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・「逆境ナイン」全6巻 島本和彦(1990~1991、徳間書店)

Gyakkyounainn
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少年キャプテン連載。
「甲子園で優勝しなければ廃部でいい」と、校長に約束してしまった野球部キャプテン・不屈闘志。彼はどんな逆境でも自分を成長させると信じ、やる気のない部員を引っ張っていこうとするが……。

あー、これ自分語りしよう。興味のない人は読まなくていいです(ちなみに、このテキストはイベント前に書きました。イベント前に上げちゃうといろいろ、私にも他の人にもバイアスがかかってしまうような気がして、あげませんでした。)

・その1
島本和彦と言えば、「読者の魂に熱さを注ぎ込むギャグマンガ家」として、たぶん若い世代からもリスペクトされているはず。
わたし的にも、「石森章太郎の魂を継承して80年代を通過し、なお現役でい続ける作家」として重要なのだが、正直、このあたりの作品(80年代後半から90年代頃)は読んでいないのである。

理由は、島本和彦のデビューと私の中高生時代とがほぼシンクロしてしまっているからである。

結果を言えば、島本和彦がマンガで言っていることは全部正しいのである。だれもが勇気をもらい、だれもが何かを始めたくなる。
が、自分は島本和彦のマンガに描かれている「男はこうあるべき」ということを、高校時代から二十代にかけて、ほぼすべて、裏切ってしまった。

裏切ってしまったのである。

もう少し早く、あるいは遅く出会っていれば何の屈託もなかったと思うが、いかんせん青春時代にシンクロしすぎてしまっている。
だから、自分をごまかすことができない。

自分はこの作品世界で遊ぶ資格が無い。

そういうふうにずっと思ってきたし、今も思っています。

・その2
後は、「逆境ナイン」までの島本和彦に関する個人的な思い出話。

「炎の転校生」の原型である「必殺の転校生」が読みきりとして掲載されたとき、「すごいやつが現れた!!」と思っていた。
で、その後の読みきりや、たぶん最初から期間が決まっている短期連載「ほとんどヒーロー」などを読んでいて、「なんで早く長期連載しないんだろう、チクショー」と思っていた。

そして、満を持して「炎の転校生」が始まった!!

毎週楽しみに読んでいたが、「ぜったいに打ち切りにならないでくれ!」と祈りながら読んでいた。
「炎の転校生」は、長期連載としての構想が連載時から完成していた作品である。
そこにはいかなる編集サイドの入れ知恵も無駄なように思えた(実際にどのようなアイディアが、後から盛り込まれたのかは知らん。ラブコメ的展開やお色気シーンは後から入ったものだろうと思われる)。

ほぼ同時期には増刊サンデーで、雁屋哲原作の「風の戦士ダン」が始まっており、しかもこちらも人気だった。
自分は、新人なのに週刊と月刊の連載を両方やっている作者を心配していた。どちらかの作品がグダグダになりやしないかと心配だった。
どちらかというと「風の戦士ダン」はやり直しのきく作品だが、「炎の転校生」は、一度失敗したからといって何度もやらせてもらえるような企画ではないように思えたし、作者の実質的なデビュー作になるのだから、失敗は許されないように感じていた。

80年代で、オタク第一世代が思い切った連載をしていたという観点から言えば桂正和と共通しているようにも思うが、「ウイングマン」に関してそのような心配をしたことはない。あちらはかなり自由度が高かったからである。

結果的に、「炎の転校生」は、マンガ史に残る作品になったと思う。もう心の中でスタンディングオベーションである。
しかし、この作品を乗り越えるのも大変だろうな、という思いも強くした。

現在、島本和彦を代表作だけで見ていくと、「炎天」~「逆境ナイン」~「吼えろペン」ということになるんだろうけど、「炎天」から「逆境」までは5年の歳月が流れている。しかも、発表媒体も移している。
少年マンガ週刊誌のサイクルから言えば、この5年という歳月はほとんど読者が入れ替わっていると思っていいのではないか。

マンガ家というのは、本当に大変である。

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