。

私は合コンの場所である居酒屋に向かった。

が、入り口で追い返された。
この店は「口からこんにゃくゼリーがとめどなく出る病」の人お断りの店だったのだ。

ゲベ子は、私を入り口で迎え入れようとして店員に止められ、
「人権侵害じゃないですか!!」
と叫んだ。その言葉は「バカヤロー」とか「ふざけんな」といった罵声程度の重みしかなかった。
ゲベ子にとっては、合コンに欠員が出ることの方が問題で、私の「口からこんにゃくゼリーがとめどなく出る病」のことなどはどうでもいいことは明白であった。

私はゲベ子の傲慢ぶりが耐えられず、思わず彼女の右腕を店員ごしにつかんで引っ張った。

店員が「あっ」と言う間に、ゲベ子はゼリーとなって溶けて、消えた。

そう、私の「口からこんにゃくゼリーがとめどなく出る病」は次の段階、
「手が触れて念を込めると、すべてのものがこんにゃくゼリーになる」
能力に発展していたのだ。

その晩、X-メンから招待状が届いた。

私はX-メン入りを快諾し、8万円を前借した。
(完)

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【アニメ映画】・「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」

公式ページ

映像はすごかった。「どうせテレビシリーズの焼き直しなんだろ」とタカをくくっている人は、観るといい。
だまされたと思って。本当にすごいから。
内容に関しては、完結編まで私が語るべきことはほとんどありません。本作は前作「序」から「Q」への橋渡し的な物語であって(「Q」で完結かと勘違いしてた。もう絶望)、これだけ観ても私にはなんとも言えないですね(と言いつつ、ダラダラ書いてしまったのはいつものパターン)。
「エヴァ」について私が思うところは「序」のときに書いたテキストを参照してください。

【アニメ映画】・「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」についての「序」

【アニメ映画】・「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」についての感想

ただ、このときと考え方の違う部分もあるのでそれについてちょっと。

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