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【映画】・「K-20 怪人二十面相・伝」

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監督・脚本:佐藤嗣麻子

第二次世界大戦が行われなかった1949年の、架空の日本。そこは明治からの華族制度がそのまま残り、固定化し、富を独占する格差社会となっていた。
サーカスの花形・遠藤平吉(金城武)は、カストリ雑誌の記者(加賀丈史)から明智小五郎(仲村トオル)と羽柴家の令嬢・葉子(松たか子)の結納式の写真を盗み撮りすることを依頼される。
しかし、平吉が渡されたカメラのシャッターを押した途端、爆発が起き、大騒ぎに。平吉は二十面相だと誤解され、投獄されてしまう。

いろいろあって辛くも脱出した平吉は、二十面相を捉えて無実を証明しようと、みずからも泥棒修行をすることになるのだが……という話。

結論から言えば、「二十面相」映画としてはかなりの傑作!!

自分は北村想の原作が大好きなので改悪されていたらどうしようかと思っていたが、見事に新しく、なおかつ原作のコンセプトを活かした作品に仕上がっていた。

しかし、ネットを巡回したらつまらんツッコミや「まあ、いいんじゃない?」みたいな意見が(私が見たかぎり)多くてウンザリ。しばらく感想を書く気がなくなった。

本作で重要なのは、「架空の日本の格差社会」を極端な貧富の差として描くことで、「来たるべき、未来の貧困」として描いていたこと。
バブル崩壊まで、日本のエンターテインメントに登場する「貧困」はほとんどの場合、過去のものか、個人の自己責任に帰するものだった。
それが本作では「来たるべき貧困」として描かれている。ほっとくと本当の日本もそうなるよ、みたいな。
偶然かもしれないが、そう思う。

もうひとつは、結末に登場する「敵」が、「一部のエリートだけが万民を支配する世界」を構想していること。
実はこれにはニヤリとした。私の世代にはなじみやすい「悪」だからである。
で、脚本も書いている監督の年齢は調べてみるとやはり1964年で、自分と近い。
安易な世代論は避けたいが、「一部のエリートだけが支配する世界」への愛憎愛半ばする気持ちを、今でも持っている人がいるんだなと再確認できたのがなんだか嬉しかった。

少し話がそれるが、これが1970年代生まれになると、いわゆる「セカイ系」に傾斜していって、妄想の産物としても「エリートが率いる一種の哲人政治」をもてあそぶことにもリアリティを感じなくなるようである。
いや、よりくわしく言えばそうしたエリート社会に自分の席はない、と真摯に絶望しているというべきか……。

脚本をいろいろいじっているうちに結果的にそうなったのだろうと予想するが、本作の基本設定である「来たるべき貧困」と、後半に登場する「一部のエリートによる世界」が呼応しているところが興味深い。

大げさに、なおかつ勝手に妄想すれば、80年代的中流幻想(とそれにともなう悪平等への疑問)の反動としてのエリート社会妄想と、2000年代の格差社会に対する危機感がテーマの上で合体しているのである。

そして、それに対置されるのが「大衆の味方である義賊、あるいは扇動家としての二十面相」だ。
ここからもう半歩でも踏み出すと「革命」しかなくなってしまうのだが(この映画の考えを推し進めれば、結果的にはそうなる)、そこまで行かずにギリギリで踏みとどまっているところが、エンターテインメントとしてはいいバランスである。

なお、佐藤監督の志向しているものを知らないまま書くのだが、随所に「宮崎アニメ」っぽいところが見られるので、宮崎駿的な大衆観が根底にあるのかな、と思いましたけどね。

さて、この映画がアリになったとすると今後、「セカイ系を乗り越えるのはけっきょく70年代的志向」ということになってしまい、少なくともエンターテイメントの領域では過去のテーマ回帰となる。
もちろん簡単にそうなるとは思えないが、うずくまって絶望しているよりはなんぼかマシだと思っている自分はちょっと問題だろうかね?

映像、表現面について書く。
テンポ良し、2時間以上の長丁場でもまったく気にならず。「現実にはなかった帝都」というヴィジュアルイメージもカッコいい。
アクションは「ヤマカシ」、映画版「バットマン」、「スパイダーマン」風だがこれは昨今の流行を考えると仕方ない。むしろよく消化していると思う。
マクガフィンとなっているのが「テスラコイル」を利用した発電機というのに燃える。ツングースカの大爆発はこれの実験だったのではないか、というトンデモ説にも喝采。
日本の映画のCGは、印象としてチャチいが本作はわりと自然。クライマックスで出現する「装置」は圧巻。

役者は第一に挙がるのは、平吉をサポートする源治役の國村隼だよね、やっぱり。ひさしぶりに観た仲村トオルが、どこかに不気味さを残す明智小五郎を好演していた。遠藤平吉役の金城武は、正直演技はイマイチだったが手足の長さ、ガタイのよさが説得力。
松たか子の「お嬢様」っぷりは……まあ好みにもよるが、わたし的には……どうだろうな。舞台だったらぜんぜんオッケーなんですけどね。
小林少年(本郷奏多)の美少年ぶりもバッチリでした。

続編できないかな。ぜひつくって欲しい!!

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