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・「コブラ」(1)~(6) 寺沢武一(1980、集英社)

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COBRA THE ANIMETION 公式

最近、新作アニメのDVD出てるんですよね。観たいなあ……。

最近の私の唯一の楽しみは、「見学に来た身なりのいい人たちから指を指されたり嘲笑されたりしながら、何に使用するのかわからない、しかし持つと妙にてのひらにフィットする1メートルくらいの鉄の棒」をつくる仕事から解放され、家で「まんだらけ」の店頭で売られていたジャンプ・コミックス版の「コブラ」を読むこと。

子供時代にはわからなかった元ネタがわかる場合もあり、今読んだ方が面白い部分もある。

まず面白いのは、ジャンプ・コミックス版第1巻に載っている手塚治虫の巻末解説で、「SFはアイディアがありきたりになりがちだから、主人公の性格描写をうんとユニークにしてもらいたい」と書かれていること。

そもそも、ある時期までのジャンプ・コミックスの巻末に付いていたこの「解説」、本人が書いているかどうかすらアヤシイのだが、手塚治虫がこう発言したとなると、いろいろと考えてしまう。

だってSFって言ったらほとんどアイディア勝負のところがあるからね。それをなんで「SFはアイディアがありきたりになりがち」なんて言ったのか。
まあSFファンなら、「手塚はSFというより『スペースオペラ』の文脈で言ったんじゃないか」って考えるのが妥当なんだろうけど、
私は、手塚治虫が「マンガで読者が理解しうるSF的設定には限界がある」ということを言いたかったのだと思う。

実際、マンガや映画だけでSFを理解しようとすると、「何か未来的なガジェットが出てくればSFなんだろう」と誤解しがちだからね。

さて、本編の話。
とにかく第4巻収録の「雷電の惑星」が、バカバカしくて楽しくていっぺんに気に入ってしまった。
これ、アニメ化されたっけ……? オチがすべての作品だからネタバレはしないけどね。古きよきスペースオペラの要素が詰まっていますよ。

第5巻が、全編とおして「ラグ・ボールの巻」。コブラが銀河パトロールの要請で、麻薬の売買ルートのひとつである「ラグ・ボール」という未来スポーツをやるランド競技場に選手として潜入し、捜査する話。
アニメ版も数回に分けて放送され面白かった記憶があるが、マンガ版もなかなか。
でもアニメ版より淡白かなあ。このプロットなら、今なら5巻くらいは使う内容だね。

「コブラ」という作品そのものは、現在も続いていると言えるけど、やはりいちばん輝きをはなっていたのはジャンプに連載されていた80年代前半までだと思う。

同時代にはアニメで言えばガンダムがあったし、先鋭的なSF作品というのはいくつもあったのだろうけれど、「コブラ」の面白さというのは、当時日本一売れていた少年マンガ雑誌に、確信犯的に懐かしい感じのSFマンガとして掲載した、ということにあると思うから。

80年代前半の「コブラ」が「完全にノスタルジーを狙った作品か」というとそうでもないんだけど、80年代後半になると読者側にも送り手の「仕掛け」がある程度了解されてくるし(それはすべてのジャンルでそう)、とにかく「ジャンプの一般読者が、送り手の意図を完全に理解しているわけではない」というところはあるわけだから。

また、80年代後半になると「サイバーパンク」ムーヴメントが起こって、私みたいにハードコアなSFファンではない人間にも、「一周回った感」が出てきてしまう。そうすると、「わざと古きよき、あるいは『時代を半歩遅らせた』感じを出す」という、おそらく「コブラ」にあったであろう意図が、ストレートにこちらに伝わらなくなってしまうんだよね。
活字SFの世界では「SFというジャンルをセルフパロディする」というのは前からあったんだろうけど、それがマンガやアニメの世界にまで浸透していくのが80年代、という印象があるので。

だから、時代がサイバーパンクからもう二周くらいして、「スターウォーズ」も新作がつくられて完結した今が、また「コブラ」を観るときなのかもしれませんよ。

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