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【映画】・「デトロイト・メタル・シティ」

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監督:李闘士男、脚本:大森美香

あらすじは省きますよ。
序盤はまあまあかなと思ったんだけど、クライマックスで「普通の最近の、マンガとかとからんでる映画になっちゃってるなあ」という印象。

本作の、原作との最大の違いは主人公の崇一(松山ケンイチ)の「おしゃれな音楽をやりたい」という気持ちと「デスメタルの才能」とを、クライマックスでアウフヘーベンしようとしているところにある。
それはデスレコーズ社長(松雪泰子)と由利(加藤ローサ)が、失踪した崇一のアパートで出会うシーンで象徴されるのだけど、うーんまあ、ちょっと苦しいですよね。

しかし、仕方がない部分もある。というのは、原作がそもそもそういうことを目指していないからだ。
映画でなんとかそういう展開にしようとしたら、次のことは最低限、描かなければならない。

・崇一がデスメタルを本当は嫌いではない、という描写
・デスメタルファンとおしゃれ音楽ファンが本質的に同じであるという描写(あるいは、デスメタルファンの方が本当の音楽ファンだ、というのでもいい)

これらを本気でやるとしたら原作の大胆な改変になってしまうが、もともとのマンガがディティールを曖昧に描いているんだから、そこはもうしょうがないことだ。
上記のことをおさえないと、クライマックスでいくら崇一が「みんなの夢をかなえるんだ!」とか言っても説得力がまったくない。

ただし、デスレコーズの社長が多少なりとも崇一をデスメタルのヴォーカルとして「育てよう」としていることがかいまみえたり(この映画でいちばん良かったのは松雪泰子のハッチャケ具合)、原作では何ら人間的なつながりがないように見えるDMCの他のメンバーとの友情が垣間見えるシーンは良かった。
あ、それとおしゃれプロデューサーの嫌みったらしさも、原作よりもっとカリカチュアライズされていて良かったね。

逆におかしなことになってしまったのが崇一の憧れの女の子・由利。この子はキャラクターを膨らませようとすればするほど軽薄でアホに見えてしまうという部分があるから。

たとえば、おそらく商業的にはまったく価値のない崇一のおしゃれ楽曲をすごく評価してみたり、それでいておしゃれ雑誌の編集者をやっていたりとか、なんかいまいちよくわからない。要するに「崇一が好きな女の子の前でアタフタする」というギャグを成立させるためだけにつくられたようなキャラだから。

なお、音楽に詳しくない私から観ても、監督が音楽に詳しくないんだろうなあというのがわかってしまうのも辛い。

いちおう音楽映画なんだからさあ、少なくともDMC、MC鬼刃、金玉ガールズの歌はワンコーラス流そうよ(どれもなかなかいい曲でしたよ)。
それとDMCが社会現象になっているかのような描写も、リアリティないんだよなあ。

というわけで、「キャストはいいけど……」って感じになってしまってました。惜しい。

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